胆振東部地震から1年【中】

被災地・安平

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政教分離が支援阻む

社殿の修繕を終えた早来神社=今年8月29日午後1時半

 胆振東部地震で被災した寺社の復旧が遅れている。社殿や灯籠が損壊した場合は、政教分離の原則で公的支援が受けられないためだ。寺社の補助についてはあくまでも指定文化財に限るとする道に対し、寺社側は「地域に根付いた寺社は(指定の有無に関わらず)文化財である」として支援の必要性を訴えている。

●地域の伝統

地震で倒壊した社殿=昨年10月4日午前11時

 「形が違う。大変だ」。地震発生後、早来神社(安平町)の高橋晴昭宮司(71)は、まだ薄暗い境内で瞬時に異変を感じ取った。社殿の屋根は落下し、鳥居や祭具庫が損傷。地面には亀裂が入っていた。

 1894年(明治27年)に建立した社殿の修繕に2千万円弱、その他を含めると3千万円超の費用が必要だった。このため今年2月、氏子や世話役を中心に「復興再建事業奉賛会」を組織し、資金を募った。

 社殿の修繕費はめどが立ち3月末に解散したが、それでも数百万円が不足しているため、境内の地面の修復などは高橋宮司自ら行っている。「政教分離の原則は本来、信仰を妨げないためにある。地域に根付いた寺社は文化財であり、そこに義援金が充てられるのは不自然なことではない」と訴えた。

 それでも着実に日常を取り戻しつつある。昨年中止した秋季例大祭を7、8日に開く。みこしなど一部の実施は見送るものの、人気の子ども相撲などは2年ぶりに行う。高橋宮司は「例大祭は町民の慣習。地域の伝統を守りたい」と語った。 道は復興に向けたロードマップを策定し、住宅再建や農業被害への対策などに加え、指定文化財への公的支援について方向性を示している。道復興支援室は「国や道が文化財と指定した寺社については、既存の交付金から再建費用を捻出する」と説明した。

 2016年(平成28年)4月の熊本地震では、県が地域コミュニティーの再建支援事業として、宗教法人が関与していても自治会や周辺住民が管理していれば、社殿の修繕には補助が認められた。これに対し、道は「仮に自治会や町民が管理していても、宗教法人の関与が認められる場合は公的支援の対象外となる」としている。

●指定文化財

 道内外で災害ボランティアを続ける室蘭市内の寺の住職の男性(43)は「地域のよりどころとして捉えれば、寺社への公的支援は間違ったことではない。ただ宗派や地域の異なる人が、公的資金の投入に疑問を感じる可能性はある」と道の対応に一定の理解を示した。
(鈴木直人)

(2019年9月5日掲載)