ホンダ 新型N-WGN試乗|新型N-WGNはN-BOXもびっくりの出来栄えだった

ホンダ N-WGN

新型N-WGNはN-BOXと堂々と戦えるクルマに生まれ変わった

N-WGN 2013モデル

今、日本でもっとも売れているクルマはご存知、ホンダ N-BOXだ。スーパーハイト系軽自動車のホンダ N-BOXを抱する第二世代ホンダNシリーズの最新作が、ハイト系軽自動車のホンダ N-WGNだ。

Nシリーズの中でもスポーティーなキャラクターを与えられていた先代(初代)N-WGNはこれまで、N-BOXの陰に隠れた存在であり、圧倒的な人気と販売台数を誇るN-BOXに対して、各社ハイト系軽自動車の6台中、5位に甘んじていたのだ(2018年のデータ)。

しかし、ニューシンプルをテーマにした新型N-WGNは、最初に言ってしまえば、王者N-BOXと堂々勝負できるほどの快作に仕上がっていたのである。

VW ポロを目指して作ったってマジ?

VW ポロ

何しろ、ベンチマークとしたのはN-BOXでも同ジャンルのライバルでも、上級車のフィットでもない、歴代が世界のコンパクトカーの基準ともなっているVW ポロ(ボディーサイズやホンダのエンジニアが認める走行性能を備えた先代型)なのである。

新型N-WGNは上級車と顔負けの最新技術を全部乗せ

ホンダ N-WGN

プラットフォーム、NAとターボの2種類のエンジン、CVTは基本的にN-BOX譲り。

だが、ジェイドRSやヴェゼルRSに使われるCVTのブレーキングによって減速制御を行うステップダウンシフト、リニアな加速感をもたらすGデザインシフト、新制御ロジックのパワステ、より安定方向に振られたアジャイルハンドリングアシスト、フリクションを低減するサイドフォースキャンセリングスプリング採用のフロントサスペンション、テレスコピックステアリング、リンク式ペダルなど、上級車譲りのホンダの最新技術を惜しみなく投入しているのだからびっくりである。

渋滞対応付きACCが「全車標準」にしたのはアツい! しかも127万円〜

ホンダ N-WGN
ホンダ N-WGN

しかも、全グレードに標準装備される先進安全支援機能のホンダセンシングは、夜間の歩行者の検知性能を向上させ、横断自転車をも検知する自動ブレーキや車線維持支援システム、前後誤発進抑制機能(ブレーキ機能はなし)などのほか、ついに0〜135キロで作動する渋滞追従型ACC(アダプティブクルーズコントロール)を、ホンダの軽自動車として初採用。

走行性能はもちろん、先進安全支援機能についてもクラスをリードする存在になったというわけだ(ハイト系ワゴンのACCは日産 デイズの場合、ハイウェイスターのプロパイロットエディションのみの設定。三菱 ekワゴン、ekクロスは一部グレードにオプション。ダイハツ ムーブ、スズキ ワゴンRはACC未設定)。

まゆ毛付きのオメメがかわいい標準車は軽史上最高のデキ?

ホンダ N-WGN

さて先代の角目から、まゆ毛付き!? の丸目になった、ニューシンプルをより強くアピールする標準車のNAモデルの運転席に着座すれば、ふんわりとしたソファ感覚でありながら、上半身を体重によってしっかりとサポートしてくれるシートのかけ心地の良さ、自然なペダル配置とドライビングポジション、全方向の視界の良さに納得だ。

N-WGNのノンターボは出足のトルクなどスムースさはピカイチ

ホンダ N-WGN
ホンダ N-WGN

走り始めれば、出足のトルク感、スムーズさはハイト系ワゴンのNAモデルとして最上級と言っていい。パワーステアリングは穏やかなレスポンスを示すとはいえ(カスタムターボ比)「切る」「戻す」の両方向ともに実にスムースだ。

そしてクルージング中の車内の静かさ、14インチタイヤによる段差やマンホールをしっかりしなやかにこなす乗り心地は、どう見ても軽自動車らしからぬレベルと言っていい。動力性能そのものは平たん路であれば、一般道、高速道路ともに必要十分以上。80〜100km/h巡航も楽々こなす実力だ。登坂路や合流などでのフル加速時にターボとの差が気になる程度なのである。

ホンダ N-WGNカスタム

新型N-WGNカスタムは普通車並みの性能と乗り心地

一方、どんなライバルとも似ていない、ボックスデザインのボンネット、上級感と堂々感あるメッキグリルを採用するカスタムのターボモデルに乗り換えれば、ズバリ、ライバルなき上質な走行性能に驚かされることになる。

