ベントレー ベンテイガ V8・コンチネンタル GT コンバーチブル 試乗|真夏の夜の夢 2019

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ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブル

ベントレーから心ときめく誘い…これは真夏の夜の夢なのか!?

2019夏。素敵なドライブの機会をいただいた。

「ベントレーの2モデルを往路と復路で乗り継いで、蛍を見にいきませんか?」

なんと心ときめくお誘いだろう。

今年の夏は例年になく激しかったように想う。寒くて寒くてたまらないと思ったら、あとは鍋で煮られているがごとき灼熱で、そしてすぐにいってしまった。そんな夏を惜しむのに、振り返るのはこの上ないクルマとも言える。いや、だいぶカッコつけたてみただけで、ほんとは身に余る光栄です、ハイ。

ここ数年は超ラグジュアリーフルサイズSUV「ベンテイガ」の登場で、その歴史あるブランド名をヤングエグゼクティブ層にまで轟かせたベントレーは、現在全国に7つのディーラーを構えるインポーターだ。うち、神戸/世田谷/横浜という高感度な土地に拡大された3店舗は5年以内のオープンで、2018年は日本国内だけで437台を売り上げている。

…437台?と訝しがることなかれ。最低でも2000万越え〜アラウンド3000万円、むろんベントレーといえばのオーダーメイドシステム“ビスポーク”でさらに天井知らずの販売価格…437台の内訳のゼロはいったいいくつなのよ。

ベントレー ベンテイガ V8
ベントレー ベンテイガ V8

しかも、面白いデータを教えてもらった。実にこの437台のうち、約半分が東京で売れ、さらにその半分が港区で売れているんだという。

『つまり我々はこう考えています。ベントレーをガレージに迎える人は、お金を稼ぐのと同時に使うことにも熱心な人である、と』。

これは試乗前のプレゼンテーションで語られた言葉だが、この分析はグローバルマーケットにも当てはまるのだという。ベントレーは今後さらに顧客層が若年化すると見ていて、さらにオーナーの職業も、前時代の顧客リストに名を連ねていたような昔ながらのいわゆる“資産家層”のみでなく、多様化していくと推測しているのだとか。

現在、ベントレーが抱える顧客の平均年齢は53歳。意外に若い。それに大きく貢献しているのがまさにベンテイガだ。わけてもV8エンジンの追加が引き金になったという。ベンテイガの顧客平均年齢は46歳と、同社他モデルに比べて飛び抜けて若い。ちなみにミュルザンヌは59歳、フライングスパーも59歳、コンチネンタルGTコンバーチブルが50歳だという。

そんな人気の秘密を探るべく、往路にはV8エンジンのベンテイガを、復路にはベンテイガに次いで若い顧客層を持つコンチネンタル GT コンバーチブルを選んだ。

ベントレー ベンテイガ V8

夕闇の中央フリーウェイ…は渋滞だった

まず、残暑の残る東京を、ベンテイガ V8で走り出す。

2018年1月に発表されたV8は、ベンテイガシリーズの中核を担うモデルだ。4.0リッターにデュアルツインスクロールターボチャージャーを備え、最大出力550ps、最大トルク770Nm。このガタイに2480kgというグラマーな体躯をして、0-100km/h加速はなんと4.5秒と圧倒的なスペックを誇る。

先に発売されたW12は、文句なしの陶酔系だ。ハイスピードでコーナーに突っ込んでも恐ろしいくらいに室内はフラットで、しかもしっかりよく曲がる。ついでに一般道では柔らかくフレキシブルなブレーキが、攻めたら攻めたでしっかりガツっと巨体を引き止める。

しかし、V8はその廉価版ではないのだ。きっちりV8ならではの味わいとキャラクターを備え、独立したひとつのモデルとして燦然と輝く個性を放つ。

ベントレー ベンテイガ V8

こんなスペックを心ゆくまで試そうと美しいソリッドな水色のドアを開けて乗り込んだが、ちょうど帰宅渋滞の時間帯に重なり、一般道はおろか中央道もノロノロと進まない。しかし、こんなときだからこそベンテイガの気密性の高い、シックで美麗な内装に癒やされる。

