そふび道 - ソフビの魅力を分かりやすく伝えたい!

ソフビ?

──そもそも「ソフビ」とは?

そふび道:おもちゃです。素材的には広範囲で使われていますし、今ではアートピースとしてもソフビ作品がありますが、今も昔も「こわれないおもちゃ!」だと思います。それが個人的に大好きなんです。

──「こわれないおもちゃ」確かに、わかりやすいですね(笑)。ではソフビとの出会いと『そふび道』として活動するに至った経緯は?

そふび道:出会いは、90年代の中頃のホビーブームで徳間書店さんから出ているおもちゃ情報誌『ハイパーホビー』に参加したことです。もともとフリーライターとして『ハイパーホビー』編集部の隣にあった『アニメージュ』で仕事してて、そこでCG映画『トイ・ストーリー』を知って、そのアメトイ情報が欲しくて、よく『ハイパーホビー 』の方とお話ししてたら「参加しないか? 」とお誘いを受けたんです。それをきっかけに、いろんなトイショップへ行くようになり、そこで70年代ごろ発売されたデフォルメタイプの怪獣ソフビがバンダイよりセットで復刻されてて、それを手に入れてからソフビの道へ転がり落ちてしまいました(笑)。もともと私は70年代の第二次怪獣ブームの世代で、子供の頃のおもちゃとはブルマァクなどの各社が発売した怪獣をはじめとしたキャラクターソフビでした。怪獣ソフビとは60年代の第一次怪獣ブームでマルサンさんで誕生し、70年代の第二次怪獣ブームで、その金型を引き継いだブルマァクさんによって隆盛を極めます。この70年代当時は、ほかメーカーからもこぞってキャラクターソフビが発売され、おもちゃといえばソフビだった時代なんですよ。またその後、80年代のガレージキットブームで、ビリケン商会さんという今でも続いているショップさんが出来の良いヒーロー&怪獣などのソフビキットを発売してて、かっこよかったので思わず買ってしまいました。当時は今ほどソフビを意識してませんが、いつの時代もなんとなく自分の周りにはソフビがあった印象でしたね。そういう刷り込みもあったので、転がり落ちやすかったのだと思います(笑)。そして『ハイパーホビー 』で仕事するようになって、1960~70年代に隆盛を極めた怪獣ソフビを現在に蘇らせていたメーカーさんがいろいろ活動していることを知りました。代表的なのがM1号さん、ベアモデルさん、円谷コミュニケーションズさん(今のやまなやさん)や、97年にはバンダイさんからブルマァクさんの怪獣ソフビ復刻シリーズが本格的にスタートし、98年にはマルサンさんも怪獣ソフビの発売をスタートさせた。率先してそんなメーカーさんたちのソフビを紹介している中、99年にM1号さんを特集をしたら凄く評判が良かったんです。そして新作ソフビ紹介コーナーを企画して、『そふび道』が99年10月発売号からでスタートするんです。ちなみに『そふび道』では、こだわりがありました。当時のホビーやフィギュア誌のソフビ記事といえば、アンティークで高価な1960年~70年代のソフビ紹介がメインで、私も個人的にそういう記事を楽しんでました、でもアンティークには知識も興味もないので、『そふび道』はあくまでミーハーに「新作ソフビだったらなんでも紹介して、ひとりでも多くの方にその魅力を知ってほしい」ことでした。おかけで『ゴジラ』や『ウルトラ』などの版権モノから、2000年代以降に勢いをつけたオリジナルキャラクターによるアーティストモノなどなんでも紹介できて、多分日本で唯一無二のコーナーになることが出来たと思っています。

──そふび原理主義でもテーマとなっている”誰にもわかりやすいソフビの魅力”の源流ですね。では個人的に一番最初に買ったソフビは覚えてますか?