ホンダ N-WGNカスタム
ホンダ N-WGNカスタム

エンジンはホンダのターボユニットらしい硬質な回転上昇感を披露しつつ、先代よりずっと大人っぽい質感ある回転フィール、濃厚な加速感が持ち味。

15インチタイヤを履きながら、専用チューニングされた足まわりによる乗り心地も実に洗練されたもので、フラットで快適そのもの。

もちろんステアリングの応答性、リニアさは、標準車の14インチタイヤ装着車とは別物と言ってよく、カスタム専用の表皮が奢られるシートの高級車さながらの分厚いクッション感、かけ心地の良さと相まって、終始、軽自動車に乗っていることを忘れさせてくれるほどだった。

新型N-WGNは走り付き納得の走行性能! CVTの制御も◎

ホンダ N-WGNカスタム

CVTのダウンシフト制御も優秀だ。制御は約40km/h以上で働くのだが、まるでヒール&トゥやパドルシフトのダウシフトのような減速感が得られ、特に山道や高速カーブ、下り坂での安心感、再加速性に貢献。ブレーキペダルをポンポンと2回踏めば、ギアを2段落したような裏技的減速も可能となる。

N-BOXターボユーザーが嫉妬するほどの走り!

ホンダ N-BOXカスタム

ところで、これまでN-BOXのターボモデルに乗っていて気になったのが、アクセルの踏み始め、約2000rpm前後で発生するゴロゴロした振動感(そのため、これまでN-BOXのターボを推せなかった)。

それが同じエンジン、同じCVTにもかかわらず、新型N-WGNではほぼ解消されていたのだ。理由を開発陣に聞けば、CVTのマップを書き換え、2000回転前後をなるべく使わない制御にしたのだという。ゴロゴロ感はゼロにはなっていないが、N-BOXターボでそのあたりが気になっていたユーザーは、ぜひN-WGNターボに試乗して確認していただきたい。

ACCは上出来! 悪天候でも心配なし

ACCは雨の中の認識性能も文句なく、また、減速からの再加速性能も力強く、それこそステップワゴンのACCを凌いでいると感じるほどだった。ただし、強風のアクアラインを走行したときの横風には、ハイトな全高が災いしてか、やや弱い印象を受けた。

新型N-WGNは軽史上最高のかけ心地? フル乗車でも快適

ホンダ N-WGNカスタム
ホンダ N-WGNカスタム

広大な空間を持つ後席のかけ心地も上質だ。シートフレームを乗員から遠ざけることで、ソファ感覚でありながら、しっかり快適で底付き感のない、軽自動車最上級のかけ心地を実現している。先代カスタムターボで見られた、段差などによる強い突き上げ感もないに等しい。これなら3〜4名乗車の遠出もまったく無理なしだろう。

ユーザー目線で収納をプロデュース

ホンダ N-WGN

最後に新型N-WGNのユーティリティに触れると、前席回りの収納は助手席前のスマホ置き場&USB;充電装備を含めかんぺき。後席にもスマホポケットを用意しているぐらいで(前席シートバック)時代を読んでいる。

先代のイイとこはそのままに、より便利になったラゲッジ

ホンダ N-WGN
ホンダ N-WGN

また、ラゲッジルームはフロアボードによる2段ラックモードが基本(後席格納によるフロア長拡大を含む)。ハイトなクルマだけにラゲッジを上下2段で使えるのは便利かつ効率的だ。下段は外から見えないトランク的に使え、また上段はショッピングカートに多い地上高約730mmに設定してあるため、スーパーなどでの買い物の積載も横移動で楽々。下段のフロア地上高はN-BOX同等の約490mmという驚異の低さで、重い荷物、例えば装着サイズのタイヤ4本!を並べて積み込む際も容易だ。先代同様、後席の下には傘などが置けるリアシートアンダートレーも脱着式となって継承されている。

N-BOXも戦々恐々? 最新装備てんこ盛りで文句なしのデキ

新型N-WGNは軽自動車らしからぬ走りの良さ、質の高さだけでなく、使い勝手でもクラスをリードしていることは間違いなしだ。純正専用ナビを装着すれば、オペレーターサービスが利用できる(要スマホ接続/デイズにあるSOSコールはなし)機能も備えているから頼もしい。

そう、王者N-BOXもうかうかしていられない仕上がりなのが、新型N-WGNなのである。

何はともあれ、127万円台から渋滞追従型ACCを含む先進安全支援機能がテンコ盛りで付いてくるクルマなど、世界中を見渡してもほかになく、商品力は極めて高いと思えた。

ここしばらくはN-BOX頼りだった!? ホンダのラインアップも、今夏から秋にかけて、この新型N-WGNに加え、フリードの改良・車種追加、4代目フィットの登場を控え、いよいよ「ホンダの番です 反撃編」となりそうだ。

【筆者:青山 尚暉/撮影:森山 良雄】

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