社説(9/1):防災の日/住民主体で命を守る行動を

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 きょうは防災の日。災害から命を守るには何が大切なのか。一人一人が改めて考える日としたい。

 昨年7月の西日本豪雨では避難の遅れなどから、岡山や広島などで257人が犠牲になり、平成最悪の水害となった。その反省から、避難の在り方が大きく転換したことをまず肝に銘じたい。

 政府の中央防災会議の作業部会は昨年末、避難に関する方針を盛り込んだ報告書をまとめた。気象状況の激化や限られた行政職員数などから、行政主導の対策には限界があると認めている。

 その上で、住民は自らの命は自らが守る意識を持ち、行政はそれを全力で支援する社会を目指すとした。行政主体の防災から、住民主体へとかじを切ったと言える。

 災害のたびに自治体の避難情報の遅れなどが指摘される。だが、そうした課題の検証だけで、命を守ることにつながるのだろうか。行政の情報発信の改善はもちろんだが、住民の主体的な取り組みや判断が今後は必要になる。

 豪雨などで逃げ遅れないため、住民が事前に避難の目安を決めておく「避難スイッチ」という考え方がある。行政の避難情報だけに頼るのではなく、取り決めた避難基準に達したら、迷うことなく避難する。関西地方を中心に広がっている取り組みだ。

 兵庫県宝塚市の川面地区では、住民が昨年から「スイッチ」を検討し、住宅街のため池があと50センチであふれそうになった場合などは避難すると決めた。

 2017年の九州北部豪雨で甚大な被害を受けた福岡県朝倉市では、住民が「スイッチ」を使って避難し、難を逃れた例がある。ある集落では過去の豪雨災害を教訓に「あの家が浸水しそうになったら避難」という独自ルールを決めていた。避難指示が出る前に避難を始め、一人も犠牲にならなかった。

 こうした取り組みは「情報待ち」「行政頼り」の姿勢から抜け出し、自助と共助を進める一歩となるはずだ。

 事前に避難行動などを決めておく「タイムライン」(防災行動計画)という仕組みも参考になる。

 東日本大震災で、岩手県洋野町は10メートル以上の津波に襲われながら、犠牲者がゼロだった。町の消防団は震災前、避難誘導などの活動は12分以内と定めていた。分担する水門を閉め、住民が低地に降りないよう道路を封鎖し、すぐ避難する。その取り決めを訓練してきたことが奏功した。

 住民が自らルールを決めるには、地域の特徴や身の回りのリスクを知る必要がある。過去の災害の教訓を学ぶ契機にもなる。何より、住民が地域事情や状況を共有し、災害時には支え合う避難行動にもつながるだろう。

 住民主体の事前の備えは必ずや、地域の防災力を高めるに違いない。