第十七回 「江戸時代の銭湯=湯屋から見る庶民の暮らし」

ちーす。今年は突然夏が来て突然終わりましたね。30代最後の夏か〜。どうでもいいですね。

はい、今回は久々に江戸時代いってみましょう。争いごとや戦争ばかりに興味があり、文化風俗に疎い私ですが、なんとか江戸の庶民の暮らしに迫ってみましょう。ピンポイントで「銭湯」。

江戸は当時、世界一とも言われる100万都市で、大変栄えておりました。人口が密集するので庶民は長屋という集合住宅に住むのが一般的。当然、木造なんですが、どうしても江戸は火事が起きやすい。んで各々の家には火を使う風呂はないんですな。

乾燥したからっ風、それに伴い土埃が舞うんで、みんな風呂には入りたい。で、幕府は積極的に銭湯を奨励します。当時は「湯屋」と呼ばれてて、入浴料も江戸時代中期6文(約90円)で、かけそば1杯16文と比べても格安ですな。

営業時間は日の出から日の入りまでと定められますが、日没時に火は落としても湯が冷める午後8時くらいまでやってたみたいす。湯屋の入り口には弓の弦に矢をつがえた絵の看板が掛けられて、「弓射る」(ゆみいる)に「湯いる」(ゆいる)を掛けた江戸っ子の洒落でした。そんな面白くないですけど。湯屋は江戸時代後期には600軒余に達しました。

湯屋の中に入るとすぐ番台があります。そこで銭を払って、必要に応じてぬか袋や洗い粉、手拭い等を購入します。ぬか袋は今の石鹸にあたるようなもので、袋に米ぬかを詰めて湯を含ませ、体を擦ります。角質をとったり、美肌効果もあったそうな。洗い粉は小豆や大豆、滑石などからできた粉で、ビタミンも豊富、肌艶が良くなると江戸ギャルに人気だったとか。

番台の仕事としては、脱衣所での衣類の盗難防止の見張りもあります。雑な服を着て湯屋に入り、入浴後に他人の服をちゃっかり着て帰るコソ泥が横行してたようです。脱衣所が板の間だったので、湯屋のコソ泥は板の間稼ぎと呼ばれていました。

番台を抜けると板の間でお馴染み脱衣所があり、そこで服を脱ぎます。江戸時代、湯屋は基本、男女混浴です(一時期、幕府が混浴を禁止しましたが、あまり効果はなかったようです)。とは言え全裸ってわけではなくて、基本的に男はふんどし、女は湯文字という布を腰に巻いてたみたいです。パイオツは普通に出してたみたいですけど。

んで、脱衣所から洗い場へ。そこは仕切りがなく、洗い場をそのまま通過してざくろ口という屈まないと通れない90センチくらいの仕切りを潜って浴槽へ。ざくろ口は浴槽の湯気を逃さないようにする工夫で、そのため浴槽はちょいとしたサウナ状態だったとか。小窓しかない浴槽は薄暗くて、湯は水が豊富に使えるという時代ではなかったので毎日替えるわけではなく、綺麗な湯ではなかったみたいです。浴槽では体を綺麗にするというよりは温めるのが目的だったと。

浴槽から上がると湯くみ番と呼ばれる奉公人から綺麗なお湯を柄杓で湯桶にもらいます。ほんで洗い場に戻って体を洗うと。金に余裕のある人は三助と呼ばれる奉公人に体を擦らせたそうです。三助は男ですが、女性の体も擦ります。

湯屋は女性も働いてて、湯女(ゆな)と呼ばれてました。男の体を擦るだけではなく、売春もしてたとか。湯屋が湯女を雇って密かに売春で稼いでるのが横行してくると、幕府も無視できなくなります。幕府が江戸で遊女商売を許可してたのは吉原だけだったのに、湯屋が湯女で客をばんばん取ってしまったので、一時、吉原が衰退したほどだったのです。

吉原もこれはたまらんと幕府に取締強化を求めます。1637年に3人以上湯女を置いてはダメ!1648年には湯女を置くこと自体ダメ!ってことにしますが、需要の多さからなくなりません。本腰を入れた幕府は、湯女がいる湯屋を営業停止にします。1657年には200軒もの湯屋が営業停止になったそうな。そんでも根付いた文化として完全に封じ込めることはできずに、江戸時代通して湯女は残ってたんですと。

洗い場で体を洗ったあと拭いて、脱衣所で服を着る、ほんで余裕のある男は二階の休憩所みたいなとこで入浴料と同じくらいの金を払って寛ぐと。休憩所は男専用で、菓子を食べたり茶を飲んだりしてダベると。町人たちはここで囲碁将棋したり、情報交換の場として集まったそうです。壁には商品の広告があったり、芝居や相撲の番付表があったりした社交場でした。

面白いのが覗き穴があって、一階の女を覗いてたんですと。一階で入浴してる時はさすがにジロジロ見れないから二階から凝視してたんでしょうな。ウケる。

と、湯屋は江戸庶民には必要な場所で、愛すべき場所だったんでしょうな。今でも銭湯は町の人の憩いの場という側面がありますもんね。みなさんも江戸の湯屋に想いを馳せながら銭湯に行ってみてください。女湯は二階から江戸の町人が覗いてるかもしれませんよ(伸鼻)。

挿絵:西のぼる 協力:新潮社

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