「過ち繰り返される」 横浜で朝鮮人虐殺の歴史学ぶ

虐殺された朝鮮人の慰霊碑に献花する参加者=横浜市西区の久保山墓地

 関東大震災から96年を迎えた1日、震災直後に横行した朝鮮人虐殺の歴史を学ぶフィールドワークが横浜市内で開かれた。虐殺の事実をはじめ加害の歴史を否定する言説がはびこる中、参加者は「反省をやめれば過ちは繰り返される」と危機感を胸に足を運んだ。

 約50人の参加者は西区の慰霊碑で黙とうした後、虐殺の現場となった南区の街中を巡った。「朝鮮人が襲ってくるという流言を信じ、子どもまでが虐殺に加わった。なかったことにすれば歯止めを失い、私たちは再び殺人者になる」。元教員で主催の「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」の後藤周さん(70)が当時の小学生がつづった作文などを基に惨状を解説した。

 港南区から足を運んだ寺本浩さん(75)は「同じ虐殺が起きても不思議ではない深刻な空気を感じている」。韓国の元徴用工訴訟判決を機に日本政府は敵対姿勢を強めるが、植民地支配下にあって虐殺の背景となった朝鮮人への蔑視と敵視に満ちていた1923年当時の状況が重なって映るという。「娘は在日コリアンと結婚し、孫もいる。守るには歴史に学ぶしかない」

 瀬谷区の片岡理恵さん(49)も韓国バッシング一色のメディアの状況に「植民地支配という根本の原因に触れずに憎悪があおられている。事実を知らなければ再びデマに流されかねない」と参加した。「過ちを認めることを自虐と捉え、教えようとしない教育が問題だ」と話した。

 後藤さんは横浜市の中学生向け副読本の問題についても訴えた。虐殺の記述に自民党の横山正人氏ら保守系市議2人が疑義を差し挟み、市教育委員会も追従。書き換え、削除を経て、史実を詳述してきた副読本は2016年度版を最後に廃刊とされた。復活を求めて市教委と交渉を続ける後藤さんは「市議会と市教委の対応は、強い声に流されて虐殺が起きた構図に通じるものがある。自分で考えることをやめて同調、忖度(そんたく)したときが一番恐ろしい」と実感を込めた。

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