水産県の強み

 おでんやかまぼこなど魚肉練り製品の原料である、すり身の輸入価格が高騰していると、しばらく前の本紙にあった。主力のスケトウダラのすり身が2年前に比べ約3割値上がりしているという▲練り製品の世界最大の消費国とされる日本だが、すり身の多くは輸入に頼っているのが実情だ。大手水産加工メーカーは値上げや新商品の絞り込みを余儀なくされている▲欧米や中国で健康志向の高まりなどから、魚の消費が増えたことが背景にあるらしい。魚介類の消費が減り、肉食が増えている日本とは正反対の傾向にある▲輸入原料の高騰に長崎も無関係とはいかないが、そこは水産県の強みを生かして乗り越えたい。長崎市には長崎蒲鉾(かまぼこ)水産加工業協同組合のすり身専門の工場があり、長崎魚市場などで水揚げされた新鮮な魚を加工して提供している▲長崎市は都道府県庁所在地で1、2位を争う練り製品の消費地でもある。近年は官民プロジェクト「長崎かんぼこ王国」が始動し、「長崎おでん」「ちゃポリタン」といった商品の共同開発やPR活動に取り組んできた▲おいしい練り製品を手ごろな価格で食べられるのは長崎ならではの幸せだ。全国では栄養豊富で手軽に利用できると「サバ缶」ブームが続いているが、ぜひとも地場産加工品の魅力にも注目したい。(久)

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