そふび道:60年代のマルサンや70年代のブルマァクの怪獣ソフビだと思いますが、やたら印象に残っているのは、中島製作所(現・ナカジマコーポレーション)さんが60年代後半から70年代前半に発売した『タイガーマスク』ソフビです。怪獣ソフビが欲しくて親にねだるのに、なぜか買ってきてくれるのは『タイガーマスク』の悪役レスラーで、ちょっとがっかりした思い出があります(笑)。

──タイガーマスクでもなく悪役の方だったんですね(笑)

ソフビ界の変遷について

──『そふび道』が99年スタートということで20年間関わって来た中でのソフビ界の流れや印象的な出来事や時期はありますか?

そふび道:『そふび道』をスタートさせた90年代終盤のソフビ界は『ゴジラ』や『ウルトラ』などの怪獣ソフビが大ブームでイベントでは各メーカーさんのブースに毎回1000人ほどが列を作るほどでした。この時期の勢いは本当に凄かったです。その後、2000年代に入るとそのバブルが弾けて、逆にオリジナルの個人製作ソフビメーカーがポツポツ現れて、それが2005年頃に勢いづくんです。そんな中、アメリカやヨーロッパなどの海外クリエイターが日本製のそうしたソフビを製作し始めたり、量産モノとは別に1点モノカスタムとして作品を発表する流れが生まれて、それを日本のオリジナルのメーカーもやり始めた。これはソフビ界内の出来事で小さかったけど熱量はありましたね。それが落ち着いた2010年代、とんがったフィギュアメーカーとして国内外で注目されているメディコム・トイさんがいろんなソフビを開発し始めた。メディコム・トイさんの場合、メーカーですから各フイギュア誌に広告を載せます。それによって新たな層がソフビを知り始め国内のシーンが息を吹き返しました。そしてそれが落ち着いた2015年ぐらいに、今度はアジア圏でソフビが爆発的に注目されます。そしてオリジナルを製作した国内作家さんたちが海外進出し始めるようになるんです。もともとソフビ界は小さなシーンだと思っていましたが、小さいなりに山あり谷ありの流れが生まれ、ソフビはまだまだ知る人ぞ知る存在ですが、小さいながらもスタンダードな趣味になったようにも感じます。

──そんななかここ数年では海外特にアジアのソフビメーカーやユーザーもとても元気な印象を受けますが、様々な国内外のイベントやメーカーさんと関わっているそふび道さんとしてはこの流れはどう感じますか?

そふび道:アジア圏での勢いは実に刺激的だと思います。オリジナルはもちろん「日本で発売しても……? 」な版権モノキャラクターもどんどんソフビ化する勢いは本当に羨ましい。ただこのソフビはどこのメーカーなのか? 誰の作品なのか? 少々分かり辛いので雑誌だと紹介し辛い(笑)。

──ユーザー側としても「名前? メーカー? ....あぁバージョンの名前なんだ」みたいな時がたまにありますね(笑)

そふび道:あとアジア圏の勢いによって、先の質問でも言った通りオリジナルの日本のクリエイターさんたちが海外へ流れています。東京だとまだ大丈夫ですが、完全に地方が置いてきぼりになってて、日本国内全国的に見るとオリジナルの人気は落ち着いている印象もあるんです。それにアジア圏でも、どんどんソフビ製作する作家さんたちが誕生して人気を得ています。アジア圏各国でソフビシーンが作られてゆくと、それまで日本から呼ばれていた作家さんもだんだん呼ばれなくなる。現在、アジア圏でのブームも落ち着きつつあるのかな? そんな中、国内のオリジナルのシーンがどうなるのか、今分岐点に差し掛かっていると思います。ただこれはあくまでも国内のオリジナルの作家さんたちへの印象であって、逆に版権モノを製作されているメーカーさんたち、やはり強くて国内人気はもちろん、アジア圏からのファンも増えたのでとても元気ですね。

──シーンというと高額取引や転売問題などもありますね。

そふび道:それはもう作る側と買う側の問題で、実はどの分野にでもある話なので、そんなに深刻になることではないと思っています。転売屋を嫌うメーカー&クリエイターさんは多くいますが、だったら数を作ればいいだけだと思います。中には数を少なくして枯渇感を煽るメーカー&クリエイターさんもいるので、まあそれぞれで好きなように活動されればいいと思っています。ただソフビ者がこうした問題が原因でイヤな思いをして、ソフビを嫌いにならないでほしいと願っています。

──皆さん考えやスタンスは様々ですもんね。その中で、個人的に最近一番気になっているソフビや魅力的な作家さんメーカーさんはいますか?

