「誰にも媚びない」総合格闘家 朝倉未来選手(YouTuber) 格闘技界は朝倉未来・海兄弟を中心に回り始めた|聞き手・久田将義

朝倉未来選手(撮影=インベカヲリ)

久々にヒリヒリする感じを受ける格闘家に出会いました。無愛想や無口というのではなく、昔の侍のように、「いつでも真剣を抜く」という覚悟があるように思えました。

総合格闘家、朝倉未来選手。

考えてみればまだ27歳。僕は百人以上のアウトローに取材や非取材で会ってきましたが、こういった得も言われぬ雰囲気をまとった人物は余りないです。対峙していて数年ぶりにこちらにもピリピリ感が伝わってきました。

YouTubeが人気なのもうなずけます。YouTubeのヒットには企画力が必須ですが、もう一つ「演者の個性」があります。格闘技系のYouTubeが増えていて、ファンにとっては嬉しい限りですが、大体が数万単位の登録者数。それと比較して朝倉未来選手のYouTubeは約3か月で19万人。日本の格闘家のYouTubeとしては出色と言ってよいでしょう。

その要因は前記の「個性」すなわち朝倉未来選手の元不良少年としての存在感と「企画力」の二つがきちんと確立されているからだと思います。格闘家のYouTubeの範疇を越えています。余りにも面白いので僕も感想記事を書きましたが、実際にどういう人か会ってみなければ伝わらないと思い、朝倉未来選手に会うべく、インストラクターを務めている総合格闘技ジム「トライフォース赤坂」を訪ねてみました。

朝倉未来選手YouTube最新動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=vAYf4PmuSn4

「YouTuberが実は格闘家だったというコンセプトの方が伸びるかな、と」

――YouTubeの登録者がいま20万人(8月末現在)超えました。始めたきっかけは何だったのですか?

朝倉未来選手(以下・朝倉選手) 自分で始めました。ずっとやりたいなとは思ってたんですけど。

――僕は1回目から拝見してました。「皆さまごきげんよう」(と朝倉選手が番組の最初に挨拶する)がキャッチーだなと思ったんですけど、あれはどなたが考えたんですか?

朝倉選手 俺が考えました。

――あのつかみはバッチリですよね。最初に手応えを感じた企画っていうのは「ケンカ自慢」(地元の豊橋で道端にたむろしている不良少年に「君たち喧嘩強い?」と朝倉選手が訪ねて道場で片っ端からスパーリングする企画)からという感じですか?

朝倉選手 ええ。最初から手応えは感じてましたね。

――1回目から登録者数もすごいし。

朝倉選手 そうですね。すごいスピードで伸びていったし、動画を作り始めたときに自分は才能あるなと思いましたね。

――なるほど。企画がとにかく面白いのですが、あれは運営スタッフさんとで考えられてるんですか?

朝倉選手 9割は僕が考えてます。

――え!? じゃあ「ケンカ自慢」企画とかも?

朝倉選手 僕が考えました。

――それは凄い企画力です。ところで最近、格闘YouTuberが増えてると思うんですけど、他の格闘YouTubeの方と違ったように見せるための工夫もされてるんですか?

朝倉選手 もちろんそうです。

――どんな点を違うように、と思いました?

朝倉選手 「YouTuberが格闘家だった」というコンセプトにしようと思いました。格闘家がYouTubeをやっている感じだと伸びないと思ったんですよね。普段のトレーニングとか食事とかっていうのは格闘家そのものを映してるというか。それだと再生回数が伸びないなと思って。いわゆる「普通のYouTuber」になってみて、そして「YouTuberが実は格闘家だった」というコンセプトの方が伸びるかな、と。

――なるほど。YouTubeを観て朝倉さんのファンになった方っていうのも少なからずいるわけですよね。

朝倉選手 たくさんいますよ。

――男性のほうが比率が高いですか?

朝倉選手 圧倒的に。

――これからは、女性の登録者数を増やしていこうという意識はありますか?

