バリアフリー議場 まだ2カ所 長崎県内 傍聴席は13議会で車いす可

段差に設けられたスロープ=県議会議場

 長崎県と県内全21市町の議会のうち、議場内にスロープを設けるなどして車いすの議員が介助なく活動できるのは、県と西彼長与町の2議会にとどまることが、長崎新聞社の取材で分かった。7月の参院選では重い身体障害のある2人が当選。大型の車いすを使う2人に合わせ、参院本会議場などが改修されたが、県内の多くの議会では庁舎の古さや緊急性の乏しさなどを理由にバリアフリー化が進んでいない現状が浮かび上がった。
 県議会棟は昨年1月の県庁舎移転に伴い新築。3階の議場、5階の控室などにはエレベーターを使って上がり、議場内ではスロープを使って自席に移動できる。4月の県議選までは車いすを使う議員が2人いた。長与町議会にも車いすを使う議員が1人在籍している。
 一方、ほかの20議会では、議場へ向かう途中や議場内に段差がある。このうち対馬市、東彼東彼杵町、北松小値賀町では議場がある庁舎内にエレベーターがないという。そのほかの議会でも議場内に段差があるため、議員が車いすを使うことになれば、介助や席順の調整といった対応が必要になる。
 一方、傍聴席は県や長与町のほか松浦市、雲仙市など計13議会で車いすのまま利用が可能。傍聴席入り口まで段差がないか、段差がある場合はスロープやリフトを設置して対応している。ただ、新上五島町議会は傍聴席入り口に段差はないが、傍聴スペース内は座席間が狭く、車いすで移動するのは難しいという。
 長崎、島原、五島各市は市庁舎の建て替えを予定しており、議場や傍聴席のバリアフリー化も進展する見通し。島原市は「将来車いすの議員が出るかもしれない」として、新市庁舎の議場内にはスロープを設ける予定だ。
 日本身体障害者団体連合会会長で東北福祉大の阿部一彦教授は「車いす利用者が当選するだけでなく、いま在籍している議員が車いすを使うことになる可能性もあり(ハード面の整備は)大事な取り組み。車いすでの活動ができれば、いろいろな視点がある議会にもなり望ましい」と話した。

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