そふび道:具体的に言うといろいろややこしいので言いませんが、ちょっと人気があって「オレがソフビ界のNo. 1だ!」という鼻息の荒いメーカー&クリエイターさんが作っているソフビより、好きで楽しんで作っているメーカー&クリエイターさんのソフビが好きです!

──理由を聞いてもいいですか?

そふび道:初めはただ好きで作り始めていたのに、人気が出て「オレがソフビ界のNo. 1だ!」みたいな余計な承認欲求というか個人のエゴが乗っかってくるメーカー&クリエイターさんのソフビって、だいたいキャリアを重ねれば重ねるほどアイデアなどの行き詰まりを感じてつまらないからです(笑)。

前回の様子/photo:kanon

ソフビの魅力とは?

──魅力というとソフビ好きそれぞれ魅力を感じるポイントは違うと思いますがそふび道さんの個人的に重視するソフビの魅力と、魅力的なソフビとは?

そふび道:ソフビの魅力は『そふび原理主義Vol.1』で語るつもりが、あまり語れませんでした(笑)。これは完全に個人的ですが「ゆらぎのある曲線の柔らかい造形こそがソフビ素材のポテンシャルを最大限引き出す!」と感じています。そのため、それが実現出来ているソフビ。簡単に言うと大体1960年代~70年代に製作されたソフビたちです。

──「ゆらぎ」に関してはそふび原理主義Vol.1でも少し触れられてましたね。

そふび道:ロウソクの炎などのゆらぎのある形には、人の心を安定させる効果があるそうです。よくソフビは「懐かしさの魅力」と言われます。実はゆらぎのある造形って毎年の年始参りなどの寺や神社の参道で売られる干支人形などがよく見るとそうした造形なんですよ。もともと1960年代~70年代にいろんなキャラクターソフビの造形を担当した原型師さんたちは、そうした干支人形なども制作されていたりします。つまりゆらぎのある造形とは我々、日本人にとって昔から馴染みのある造形で、それは心を安定させる効果がある。つまり日本人なら誰にもでその魅力が刷り込まれているはずなんです。それがソフビの魅力なので、ぜひ「そふび原理主義」では、そうした部分を語り、ひとりでも多くの方にソフビ好きになってほしいと願っています。

「そふび原理主義Vol.2」について

──前回の「そふび原理主義Vol.1」では豪華ゲストとお土産でも話題になりましたが、今月9/14(土)には「そふび原理主義Vol.2」が開催されます。今回のゲストと見所は?

そふび道:「そふび原理主義」は怪獣ソフビなどのスタンダードなソフビの魅力を語る第1部とクリエイターによるオリジナルの視点からソフビの澪力を語る第2部で構成しています。「そふび原理主義Vol.1」では第1部にM1号の西村祐次氏、第2部に女性アーティストの照沙氏&ザリガニワークスの坂本氏にご登場いただきました。今回は第1部に怪獣造形でM1号ソフビ原型も数多く担当された品田冬樹氏、第2部にアパレルのPUNK DRUNKERS主宰の親方氏にご登場いただきます。別にお2人が並んでトークするわけではありませんが、この顔合わせは「そふび原理主義」ならではだと思います。ただトークは小難しいことを語るつもりは全くありません。池上彰氏のニュースショーのように、ソフビというマニアな題材を、なんとなく知っているだけの方に、分かりやすく魅力を伝えたいと思っているので、コアなファンが呆れるぐらいのゆるいトークショーにするつもりです。ぜひその辺を楽しんでください。また会場のLOFT 9さんはオシャレなカフェで、当日限定のドリンク&フードも考案するはずので、お食事のついでにトークも楽しんでもらえればとも思います。ぜひお越しください!

前回の様子/photo:kanon

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