朝倉選手 いや。別に女性人気を獲得しようとも思ってないんです。そもそも格闘技って女の子の登録者は伸びないと思ってますし、同性から好かれるほうがいいかなと思ってます。

――コメント欄を見ても男性ファンが兄貴分的な感じで朝倉さんを見られてますよね。コメントはご覧になってますか?

朝倉選手 全部は見てないですけど、参考にしてますね。

――朝倉さんにやっていただきたい企画を考えてきたんですけど、僕は未解決事件取材も多いんですね。朝倉さんは観察力と分析力と洞察力が優れているので、未解決事件の現場に行って、犯人をプロファイリングするっていうのはどうかなと思いました。

朝倉選手 いいですねえ!

――もし機会があれば是非是非。ドッキリも最近定番になってきてると思うんですけど、これはイケたなっていう企画はありました?

朝倉選手 居酒屋で白川”dark”陸斗選手(総合格闘家。THE OUTSIDERで対戦。現在DEEPで活躍中)とスタッフのタクマを騙したときですかね。僕が企画を考えて配信した方が面白いんですよ。僕にかけるドッキリは、中途半端なんであんまり面白くないんですけど(苦笑)。

――そのあたりですが、直に数字が出るから面白いっておっしゃってましたけど、そのへんがYouTubeの醍醐味ですか?

朝倉選手 そうです。視聴回数とか考えますね。

――いろんな有名な格闘家がやってらっしゃいますけど、群を抜いてます。

朝倉選手 格闘家のなかではそうですかね。僕はまだ3ヶ月しかやってないので。

――アップの回数が多いので、僕らとしては嬉しいですね。

朝倉選手 ありがとうございます(笑)。

――朝倉さんのチャンネルは「中毒性」があるんですけど、ご自分の動画を分析されたりしてます?

朝倉選手 僕自体に中毒性があるとはよく言われますね。独特な雰囲気というか、不思議な方ですねとかよく言われるんで。

――そうですね、朝倉さんの個性をスタッフの方がうまく活かしてるような気がしますね。スタッフのタクマさんいい味出してますね。お友達なんですよね。

朝倉選手 そうです。

――もともとはあの人もケンカしてたんですか?

朝倉選手 そうです、ケンカで出会いました。

――いまは戦友というか。

朝倉選手 戦友ってほどでもないですけど(あっさり)。

――YouTubeの制作にはどれくらい時間を割いてますか?

朝倉選手 インストラクターの仕事も正社員でやっていて、格闘家としてもプロ練を毎日2時間ほど別のところでやっていて。撮影はいまのところオフの日に2~3本撮って、平日の空いてる時間で編集をしていますね。

――え? 編集もやられるんですか!?

朝倉選手 覚えてきたんで。編集者がいてやってもらってるんですけど、構成は僕が考えてますね。

――……大変ですね。

朝倉選手 いや。撮影の時点でもう頭に入ってるんで、パパッと1時間くらいで構成は終わっちゃいますね。

――(驚きながら)ほとんど、朝倉さん主導で制作しているんですね。

朝倉選手 そうですそうです。

――と、するとYouTubeを始める前から、ある程度研究していたということですか?

朝倉選手 ホントに一気にやるって決めて、機材とかも最初に一気に100万ぐらいかけて買って。イケるなと思ったんでそんな感じでやっちゃいました。

――イケるというのは、何かしらの根拠があったという事ですか?

朝倉選手 構成というか、面白い動画を作る自信はありましたね。本とか映画とかドラマもすごい観るんですけど、そういうのをずっと観続けてるんで、自分でYouTuberを観たときに俺のほうが面白い動画作れるなっていうのは思っていて。

――ゲストを出そうかなっていうことは考えたりしてます?

朝倉選手 ストックの動画は全部ゲストが出てますね。次の動画もそうだし、その次もゲストは出ますね。

――めちゃめちゃ広告入っていました。そのせいで経費も使えるのはけっこう大きいですよね。ゲストが入るのと入らないのではやっぱり違います?

