【U-18W杯】侍でプロの評価上げる2人 西は「単独指名も」、石川は「阪神やヤクルトに…」

侍ジャパンU-18の東邦・石川昂弥(左)、創志学園・西純矢【写真:荒川祐史】

オープニングラウンドで活躍する2人、西は「何より投げっぷり、腕の振りがいい」

 韓国・機帳(きじゃん)で開催されている「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(全試合テレビ朝日系列・BS朝日・AbemaTVで放送)で、初の世界一へ向けて5日からスーパーラウンドに臨む野球日本代表「侍ジャパン」高校代表。オープニングラウンドは、最終戦のパナマ戦(3日)に5-1で6回途中コールド勝ちを収め、4勝1敗でスーパーラウンドに進出した。4番の石川昂弥内野手(東邦)が5回に決勝3ランを放つと、先発の西純矢投手(創志学園)は6回4安打1失点(自責0)7奪三振1四球の快投。開幕から活躍を続ける2人の評価は日に日に高まっている。

 ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨年まで2シーズンはヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、西については「ドラフトで単独1位指名もありえる」と絶賛。さらに、石川についても木製バットへの適応を高く評価し「右の大砲が欲しい阪神やヤクルトにはいいのではないか」と分析した。

 米国戦、台湾戦に続いて3連投となった西は、パナマ戦でも快投。2回には味方の失策と連携ミスから自身の送球エラーも出てしまい、先制点を献上したものの、その後は走者を出しても無失点でしのいだ。元々、大船渡・佐々木、星稜・奥川、横浜・及川とともに「高校四天王」と称され、ドラフト1位候補の一人と見られていたが、この大会でプロからの評価は確固たるものになったと野口氏は絶賛する。

「パナマ戦もいいピッチングでした。あのフォークボールは、やはり外国人選手には効きますね。ボールの切り方が少しスライダーっぽいので斜めに落ちますが、空振りを取るには十分。ちょっと高めに浮くときがあるのは気になりますが、それが逆に効いて空振りを取れたりしています。何より投げっぷり、腕の振りがいい。あれだけ腕を振れるから、バッターはボールになる変化球も振ってしまう」

 即戦力として今秋のドラフト1位で一本釣りを狙う球団も出てきそうだ。

「このピッチング見ていると、外れ1位くらいでは消える素材ですね。単独指名を考えてもいいかなというくらい。奥川のように即戦力タイプ。入団したら、来年すぐに1軍で出てくると思います。あとは、プロのカテゴリーに上がると、体力を今までと違った形で使うようになります。今までは、抜くところは抜いて、力を入れるところは入れて抑えられたでしょうが、プロで投げることによって、最初はスタートから全力で投げるようになる。そのときにどのくらいの球数が持つかなと。ただ、間違いなくいいピッチャー。素晴らしいです」

 もちろん、今は本人もワールドカップでの初の世界一だけを見据えているはず。佐々木と奥川もスーパーラウンドでは復帰する見込みだが、野口氏は西の起用法が「ポイントになる」と分析。オープニングラウンドではフル稼働しただけに「大変ですが……」とした上で「日本の命運を握るピッチャーです」と期待を寄せた。

石川は木製バットに対応「プロ1年目から全く苦労しないのでは」

 打者では石川の活躍が光る。ここまで14打数7安打の打率.500、1本塁打、8打点。1日の米国戦で初回に同点打を放つなど3打点を挙げると、スーパーラウンド進出がかかったパナマ戦では5回に決勝3ランを叩き込んだ。ジャパンの4番として役割を十二分に果たしている。

 野口氏は内角へのボールをうまくさばいたパナマ戦のホームランについて「見事」と絶賛。木製バットへの「対応力」も評価した。

「選抜の時も素晴らしい打撃を見せていましたが、同じような打撃を木製バットでもやってしまっている。インコースの球をうまく(腕を)畳んで打った、技ありの一打でした。4番を任せるだけのことはあるなと。

 石川は東邦が愛知大会で負けてからずっと木製バットに変えて練習していたらしいので、甲子園に出ている選手たちと比べると1か月くらいは長く練習できているということになります。ただ、1か月打ち込んでいたとしても、あの打撃は相当なもの。センスがあります。私もヤクルトでは2017年に2軍でコーチをやっていましたが、木製バットに変えたところであれだけ振れる選手はあまり見ませんでした。そう考えると、高卒で入ってもこの選手はプロ1年目から全く苦労しないのではないでしょうか」

 木製バットに対応し、今大会で活躍を見せていることで、確実にプロの評価は上がっていると野口氏は見ている。

「右のロングヒッターが欲しい球団は獲りに行くのではないでしょうか。阪神あたりは狙い目ではないかと。ピッチャーもやっているくらいなので肩も強いですし、動きを見ていると外野もできそうです。あれだけ三塁がこなせれば間違いなく一塁も守れるようになる。阪神、ヤクルトあたり、右の長距離砲が欲しいチームにはいいのではないでしょうか」

 ドラフトへ向けて、石川をリストの上位へと動かした球団もありそうだ。

 カナダ、韓国、オーストラリアと対戦するスーパーラウンドでは、佐々木、奥川の2人が復帰する見込み。だが、オープニングラウンドで日本を牽引してきた投打の“柱”が、この先も世界一へのキーマンとなることは間違いない。(Full-Count編集部)

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