夏の甲子園決勝以来約2週間ぶり実戦 7回18K2安打1失点も先制被弾を反省「まだまだです」
■日本 5-1 カナダ(5日・機張)
「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(全試合テレビ朝日系列・BS朝日・AbemaTVで放送)を戦う野球日本代表「侍ジャパン」高校代表は5日、スーパーラウンド初戦でカナダと対戦。今大会初登板初先発の奥川恭伸(星稜)が7回18奪三振、2安打1失点に抑える圧巻の奪三振ショーを披露した。試合も5-1で勝利。完璧な投球だったが、オープニングラウンドで投げられなかったこと、立ち上がりにスライダーが思うように制球できなかったことなど課題を多く口にした。
夏の甲子園決勝以来、約2週間ぶりの投球となった。
「久しぶりだったので疲労は感じました。なんとか、7回まではと思ってたので。しんどかったです。しのげてよかった。ファウルは取れていたので、投げるコースを間違えないように、とにかくストライクを入れないといけない。この景色に慣れていなかったので、ストライクが入るか不安でした」
結果からは想像もできない不安からのスタートだった。心掛けていることはたくさんあった。
「今日はむきになるのではなく、丁寧に投げることを心掛けました。(初回の全球直球勝負は登板の)間隔が空いていたので、どこまでできるかと。(捕手の)山瀬の配球通りに投げました。自分のバロメーター。(4回に打たれた)本塁打は、中途半端に投げてしまった。そういう球をなくしていかないといけない。この先も厳しいので抑えられるようにしたい」
4回2死で10奪三振という快刀乱麻の投球を続けていたが、4番のディオダディに右翼へ先制ソロを運ばれた、高めの直球。失投だった。
「選ぶボールを間違えましたし、何も考えずに投げて、ふとした時に打たれてしまった。(捕手の)山瀬(の中に狙い)はあったかもしれないけど、流れの中で中途半端に行ってしまった。そういう気持ちになったのは、まだまだです。先制されてしまいましたし、気を付けないといけない」
ブルペンでは佐々木もスタンバイ 負担がかかるため、中途半端な形でマウンドを譲るわけにはいかない
先に点をやったことで気持ちのスイッチがさらに入った。ここからまた投球に磨きがかかった。
「もう点を与えたくない、と。気持ちを切らしてはだめなので集中切らさずにやっていきたいと思いました。パワーはすごいなと投げながら感じた。世界大会、簡単ではないなと思いました」
三振を奪っている分、球数は増えた。105球を超えると、中4日空けないと試合には投げられない。決勝戦に進んだ場合、投げることができなくなる。球数を気にしながらのマウンドになった。
「中途半端で(マウンドを)渡したくない。終わらそうと思っていました」
6回2死。最後の打者を迎えた。その時の球数は100球。4球で次の打者を終わらせないといけなかった。途中でリリーフするのは、次の投手に負担をかけてしまう。ブルペンではまだ登板のない佐々木朗希もスタンバイしていた。
「とにかくストライクで勝負していこうと思っていました」
見事、3球三振で締めて、奥川の103球の“旅路”は終わった。自軍はその裏、貴重な3点を加え、試合を決めた。右腕の快投が導いた。
「スライダーが試合が修正できた。最初はコントロールできるようになった。手を緩めてコントロールしているので、しっかり腕を振ってやらないといけない。まだまだやれるかなと思いますし、これから戦いは続くので……。みんなと力を合わせてやっていきたい」
ずっと投げたかった。ようやく、チームに貢献できた喜びを静かに噛みしめたが、すぐに気持ちを切り替えた。
「日の丸の重み感じました。これからもそういう場面感じる。今日は今日で、切り替える。これから相手も強くなる。これで満足したくない。世界一になるためにやることはあると思う」
奥川はまだまだ歩みを止めない。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)