朝倉選手 そうですね、新しい層のファンが獲得できるっていうのはあると思いますね。

――前にインタビューで「お金をまず儲けたい」とをおっしゃってましたけど、これもその一環なわけですね。

朝倉選手 そうですね。でもYouTube自体はやりたいことだったんで。僕は小さいときから人に命令されるのが好きじゃなかったので、自分の考えでやってそれに対する結果がついてくるっていうのは自分の責任だと思うんですけど、そういう実力の世界で生きていたいっていうのは格闘技でもそうですし。試合が決まって試合までの過ごし方は自分で決められるんですけど、試合で結果が出たらそれも自分の責任じゃないですか。YouTubeも格闘技もそうなんで、自分の好きなことをやりたいっていうことです。

――ドッキリは少し多すぎるような気がしないでもないんで、そのへんも考えてるんですか?

朝倉選手 ちょっと多すぎるからやめろよとは言ってるんですけど。1回仕返ししてやろうかなって思ってます。体で教えてやろうかなって思って、もう頭のなかで企画は決まってるんです。

※そのどっきりはこちら デスソースどっきりです
https://www.youtube.com/watch?v=vAYf4PmuSn4

「堀口・朝倉海戦は勝てると思っていたので緊張はしませんでした」

――ところで現在の1日の時間の過ごし方っていうのはインストラクターもやりながら自分の練習もやりながらだと思うんですけど、朝から夜までのスケジュールを教えてください。

朝倉選手 平日は毎日朝5時に起きて朝食やら歯磨きやらやって、この下で7時から9時までキックボクシングを教えて、そのあとは上のジムのインストラクターをやって、それが昼に終わったらそこからプロ練に2時間、出稽古先に行って。そこからはフリーというか何もないんで、本を読んだり、早いときは撮影したり。で、9時とか10時に寝て。

――僕は『実話ナックルズ』編集長時代に、THE OUTSIDERの第1回から試合の模様を掲載してきました。そして、この2年ぐらいで朝倉さんの環境が劇的に変わったと思うんですけど、そのへんはどう感じてますか?

朝倉選手 早いペースでいろいろ変わったなとは思います。

――それは、計算通りというか予定通りというか。

朝倉選手 計算通りの部分もあるし、計算より早く進んだ部分もあるし、予測してなかったこともいろいろ起きてきますよね。それ自体も乗り越えてこられたかなと思いますけど。

――ターニングポイントとなるような試合っていうと誰との対戦になりますか?

朝倉選手 やっぱりRIZINの初戦でしょうね、名古屋で日沖発選手とやった、それがRIZINデビューで、それから1年で5試合やって全勝してっていう。

――1年で5試合ってハイペースですよね。

朝倉選手 そうですね、2~3ヶ月に1回だったんで。

――その場合の体調の調整は大丈夫だったんですか?

朝倉選手 なかには悪いときもありましたし。万全だったのは1試合ぐらいだったかな。

――矢地祐介選手との試合はスカパーで観てたんですけど、解説の中井祐樹さんは「全局面で朝倉選手が支配していた」という事を言っていました。勝因は矢地選手とのメンタルとの差もありましたか?

朝倉選手 メンタルか……。俺はあんまり感じなかったですね。僕が相手の苦手なところを突いていったっていうだけだと思います。

――最後の左ストレートで倒れて、あと10秒あればたぶんパウンドでKOかTKOっていう感じだったと思いましたが、それはご自分でもそう思います?

朝倉選手 ええ。

――いろいろ背負って久しぶりにヒリヒリした試合でしたね。おめでとうございます。

朝倉選手 ありがとうございます。

――いつも、試合はそんなには緊張されないとおっしゃってましたけど、弟さん(総合格闘家・朝倉海選手)と堀口恭司選手(日本トップと言われている総合格闘家)の試合はセコンドに着いて、緊張してるというか燃えているような感じの表情が見えたんですが(試合結果は新星・朝倉海選手のKO勝ち。ジャイアントキリングと呼ばれた)。

朝倉選手 いつもは緊張しますけど、今回はあんまり緊張しなかったです。勝てるだろうなと思ってたんで。

――あの試合で総合格闘技の地図が一気に変わった、と思いました。

朝倉選手 そうですね、歴史的一戦だったんじゃないですか? この先50年経っても語り継がれるような。

――語り継がれる格闘技の試合がありますが、歴史的試合だったと思いますね。海選手は大晦日にまた堀口選手とやりたいとおっしゃってますけど、朝倉未来選手は大晦日に戦いたい相手はいますか?

