【「サイン」連載企画】《第8回》飯田爽プロデューサーがリメークに至った経緯を語る!「いわゆる“事件モノ”からはみ出た、新しいものになるんじゃないか」

【「サイン」連載企画】《第8回》飯田爽プロデューサーがリメークに至った経緯を語る!「いわゆる“事件モノ”からはみ出た、新しいものになるんじゃないか」

──真実は、勝たなければ“真実”にはならない──。最高視聴率25.5%を記録した韓国の大ヒットドラマを基に、テレビ朝日が日本バージョンにリメークした「サインー法医学者 柚木貴志の事件―」。本日9月5日放送の第8話では、ついに島崎楓(森川葵)の正体が明らかになり、楓こそが北見永士(横山涼)殺害の真犯人だと確信する柚木貴志(大森南朋)。ただ、現状ではまだ憶測に過ぎず、逮捕できる確実な証拠が見つかっていません…。会田((猪野学)がすべてを話してくれればという一縷(いちる)の望みを懸けて楓の確保へと一同が動きだします。

そんな最終決戦間近のインターネットTVガイド連載企画第8弾では、今作のプロデューサーを務める飯田爽さんにインタビュー! 「サイン」のリメークに至った経緯や、日韓のドラマ制作での大きな違い、キャスティングのこだわりなどについてお答えいただきました。

──まずは、「サイン」をリメークするに至った経緯を教えてください。

「『サイン』自体が最初に韓国で放送されたのが2011年で、その1年後ぐらいにBS朝日で放送しているんですよ。そのタイミングでどハマりして、『これは日本でリメークしたい』と、13年か14年ぐらいから作業を始めました。今回7月クールで韓国ドラマ原案の作品が並び立っちゃったんですけど、結果的にそうなったのであって、企画者の思いとしては、前々からやりたかった作品でした」

──6年ぐらい前から構想があったんですね。

「やりたいと思ったのはそこぐらいで、会社に提案していたのもそのぐらいからです。でも、企画って時間がかかったり、タイミングもあるので。今だから『サイン』というわけではなくて、やりたかった『サイン』をやっとここでできたという感じです」

──念願がかなったわけですね。

「『グッドワイフ』(TBS系/原作・アメリカ)や『グッド・ドクター』(フジテレビ系/原作・韓国)の成功例を見て、会社としても海外ドラマのリメークを、地上波テレビドラマとしてやるようになってきたという背景もあります。テレビ朝日は名取裕子さんの『法医学教室の事件ファイル』や、沢口靖子さんの『科捜研の女』など、“法医学への信頼感”みたいなものがあって。『サイン』は権力との闘争を描いていますが、ジャンルとしては法医学のお話なので、同様の信頼感があったのかもしれません。法医学ジャンルであり、事件解決モノであり、医療モノである。そういった軸の判断がありますね」

──原作にどハマりされたとのことですが、どんなところに引かれましたか?

「テレ朝の木曜ドラマというのは強いソフトがたくさんあって、『ドクターX』などに代表されるように、“1話完結でカタルシスがあるもの”が多いんです。しかし、『サイン』の原作は全20話あって、一つの事件を追いかけながら、いろんな事件が途中で入ってくるという構成ですよね。その中で、法医学ジャンルとして遺体の声を聞き、『この人はどうやって死んだのか、誰に殺されたのか』という定番のところも押さえつつ、それを捏造する権力と現場の真実の攻防、勝敗の話が物語の軸であることが面白いなと思いました。各話で、強いヒーローやヒロインが事件を解決するというところを超えたものを感じたので、いわゆる“事件モノ”からはみ出た、新しいものになるんじゃないかなと」

──確かに他の木曜9時枠のドラマとは一線を画しているような気がします。

「法医学ドラマっていうのは名作がたくさんあって。『アンナチュラル』(TBS系)も素晴らしかったですし、『法医学教室の事件ファイル』や『科捜研の女』など金字塔のようなドラマがたくさんあります。ただ、法医学ドラマで『サイン』のような物語って今までなかったと思うんです。遺体の声を聞いて、その人の人生や事件、犯人を明かすことを楽しむドラマではなくて、捏造や権力に対して現場が勝っていかなきゃいけないという。同じ法医学のジャンルだけど、切り口が違うんですよ」

──「サイン」は、法医学で事件を解き明かすことがすべてではないですもんね。

「あとは、やっぱりラストの終わり方にほれ込んだというのもあります。韓国版では、19話で主人公のユン・ジフンがあっけなく死んでしまって。20話には1話丸々、主人公が出ていないんです。『そこまでやります?』みたいな驚きの終わり方ですよね。20話では彼がどうやって死んだのか助手が明かしていくという話になるんですが、普通連続ドラマで最終回に主人公が死んでいるなんてことありますか?(笑)」

──確かに前代未聞ですよね…。

「日本のオリジナルドラマで作ろうとした時には、たぶんそこまではやらないと思うんです。後味が悪すぎるし、犯人確保のために主人公が死ぬとはいかがなものかという懸念も出てきますよね。そこは国民の気質や感覚の違い、韓国ドラマの作法みたいなもので。そこにはすごさを感じて、リスペクトしています」

──お話を聞いていて、日本版ではどのようなラストになるのか楽しみです。

「最終回をやるための連ドラと思っていた部分もあるので、脚本化する時は意見が割れました。脚本家の羽原大介さんの意見は『日本の感覚でやった時に実際どうなの?』と。韓国版では、主人公が自分の体を投げ出して犯人を捕まえるので、言ってみたら自殺する主人公なんです。その主人公像って、美学ももちろんあると思うんですが、共感しにくいんじゃないか、愛されるべき連ドラの主人公でいるべきでは?などの意見が出ましたね」

──どのような結末になっているのかは、放送を楽しみにします! お話にもありましたが、原作は全20話ということで、9話に凝縮する上で苦労した点、難しかったことはありますか?

