「衝突の衝撃はすさまじく」 先頭車両の乗客が恐怖を語る 京急衝突事故

トラックと衝突し傾いた車両=5日午後1時ごろ、横浜市神奈川区

 脱線し大きく傾いた先頭車両、黒煙を噴き上げるトラック-。5日午前、横浜市神奈川区の踏切で京浜急行の電車とトラックが衝突し、トラックの運転手が死亡、電車の乗客や運転士ら計33人がけがを負った事故。現場は救急車や消防車が駆け付けて騒然とし、乗客らは「体が投げ出された」「パニックに陥った」と恐怖の瞬間を語った。

 現場は神奈川新町駅近くの住宅街。先頭車両は右側に傾き、正面の窓ガラスが大破。線路脇の鉄柱が折れ曲がり、積み荷のかんきつ類が散乱した。

 乗客によると、先頭車両には30~40人が乗車。この車両の中央座席に座っていた男性会社員(63)は「すさまじい衝撃で、手すりにつかまったが体を投げ出された」と振り返る。

 直前の20秒間ほど警笛が鳴り続け、先頭にいた乗客が「ぶつかる」と叫んだ直後に衝突。同駅は通過駅だったため、「電車が減速している様子はなかった」という。

 「車内は逃げようとする乗客でパニック状態となり、炎上したトラックからの煙が車内にも入り込んできた。20秒ほどで車両が傾き始め、平衡感覚がなくなり遊園地のアトラクションのようだった」。連結部分がひしゃげてできた隙間から外に逃げ出した。

 別の男性会社員(49)はうたた寝をしていたところ、激しい衝撃で目覚めた。「ガンという音がして、ガラスが割れる音もすごかった。車体が傾き、座っていた乗客は床に倒れ、折り重なった。悲鳴も上がった」。車内アナウンスはなく、乗客は割れた窓などから避難。自身は同駅まで線路を歩き、「何が何だか分からない状態で混乱した」と語った。

 衝突を目撃した介護士の男性(30)によると、トラックは細い路地から右折して踏切に進入。「内輪差で入りきれなかったのか停車してしまい、その後に警報器が鳴り始め、遮断機が下りた」。近くにいた別の男性2人が遮断機を持ち上げるなど救出を試みたが間に合わず、電車がトラックに突っ込んだ。衝突後、2人はトラックの運転手を助けだそうとしたが、煙が上がり避難したという。

 周辺は規制線が張られ、近隣住民らが不安げに見守った。近くの神社の宮司(57)は社殿で作業中、「パン」という乾いた音を聞いた。「人が集まり始めたので外に出ると、煙がすごい勢いで上がり、トラックの下から火が出ていた」。同駅に徒歩で向かうと、道端で横になったり壁にもたれかかったりする4、5人の乗客らしき姿を見たといい、「こんな事故は経験したことがない」と驚いた様子。「ドーン」という音を聞いて現場に駆け付けた女性(78)は「電車が傾いていてわが目を疑った」と話した。

 トラックが通行したとみられる踏切に向かう路地は車の往来が少なく、近くに住むパートの女性(30)は「狭い道で地元住民ぐらいしか通らない」と首をかしげていた。

© 株式会社神奈川新聞社