重要なのは熱量をどう持続的に有権者へ伝えるか。山田太郎参院議員のネット選挙戦略に迫る(山田太郎氏インタビュー後編)

先月行われた第25回参議院議員通常選挙(以下、今回の参院選)ではネット選挙を活用した候補の躍進に注目が集まりました。
選挙ドットコムでは前回2016年の参院選の全国比例で業界団体等の支持がない中で巧みなネット選挙戦略で29万票を獲得し、今回の参院選では54万票超を獲得し当選した参議院議員の山田太郎氏にインタビューを行いました。山田太郎氏の進めた驚きのネット選挙戦略は必読です。

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一番恐れていたのは選挙期間中盤の「盛り下がり」

選挙ドットコム編集部(以下、選挙ドットコム)
今回の参院選で掲げた53万票という目標を達成できそうだ、という実感を得たのはどの段階でしょう?期間中の感触等も伺いたいです。

山田氏
やっぱり参院選の17日間は以前にも経験しましたが、僕は実は選挙に受かったことはなかったんです(笑)当選したときも比例の復活でしたから。落選の仕方はわかっていましたが…(笑)
ただ今回の参院選で数字自体はいい結果が出ているというのはわかっていましたが。秘書とも話してちょっと公示初日から勢いをつけ過ぎているかな、とは思っていました。

ネットも最大のリスクはこれで盛り上がってもネタがなくなると続かないところです。同じものを使ってもそれで盛り上げられないんです。過去に書いた記事からネタを作ってはボツになり、動画を作ってはボツになり、その繰り返しです。

選挙ドットコム
参院選は選挙期間が17日間と長いですよね。

山田氏
そうですね、それでやっぱり中盤はへこんでくるんですよ。さすがに焦りました。序盤は比較的好調だったのですが、中盤にかけての下落率をみると失速してしまうんじゃないかと思って。僕は全国から広く票を集めるタイプの候補でしたが、他の全国比例の候補者だと特定の地域に地盤のある方もいる訳じゃないですか。そういった候補の地盤が開票される度に追い抜かされる経験もあったのでそれがトラウマだったんです。どうやって最初の勢いを維持するかな、とは考えていました。でも休んだら失速しますし。最後の最後でエゴサーチをしていて、周りのツイートに読むのが追いつけなくなったときには手ごたえを感じましたね。

選挙ドットコム
今回の参院選では自民党から立候補されました。他の党だったらもっと取れたのでは、という感覚はありますか?

山田氏
ありますね。やっぱり自民党には批判が多いのだなぁと。表現の自由、というのはリベラルな政策なので当初自民党から出ると決めたときは非難の嵐でした。ただネットで気をつけないといけないのは本当のサイレントマジョリティの人たちを相手にしなきゃいけないという点です。これまで要所要所で取ってきたアンケートで「次の選挙ではどの党から出るのがいいか」という問いでは自民党、という答えが一番多かったのが事実です。

前回の29万票のときの新党改革は与党から見れば野党だし、野党から見れば与党のような立ち位置だったのであの得票は割と「ピュア」だったと思います。今回は自民だから入れられない、という声も実際ありました。

選挙ドットコム
政策を実現するまでの自民党内での道筋を明確に示したことが有権者に投票する実感を与えているのでは、という見方もできるかと思いますが意識されていたんでしょうか。

山田氏
選挙戦の途中でアピールしたのは、政権与党に入る訳ですからこれまでの「実績」です。野党の時代でも表現の自由に関しては著作権の非親告罪化だったり有害図書関連だったり、実現できた自負があるので実績を売りにした方がいいなと。

選挙ドットコム
票を入れる有権者からすると自分の一票に価値がちゃんと見いだせる、という期待感がありますよね。

山田氏
期待値があるからこそ「党議拘束の厳しい自民党では何もできないぞ」という書き込みもありました。「党議拘束」がどれだけの問題なんだっていうスレが立つくらいで。僕はそれに対して党議拘束が出たら一人で反対してもあんまり意味がないから、野党の時の実績として、党議拘束の前の段階、まだ国会審議になる前に色んな手を打ってきたということを繰り返しアピールしました。

ありがたかったのは、ネットボランティアの方がひたすらインフォグラフィックを作ってくれたんです。党議拘束に関するものだとフォロワー数300くらいの方が作ったものが1万リツイートですよ。すごく助けられました。このツイートをリツイートしたり、引用リツイートしたりすればいいですよ、とか党議拘束についても説明を書いてくれていました。

【ネットボランティアの方が作成したインフォグラフィックの例】

選挙ドットコム
選挙にあたって何百万という費用をかけている選挙事務所もある訳ですが、ネットにかけた総予算はどれくらいでしたか?

山田氏
一番高いのはLINE@で140万円です。電子為書きは15万円くらいでした。それ以外はTwitterでした。動画の製作費は全部で15~20万円ですね。うちはお金をかけプロを集めるというよりも、スタッフの工夫で安く済ませて選挙をやっていました。

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