【U-18W杯】ミスが敗戦につながった台湾戦、国際大会の怖さも 専門家は「この先も覚悟しないと」

侍ジャパンU-18代表は台湾代表に1-3で敗れた【写真:荒川祐史】

5回降雨コールドで無念の敗戦、終了直前にミスから失点「自滅という形に」

 韓国・機張(きじゃん)で行われている「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(全試合テレビ朝日系列・BS朝日・AbemaTVで放送)で、野球日本代表「侍ジャパン」高校代表は2日の台湾戦に1-3で5回降雨コールド負け。グラウンドコンディションが悪化する中、5回に2失策が絡み勝ち越しを許すと、9回まで戦うことができずに4試合目にして今大会初黒星を喫した。

 不完全燃焼で無念の黒星となったが、ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季までヤクルトで2年間バッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、16-7で勝利した米国戦でも指摘していた「ミス」の多さが大きく響いたと分析。悲願の世界一へ向けて、守備位置の入れ替えなども1つの手だとしつつ、この敗戦が「引き締め」の材料になるとした。

 1-1の同点で迎えた5回、ミスが失点につながった。先頭ワン・シュンホのゴロを遊撃・熊田が一塁へ悪送球。1死からホ・ヘンユの遊ゴロを処理した熊田が二塁へ再び悪送球するなど2死二、三塁のピンチを広げ、3番ロ・ウィーチェには2点タイムリーを浴びた。本職は遊撃手ながら左翼を守る遠藤がグラブを差し出したものの届かず、打球は左中間を抜けた。

 5回を終了し、試合が成立した直後に無念のコールドゲームに。無念の敗戦となったが、野口氏はあえて厳しく指摘する。

「ピッチャーの宮城は球審がなかなかストライクを取ってくれない中で頑張りました。ただ、チームとしては天気が悪い中でプレーボールがかかっていたので、こういうルールがある以上、それを頭に入れて5回終了時点でリードしていなければいけない。最悪、同点という形を取っておかなければいけないのに、その5回以前にミスから自滅という形になってしまいました。塁に出したきっかけもエラーでしたし、最後のレフトオーバーの適時二塁打も本職が内野の選手のところに飛んでしまった。仕方ないといえば仕方ないですが、そこもミスと言えばミスでした。

 悪送球については、こういう雨が降って濡れているグランドでゴロをさばいたときに、目いっぱい投げるとミスになります。いつも目いっぱい投げていると、抜けたときに余計に悪送球になってしまう。常に全力送球しているので、逆に近くのスナップスローをしなければいけないときには2つ目のプレーのようなミスが起こる。普段、自分の学校の練習場でゴロをさばいた時はあんなことはないと思います。なかなかああいう状況に慣れていないから、と言えばそれまでかもしれませんが、その中で試合をしているわけなので、慣れるしかないというのも確かです。本人が一番わかっているとは思いますが……」

 堅守を誇る熊田だが、1度ポジションを入れ替えてみるのも1つの手ではないかと野口氏は提案する。

「これだけショートの選手が多く選ばれているので、その中で(守備は)彼が一番上ということなのでしょうが、勝つということを考えるのであれば、そういうところも1つ考えなければいけないかもしれません。逆に言えば、ショートを守れる選手が他にいるので、1度入れ替えてみるというのがあってもいいかもしれない。監督がああいう布陣を決めたので、そこでやっている選手が頑張るしかないのもしれませんが、使う側としては色々なオプションがあってもいいのかなと。ショートをやれる選手がいっぱいいるだけに。熊田は打撃でも貢献度が高いので、石川にサードを守らせて、熊田をDHにいて、遊撃を違う選手に守らせるという形を試してもいいかもしれません」

「国際大会は本当に何があるか分からない」「この先も覚悟しないと」

 一方で、世界一へ向けて、オープニングラウンドでこういう形での敗戦を喫したことをむしろポジティブに捉えるべきだという。米国戦についても「ちょっとミスが多すぎました。記録がヒットになっているのも、これはエラーだろうというのがけっこうありましたよね」と指摘してた野口氏。米国戦は打力でカバーしたが、台湾戦は降雨コールドという“不運”な形で敗戦につながった。これは「引き締め」の材料にできるというのだ。

「ミスが勝敗につながってしまった。米国戦みたいに打線がつながって点が取れれば、少しは目を瞑れるところがあったかもしれませんが、台湾戦は敗因になってしまった。ただ、反省材料、引き締めとしてはいいことだと思います。台湾戦もあのまま試合が続いて、米国戦のように打って逆転勝ちしていたら、また(ミスが)消えてしまうし、埋もれてしまう。締めていくにはいい材料になったかなと」

 特に、釜山は今後も悪天候が続くことが予想されており、同じような条件で試合を続けていかなければいけない可能性が高い。コンディションが悪い中でやるしかないという状況が続く。

「これから先もずっと雨の中で試合が続く。天気を理由にできません。芝に慣れていない、天気が雨だから、とは言えなくなってきます。条件はみんな同じでやっているわけですし。しかも、日程の都合上、少々の雨でも中止にできない。他の試合が中止になっている中で、もう中止にできないので、ちょっとやそっとの雨ではやめてくれないでしょう。台湾戦よりひどい状況の中でやらなければいけない可能性が出てきます」

 天候やグラウンドコンディションだけでなく、あらゆる面で何が起きるかわからないのが国際大会。台湾戦では、3回に相手のダブルスチールで1点を失った場面で、一塁手の韮澤が一塁走者に明らかにタッチした映像があったにもかかわらずセーフとされ、リプレー検証でもアウトに覆らないという不可解な判定もあった。野口氏は、そういう状況の中でも勝っていく逞しさが必要だと指摘し、侍ジャパンのタフさに期待する。

「あの場面は、韮澤の判断はあれでよかった。投げるときに1度ジャッグルしなければ、少なくともホームはアウトだったので、ミスはそこだけです。ああいうプレーにあるのはしょうがない。一塁走者にも実際にはタッチしていましたから。相手のももに完全に触れていた。完全に誤審でした。あの場面では、走者はセーフとアピールするに決まってますから。国際大会は本当に何があるか分からない。主審もストライクを取りませんでした。どちらかというと、台湾のピッチャーのほうが(ストライクを)取ってもらっていたように見えました。国際大会はそういうことが普通にあるので、この先も覚悟しないといけない。その中で実力で圧倒していかないといけない。そう考えると、話は最初に戻りますが、やはりミスしてはいけないということになります」

 苦しい状況に立たされても、それを跳ね返し、勝つことが求められる。国際大会の厳しさを受け止めながら、侍ジャパンは前に進んでくしかない。(Full-Count編集部)

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