ボルト氏、12月に新国立で「走り初め」 東京五輪へ10の質問、サニブラウンに期待

2008年の北京五輪陸上男子100メートルで、9秒69の世界新記録(当時)でゴールするウサイン・ボルト氏(共同)

 陸上男子100メートル、200メートルの世界記録保持者で「稲妻」の異名を取ったスーパースター、ウサイン・ボルト氏(33)=ジャマイカ=が、2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場のオープニングイベント(12月21日)で完成記念の「走り初め」を行うことが決まった。当日は約6万人の入場を見込んでおり、スポーツ・音楽・文化がテーマの3部構成となる。

 五輪で3大会連続の短距離個人種目2冠を達成し「人類最速の男」と呼ばれたボルト氏はこのほど東京五輪開幕まで1年に合わせて共同通信の書面インタビューに応じ、10の質問に答えた。(共同通信=田村崇仁)
 

記者会見で、笑顔を見せるウサイン・ボルト氏=2017年8月、ロンドン(共同)

 Q1 「五輪の顔」だったボルト氏がいない五輪は寂しくなるが、東京にどんな大会を期待するか。またボルト氏自身はどんな役割を担うのか。

 「最高の五輪になると思う。自分の役割はまだ決まっていないが、日本に行くのが楽しみだし、来年は東京が開催都市として素晴らしい仕事をすると確信している」

 Q2 日本では20歳のサニブラウン・ハキームが100メートルで9秒97の日本新記録を出し、五輪へ期待感が高まっている。

 「彼は高い潜在能力があり、まだ若いので大きな将来性を持っていると思う。正しい指導と助言があればさらに速くなる。うまくいけば来年の五輪で決勝に残れる」

 Q3 男子400メートルリレーは日本で非常に人気だ。2016年リオデジャネイロ五輪ではジャマイカに次いで2位だった。

 「日本のリレーチームはいつも驚くほどよく訓練されている。彼らは4人の個人ではそれぞれ最速になれないかもしれないが、チームで大きな力を生む。特にバトンパスが本当に洗練されており、いつも母国ジャマイカのライバルになる。

 Q4 東京五輪でボルト氏の後継者となるような次世代の台頭はあるか。

 「今の時点では100メートルと200メートルはとてもオープンな争いだと思う。(米国のマイケル・ノーマンら)素晴らしい才能も出てきたが、今秋の世界選手権(ドーハ)で何が起こるか見てみよう」

2019年6月28日 陸上の日本選手権・男子100メートル決勝で力走する(右から)優勝したサニブラウン・ハキーム、2位の桐生祥秀、3位の小池祐貴=6月、博多の森陸上競技場

 Q5 2017年に陸上競技から引退。今年1月には「長年の夢」だったプロサッカー選手への転向を断念した。Jリーグへの挑戦も含め、引退後のプランは。

 「今のところ自分の焦点はビジネスに関心が向いている。(Jリーグを含めて)サッカーはプロ選手への道をもう追求しないけれど、楽しみながらプレーは続ける」

 Q6 史上最多33競技が実施される東京五輪。若者人気のスケートボードやサーフィンなど新しい競技も加わる印象は。

 「特に開催国に人気の新競技が加わる新たな試みは良いことだ。自分にとって常に陸上が一番のスポーツだが、他の競技も楽しみたい」

 Q7 東京五輪で最もチェックしたい競技は。

 「自分はいつも陸上をはじめ、サッカーや水泳、バスケットボールを見るが、現役選手だった時代はそんなに時間もなかった。来年は他競技をもっと見る時間がある」

 Q8 これは究極の質問だが、人間はどこまで速く走れるのか。ボルト氏の世界記録が破られる日は来るか。

 「記録はいつか破られるものだ。でも自分の記録があと数年はまだ残っていることを願うよ」

 Q9 今だから言える五輪での失敗談や成功談は。

 「リオ五輪では競技前の数日間、太もも裏に問題を抱えていた。自分の医療チームが困難な壁を乗り越え、スタートラインに立たせてくれたことで金メダルを取れた」

 Q10 日本は金メダル30個で世界3位の目標を掲げている。スーパースターから地元の重圧を克服するためのアドバイスを。

 「その場にいてその瞬間を楽しむことが重要だ。競技前は周囲の雑音は気にしない方がいい。最終的には国全体が応援し、後押ししてくれるのだから突き進めばいい」

スイスの高級時計「ウブロ」のイベントに参加し、子どもたちとポーズをとるウサイン・ボルト氏=2017年9月、京都・祇園

ウサイン・ボルト氏(ジャマイカ)陸上短距離の元スター選手。子どもの頃はクリケットに取り組み、才能を見いだされて陸上に専念。2009年世界選手権の100メートルで9秒58、200メートルで19秒19の世界新記録を樹立した。五輪は200メートルで04年アテネ大会に初出場し、08年北京大会から16年リオデジャネイロ大会まで3大会連続で100メートルと200メートルの両種目制覇。世界選手権は17年大会で100メートル3連覇を逃し、400メートルリレーでは脚を痛めて途中棄権に終わり引退した。195センチ、94キロ。33歳。

© 一般社団法人共同通信社