あすから学校

 きょうから9月、だけど夏休みはもう1日…何年か前のこの欄にも似たような書き出しのコラムを書いた覚えがある。あすの月曜日、始業式が気重でしょうがない君たちへ▲逃げてしまえばよかったのに、頑張らなくてもよかったのに…。学校が始まる日の朝、悲しい出来事が起きるたびに、大人の私たちは、肝心のその子にはもう届かない空(むな)しいアドバイスを口にしていた▲それが嫌だから、悲しいから、今、スポーツ選手が、人気タレントが、皆が君たちに語り掛けている。我慢しなくてもいい、耐えなくていい、逃げよう。その声が誰かに届かなくなる前に▲子どもが学校で楽しく、元気に過ごしたいと願うのは、当然の権利の主張だ。もしも苦しさを抱えているなら、少しだけ勇気を出して、その苦しみを周りの誰かに伝えてほしい▲誰かがきっと分かってくれるよ、などと無責任なことは書けない。だけど、生まれて十年かそこらの君たちは誰もが「未知数」で、みんなが「可能性」なのだから、何かに絶望するなんてまだまだ早い▲長い休みが終わって、久しぶりにクラスメートと再会する9月が「苦月」だなんておかしい。学校は大切な場所には違いないが、死にたくなるようなつらさに懸命に耐えながら、それでも行かなきゃならない場所ではない。(智)

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