そして、渋滞だからこそヒップポジションの高さからくる視界の良さが渋滞の言いしれぬ疲労の軽減に貢献してくれた。都内ではやや取り回しに苦労するかと思われるようなボディサイズは5150×1995×1755mm(全幅はミラーを除く)。タイヤはママチャリもびっくりの22インチなのだが、いやいやなんのなんの、このヒップポジションのおかげで思った以上に見切りは悪くない。さらにさすがSUV、タイヤも想像以上に切れるから小回りも見た目ほどは悪くないのだ。むろん慣れは必要だし、都内のコインパーキングなどでは場所を選ぶかもしれない。しかし、一旦慣れてしまえばやはり、このサイズはもう元には戻れない魅力があるだろう。

ベントレー ベンテイガ V8

八王子の山道を往くVOYAGER

やっとのことで渋滞を抜けたら、あとは高尾山までガラガラのワインディングロードをひた走る。陽はすでに落ち、複雑に曲がりくねった山道は車幅も狭い。しかし、ここでこそV8らしい個性を遺憾なく発揮し、ハンドリングを楽しませてくれた。

当然だけどあきらかに鼻先が軽く、ひらりひらりとリズミカルに山道を駆け上がっていくのだ。甚大なパワーのおかげで、登坂にも息継ぎの隙間はない。そのシームレスさはビッグエンジンならではの抗いがたい魅力だと思う。

ベントレー ベンテイガ V8
ベントレー ベンテイガ V8

このベンテイガ V8 には48Vの電動式アクティブロールコントロールが採用されている。コーナリング時のロールを瞬時に抑え、タイヤの接地を最大限に確保するというのがその内容だが、このロールのコントロールがあまりにリッチ過ぎないのが存外に楽しかった。外側に振られるような挙動は抑えられているのに、きちんとスポーツフィールは残してあり、ハンドリング自体はSUV、それもかなり大柄な体躯を持つ部類のクルマであることを忘れさせるほどの軽快さだ。かなりクイクイと曲がるのだけど、程よく“しなり”を与えて遊ぶ隙をチラつかせる。ベンテイガの中でもW12ほど魔法の絨毯的(つまり完全なるフラットとでも言おうか)ではなく、まさにまだ若く、自らハンドルを握って郊外に繰り出すドライバーのために味付けをしているような感じだ。

この身のこなしなら察するに、雪道でも頼りがいのあるファンドライブが実現されるかもしれない。

目的地に向かいながら、さらに次のドライブを計画してしまうような、どこか人を前に向かわせる魅力を感じたベンテイガ V8。時代をのしていくパワフルな人々に選ばれる理由が垣間見えた。

高尾いろり炭火焼料理「うかい鳥山」[東京都八王子市]

ナビはどんどん山道を分け入っていくように指示をする。ベンテイガ V8は微塵も怯むことなくずんずんと暗闇を切り拓いていくのだけど、ハンドルを握るドライバー当人がやや不安になる。『もしやタヌキにでも化かされているんじゃないか…だいたい庶民なあたいがこんなクルマに乗せてもらってるだけでもアレなのに』なんて自虐を始めた頃、まるで千と千尋の神隠しみたいな桃源郷が見えてきた。

「うかい鳥山」だ。

初めて知った。こんな素敵ミラクルなお食事処を、八王子が隠し持っていたなんて!

まさにそのとき、滝クリの結婚が発表されたばかり。「進次郎とはこんなところで逢引していたに違いない」「なんとなく談合の匂いがする」なんていう素人丸出しの会話をしながらおそるおそる門戸を叩いて知ったのだが、ここは八王子市民が冠婚葬祭など大事な家族のイベントにも使う、健全な場所でもあるのだという(あたりまえだ)。

広大な敷地に壮麗な日本家屋、庭園。素敵すぎてつい過大に勘ぐってしまってゴメンナサイ。

この敷地内では鑑賞用に蛍の飼育も行っているのだという。儚く揺れる透明な光を想像していたのだが、くっきりハッキリ点灯するその光は、しかしどこか夏のおわりを告げているようでもあり、今思い出してもキュンとする夏の光景となった。

ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブル

やさしさに包まれたなら

そんな切なさ満開の我々の前に、ドドンと鎮座ましますのは復路に選んだコンチネンタル GT コンバーチブルだ。

絶句。絶句なんである。

美しすぎる。

昨年11月末に発表され、日本においても一番新しいベントレーとなるのがコレだ。第3世代に進化し、流麗なスタイリングで登場したエクステリアはもとより、内装には胸が震えた。

ベントレーは先進と伝統を組み合わせるのがとても巧い。オープンルーフのために他人目にも触れることが多いコンバーチブルだから、その作り込みにはさらに精緻を極めている。驚くべき完成度の高さだ。

12.3インチのデジタルインターフェースの採用により、内装にも先進感が与えられたのだが、なんとボタンひとつでくるりと回転し、ウッドパネルでディスプレイを隠す事も出来る。1台に使用される木材は10平方メートル以上なのだとか。希少なウッドも多用し、妥協なき世界観を作り上げている。

レザークラフトもまた、ベントレーらしい“手仕事”の丁寧さが散りばめられたものだ。シートだけでなく、ドアパネルの内側の色のあしらい方などは、モード的ですらある。

ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブル
ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブル

もちろん、ルーフを開けて乗り込んだ。走り出しは山道から。決してフラットと言えない路面で、やはり唸らせられるのは剛性の高さだ。心臓部は6.0リッターW12 TSIエンジン。最大出力635ps、最大トルク900Nm(!)、0-100km/h 加速は3.8秒と、レーシングカーと見まごうほどの数字が並ぶ。しかし、オープンカーなのだ。これほどのエンジンを抱いてなお、屋根を開けて走らせるなんて、どこかになにかしらの振動やガタつきが出てもいっこも不思議じゃない。

しかし、コンチネンタルGTコンバーチブルのエレガントなこと! 0km/hから走り出すときの淑やかな印象は、山道に走り出しても翻らない。

こちらにもベンテイガ V8と同じく、48Vのアンチロールコントロールが採用されている。各アクスルのアンチロールバーにある電子アクチュエーターを制御・調整してハンドリングと乗り心地を向上させる、というもので、コレも山道でのコーナリングに貢献していることに疑いようはない。さらにダンパーを調整する連続可変ダンピングコントロールも効果を現している。しかし、注目したいのはこのシステムがしっかり快適に動作する大元、堅牢なボディなのだ。今回、シャシーも最新式に変更され、20%の軽量化とともに5%の剛性アップも実現している…なんていうのを見なくとも、何回も言うけどオープンカーでこのカッチリさは、本当にマーベラス、としか言いようがない。なんでこんなクルマが作れるのかと英国・クルーに行って、マイスターの肩の一つでも叩きたくなるほどだ。

ベントレー コンチネンタルGTコンバーチブル

高速走行になると、さらにそのかっちりとしつつもしなやかな走りが際立つ。風の巻き込みもほぼ気にならない…のだが、もう巻き込むとか巻き込まないとかどうでも良くなってしまうほどに高揚感のあるハンドリングなのだ。しっとりと路面を捉えつつ、かつ再加速の際にはW12がワイルドに、アメとムチ的な二面性を常に見せ続けてくれることに、完全に魅了された。

ちなみにルーフは50km/h以下であれば19秒でクローズする。

閉めれば完全にクーペと変わらない、気密性の高い室内が現れるのだ。吐息さえ聞こえるほどの。

2台のキャラクターの違うベントレーに感じたのは、飽くなきラグジュアリーへの追求だ。選ばれたものにしか開かれていない扉だとしても、ここに向かって走りたくなるような魅力…いやもう魔力と言ってもいいのかもしれない。セレブを虜にするある一端を垣間見て、人生って果てしないなぁとコンバーチブルから流れる夜景を見つつ、T編集長とともに帰路についた我々であった。顧客平均の53歳までがんばったら、たどり着けるかな?

[筆者:今井 優杏/撮影:小林 岳夫/取材協力:うかい鳥山]