社説:五輪パラ券購入 共生社会は看板倒れか

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 これでは目標とする「共生社会の実現」が看板倒れと言われても仕方がないだろう。

 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が、大会のチケット購入方法について説明する点字資料や、必要な情報を音声で案内するCDを作成していないことが分かった。

 購入方法が視覚障害者に分かりにくいと、東京都盲人福祉協会が作成を要望したが、組織委はチケット購入のホームページ(HP)を音声読み上げ対応にしているなどとして応じていないという。

 組織委はバリアフリー化の指針で「公共的な文書は全て、点字、テキストデータ、拡大文字または音声形式で提供することが望ましい」としている。

 自ら指針に反するようでは、視覚障害者が反発するのは当然だ。組織委は情報提供の方法を検討し直すべきではないか。

 組織委は作成しない理由として、HPが音声読み上げ対応になっているだけでなく、配慮が必要な人の専用ダイヤルも設けていることを挙げる。

 だが、協会によると、高齢者を中心にパソコンやスマートフォンを使えない人が多いうえ、組織委のHPは膨大な情報があるため、音声読み上げに時間がかかり、専用ダイヤルに行き着くのも困難だとしている。

 そもそも、チケットの購入手続きは健常者でも煩雑で手間がかかる。視覚障害者に特別な配慮が必要なのは言うまでもない。

 組織委は、点字印刷物やCDだと販売時期など流動的な情報が後で修正できなくなることも、作成しない理由に挙げている。

 だが流動的な情報は別にして、協会が指摘するように、購入方法の要点やダイヤルの番号だけでも点字やCDにして周知すれば随分と手助けになるのではないか。

 組織委は視覚障害者の全国組織「日本盲人会連合」からは理解を得ているとしているが、同連合の幹部は「東京都だけの問題でなく、全国の視覚障害者が会場に訪れたいと思っている。点字などを用意しないのは間違いだ」としている。

 組織委は指針で「障がいの有無にかかわらず、すべての人々が相互に人格と個性を尊重し合う共生社会」を目指すと宣言している。

 その指針を重んじるなら、組織委は視覚障害者の立場にもっと寄り添った対応がとれるはずだ。自省を促したい。

 チケット購入から排除される人をつくってはならない。