神秘的 能面の魅力知って 南島原の若松さん あすから島原で初の個展

個展を初めて開く若松さんと作品=南島原市西有家町

 趣味で能面を制作する長崎県南島原市西有家町の若松義則さん(80)が7日から、初の個展「能面展in速魚川」を島原市上の町の速魚川ギャラリー(猪原金物店内)で開く。10年前に石工を引退後、面打ちに専念。個展ではこれまでに仕上げた約60種類、約150の能面のうち約30面を披露する。
 若松さんは墓石や仏像を造る石材彫刻店の3代目。幼少期から木材を加工して模型の船を作るなど、石より木の工作が好きだったという。40代のころ、たまたま訪れた能面展を見た際、「神秘的な形できれい」と感銘を受け魅力に取りつかれた。
 「いつか作ってみたい」との思いを胸に秘め続け、71歳で本を頼りに独学で制作を開始。2011年からは文化サークルに月2回通い、熊本の面打ち師、青木定夫氏の指導を受け腕を磨き続けている。
 仕事場だった自宅近くの工房に毎日通い、のみから彫刻刀に道具を持ち替えて能面作りに没頭。古いものでは桃山時代から引き継がれているという面の型を基に、木曽ヒノキを削る。恨みや悲しみ、怒りを表現した「般若」や、若く美しい女性の「小面(こおもて)」など各種の面を一個一個仕上げる。
 「目の描き方一つで表情が、がらっと変わる。シンプルだからこそ、ごまかしがきかず難しい」と手掛けることが多い女性の面の魅力を語る。歴代の名作を手本に、細い筆で髪の毛一本一本を描く一発勝負の最終工程については「まだ経験を積まないといけない。全てやり直しになるため失敗はこたえる」と苦労も語る。
 個展は、手に取って触れられる面のほか、出来上がる過程ごとの作品も展示する。若松さんは「間近で見る機会が少ない能面の魅力を知ってほしい」と話す。10月27日まで。入場無料。問い合わせは速魚川ギャラリー(電0957.62.3117)。

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