胆振東部地震から1年【下】

被災地・厚真

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馬搬に活路「まちの宝」

間伐作業に精を出す西埜さん

 土砂崩れで多くの死者を出した厚真町では、応急仮設住宅に現在も約370人が暮らしており、退去後の住居が決まらない被災者も多い。自らも仮設住宅で生活を送りながら林業に活路を見いだす男性が、厚真のために日々奔走している。

●自宅は半壊

 林業の馬搬で生計を立てる西埜将世さん(38)=同町宇隆地区=は「まだ馬搬の可能性を探っている段階」と話す。

 人が伐採した樹木を馬が運ぶ馬搬。一本ずつ森にとって必要な木か判断して間伐する。道内では数人程度いるだけで後継者不足が深刻だが、重機と異なりタイヤ痕が残らず排ガスを出さない。改めて注目を集める伐採方法だ。

 東北の大学で林業を学んだ後、渡欧した西埜さんはイギリスやスウェーデンで林業の選択肢として確立され、生活に根付く馬搬の魅力に取りつかれた。「伐採後も景観は保たれる。馬搬は人に感動を与える」と熱く語る。

 地震では馬や厩舎(きゅうしゃ)に影響がなかったが、自宅は半壊した。自身も仮設住宅に暮らしており、今年末に期限を迎えるが、退去後の住居は決まっていない。「馬搬で伐採した木材をマイホームの建設に使いたいね」と笑顔を見せた。

●未来を託す

 8月下旬、牛志別神社=同町豊川地区。これまでは周辺の2自治会(約70戸)が参道を整備してきたが、高齢化による人手不足などが原因で行き届かない部分が増え、参道脇の約30本のトドマツの腐食も深刻だった。この現場の業務量は少ないため、馬を休ませてトラクターと人力だけで15本を間伐した。

 総代の田中俊幸さん(71)は「手際の良さに感動した。この地域はお年寄りが増えて草木の手入れが追いつかない。(西埜さんは)まだ若いし厚真の宝」と同町の未来を託している。

 山林の整備だけでなく、新たに馬耕にも取り組み始めた。岩見沢市内のワイナリーでワイン用ブドウ畑の整備に愛馬を活用した。土への負荷が少なく、欧州では馬耕を採用するワイン農家も多い。「馬と触れ合ってもらうだけでもいい。これからも馬といろいろなことにチャレンジしたい」と力強く語った。
(鈴木直人)

(おわり)
(2019年9月6日掲載)