【MLB】ダルビッシュ、復調の要因はスプリットにあり カブス捕手コーチ「彼はモンスター」

カブス・ダルビッシュ有【写真:AP】

コーチがスプリットを投げるよう説得、投げだして一気に成績上昇

 今季途中から圧巻の投球を続けるカブスのダルビッシュ有投手について、マイク・ボーゼロ捕手コーチはスプリットを投げ出したことが要因の1つであると明らかにした。米スポーツメディア「ジ・アスレチック」が詳細をリポートした。

 ボーゼロ・コーチがダルビッシュのスプリットを初めて見た時、それが鍵になる球種とすぐに分かったという。ただ、ダルビッシュは試合で投げる準備ができていなかった。
 「彼に『ロジャー・クレメンスのようなスプリットを持っているのに使っていないね』と伝えたよ。上手く操ったスプリットは非常に素晴らしい。サイドセッション(ブルペン投球)でスプリットを投げているのに、実戦で投げない彼を見ることには苛立ったよ」

 ボーゼロ・コーチとトミー・ホトビー投手コーチが、6回4失点に終わった6月10日のロッキーズ戦後からスプリットをもっと投げるようダルビッシュにを説得を試みた。この試合までの14度の登板で、ダルビッシュはスプリットを全体の0.9%しか投げていなかったという。

 ボーゼロ・コーチは、スプリットを投げたがらないことに困惑し、スプリットを投げる時にどこか痛むのか確認したこともあった。「投げれば球界で最高レベルのボールになるかもしれないのに、投げない理由が分からなかった。だから聞いたよ。投げない理由を知りたかった。彼のスプリットは、正直、これまで見た最高のスプリットに匹敵する。最高だと思ったロジャー・クレメンスを含めてだよ」。

 2人のコーチによる説得が功を奏したのだろうか。スプリットの割合は徐々に増えていく。6月15日のドジャース戦から7月30日のカージナルス戦までの8度の登板では4.4%に上昇。8月の5度の登板ではさらに自身を深めていったという。

「彼は結果を見ていく必要があるんだ。サイドセッションでも納得するのに十分でないこともある。彼は実戦での結果を見たいのだと思う。スプリットはすぐに結果が出て、私が思っていたように進んでいった」

 ダルビッシュは当初、左打者が振らないとして、スプリットが納得するレベルに達していないと認識していたようだ。しかし、握りを変えたことで、スプリットが違う動きをするようになり、左打者もスイングするようになったという。

 「彼は持ち球全てを常に修正している。スイングに対するタイガー・ウッズのようだ。完成することはないんだ。(ダルビッシュのスプリットは)すでにアンビリーバブルだったが、更にすごいボールになった」

自身の強みを生かす投球から、相手のプランに応じて変化球を駆使する投球に

 6月15日のドジャース戦からの13度の登板で、防御率3.60(80投球回、自責32)、102奪三振、8四球。防御率に改善の余地はあるが、12.75というK/BB(奪三振数÷与四球数)は、この先の成功を示す良い指標であり、ダルビッシュは順調に見える。

「フォーシーム、ツーシーム、スライダー、カットボール、カーブ、スプリットを投げる男なんだ。これだけ多くの球種を投げられる投手は球界に多くない。しかも全球種が優れている。どの投手でも、彼の最近の登板を見たら『素晴らしい』と言うだろう。ただアンビリーバブルなんだ」

 カブスがダルビッシュを獲得したのは、持っている武器を最大限に活かす手助けができると信じていたからでもある。難しいのは、ダルビッシュが新しい考えや他人の意見を信じるのに時間がかかることだった。しかし、彼はようやく特定のチームに対するカブスのゲームプランに納得するようになった。8回5安打1失点で5勝目(6敗)を挙げた8月27日のメッツ戦では同僚の守護神クレイグ・キンブレルから1週間前に教わったというナックルカーブも見事に操った。

「現在、彼は今までで最高の状態だと思う。全球種を駆使し、プランをもって試合に臨んでいる。今まではそうではなかったと思う。自分の強みに頼る投手だったが、今は相手のプランを理解し、それを利用しようとしている」

 スプリットをはじめ、あらゆる球種を相手に応じて投げるようになった。49歳のボーゼロ・コーチはそんなダルビッシュに最大級の賛辞を贈る。

「彼と仕事することは楽しい。何でもできるモンスターだ。彼は何でもできる能力を持っている。今までそんな投手と仕事をしたことはないと思う。とても特別なことだよ」(Full-Count編集部)

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