「話数は減っていますが、事件は起きてそれを解決しなければいけないので、人間関係やキャラクターの変化など、本来いろいろ積み重ねられる部分をなくさなければならず、相当に圧縮されています。登場人物の関係で、例えば柚木と景が近づいていくには本当はもうちょっとストロークが欲しかったところを、2話でバディになっていないといけなかったりと…苦労はしました。ただ、素晴らしいキャストの皆さまだったので、何とかなったかなという感じがあります」

──なるほど。

「原作の大事なエッセンスは、今回のリメークで全部やれているのではないでしょうか」

──もう少し関係構築のストロークが欲しかったということですが、他にも工夫したキャラクターはいますか?

「松雪泰子さんと高杉真宙さんも同じ構造で、師弟関係のバディにしているんですけれども、原作だと2人は付き合うんですよ。韓国ドラマって恋愛要素が多いので、緊迫した話の中で告白シーンや、トレンディードラマっぽいシーンとかも入ってくるんです。日本の『サイン』はF3層(50歳以上の女性)・M3層(50歳以上の男性)が主要ターゲットです。大人の視聴者に向けて『殺人事件を描いているのに、好きとか言ってる場合じゃないだろう』ということで、落としていきまして。韓国ドラマ独特の恋愛の描写をごっそり省略したことで見やすくなったのではないかなと思います」

──日本版と韓国版で、一番大きな違いはなんでしょうか?

「たくさんありますが、特に韓国版では死ぬ人の数が多いです。韓国版では全20話の中でめちゃくちゃ人が死んでるんですよ。猟奇的な殺人とかは徹底して猟奇的で、『そこまでやるか?』というレベルなんです。なので、こっちでやる時は人数を減らしてみたり、あまりにも凄惨なラストはカットしたりしています。カスタムしたんですが、それでも『極端だ』という反応があったので、原作はもっと極端なんですよ、と(笑)」

──そこは文化の違いが大きく出ている気がしますね。

「あとは、韓国版は表情や見せ方が“強い”というか。直接的な表現をする感じがあります。例えば、柚木と伊達明義(仲村トオル)がけんかするシーンなどは、もちろん日本版でもやっていますが、もっと直接的に『権力の犬め!』みたいなセリフがあったり。歌舞伎みたいなキメ顔が頻繁に登場したり、特徴がある演出だなと思います」

──主演に大森さんを配役した理由はなんでしょうか?

「(韓国版の主演の)パク・シニャンさんのイメージがあって。パクさんは見ているうちにだんだんかっこよく見えてくる、不思議な俳優さんなんです。彼に近い人を探していった時に、大森さんの映画『アウトレイジ』や『BORDER』(同系)で演じた悪役など、静かなのにどこか荒くれた危ない魅力にひかれました。主役格なのに意外と主演をしていないことにも新鮮さを感じましたし、『サイン』は大人の色気がある人の方がいいと思ったんです。でも、一番は大森さんの演技力ですかね」

──そんな大森さんの相手に飯豊まりえさんを選ばれた理由も教えてください。

「それもやっぱり、原作のコ・ダギョンを演じたキム・アジュンさんのイメージに引っ張られたところがあります。飯豊さん、年齢はすごくお若いんですが、真っすぐかつ天然で、普通は近寄りがたい大先輩にもフラットに近寄っては言い返したり、懐いたり。本人の雰囲気も含めてピッタリだったんです。もともと飯豊さんの泣き芝居がとても好きで。『お父ちゃん!』とか言っているお芝居がやたら合うんですよ。なかなか『お父ちゃん』って泣いてグッとくる女優さんっていないんですけど、素朴な感じとか、人のいい感じ…でも、ちょっと天然でズカズカ踏み込んでいく感じがとても合ってるんですよね」

──では、最後に後半の見どころをお願いします!

「とにかく8・9話は一番原作のエッセンスが詰まっていて。大森さんと犯人の最終決戦では、日本のドラマではあまりやらないであろう“最終回”に挑んでいて。そこは、本当にみんなで悩みながら『これで良いのだろうか』と出した結論を8・9話で出しています。また、大森さんなんですが、最終回を戦うために計算をして6・7・8話あたりはすごく静かなお芝居をしていらっしゃるんですよね。最終回は最初から泣けるんじゃないかなと思います。見ているだけでウッとなるようなシーンも盛りだくさんです。怒る視聴者の方もいるかもしれないんですけれども、これをやるための『サイン』だったと言っても過言ではないので、ぜひ見ていただきたいです!」

【番組情報】


「サイン―法医学者 柚木貴志の事件―」
テレビ朝日系
木曜 午後9:00~9:54

テレビ朝日担当 I・S

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