朝倉選手 今のとこやりたい相手はあんまりいなくて、面白い相手だったら誰でもいいかなと思ってるんで、相手次第では出ようかなと思ってますけど、出なくてもいいかなとも思ってます。

――海選手は堀口選手に2回勝ったら凄い事になります。その点、セコンドに着きたいみたいなところもあるんですか?

朝倉選手 (海選手は)セコンドに着いてほしいとは思ってるでしょうね。

――次の堀口選手の動きも解析されるんですか?

朝倉選手 もともと判定で勝つ予定だったんで、右のクロスカウンターに関しては当たったら効くだろうとは思ってたんですけど。でも他にもまだ言ってないことがたくさんあるんですよ。もっといろんな技を用意していて。分析もこれ以上できないぐらいしたんで、あえてやることはないかなって感じですね。

――「柔らかく柔らかくして。相手はガチガチってパターンで負けてる」っておっしゃってたと思うんですけど、海選手はホントに柔らかく柔らかくっていう感じで、あれも指示どおりだったんですか?

朝倉選手 そうです。

――堀口選手はやりにくかったでしょうね。

朝倉選手 だと思います。

――海選手すごいスピードでしたよね。スピード強化のために何かやられたことはあるんですか?

朝倉選手 僕が堀口選手のモノマネをしてスパーリングしたりとか。

――ストレートに合わせて右ストレートを出すとか。

朝倉選手 あれは何回もやりましたね。

――それがピタッとハマるのが恐ろしいですね。

朝倉選手 堀口選手の攻撃って意外と単調で、あれが通用してるから全部決まってますけど、あれが通用しないとまた手がだいぶ減るんじゃないかなと思いますね。

――堀口選手の独特なチェンジオブペースですね。柔らかい動きからバーッと行くような感じが特徴的です。

朝倉選手 あれを封じちゃえば攻略できると思ってました。

「もちろん武尊選手と天心選手戦は観たいですよね」

――朝倉兄弟の人気は総合格闘技ファンの間では既にトップレベルだと思うんですけど、ここ1~2年で新しく出てきたスターな感じがするんですね。RIZINや総合格闘技を背負ってる自覚はあったりするんですか?

朝倉選手 いやそんな気持ちは全然ないです。……というよりRIZINを背負いたいっていうよりはRIZINと一緒に金を稼ぎたいって感じですね。

――なるほど。

朝倉選手 僕はRIZINは会社だと思ってて僕はその社員だと思うから、会社自体をデカくしていきたいなとは思ってるけど、背負ってるっていうとまた違うかなと思います。

――例えばUFCとか海外を視野にっていうのはあまり考えてないですか?

朝倉選手 意味があればやってもいいですけど、いまはRIZINというビジネスパートナーと一緒に金を稼げればっていう考えですね。

――現在の日本の総合格闘技はRIZINで動いていて、いろんな選手がRIZINに出てくるっていうところでデカくなっていきそうな感じがします。昔のPRIDEとK-1みたいな感じになりそうな気もしますね。PRIDEとかK-1はご覧になってました?

朝倉選手 ちょこちょこは観てたと思いますけど、そこまで覚えてないですね。

――あの頃は大晦日に生中継やったりしてましたからね。

朝倉選手 盛り上がってましたね。

――そういう時代にまた持って行きたいっていう目標みたいなものはありますか?

朝倉選手 盛り上げたいとは思いますけど、あの頃は今のようにネットが普及してないので、PRIDEの舞台が世界で一番強いっていう幻想をみんなが抱いてたからホントに心から熱狂してたと思うんですけど、いまUFCがあったり、RIZINで勝っても結局世界で一番強いわけじゃないだろうみたいなこともあって。

本気であのときの格闘技と勝負できるとは思ってないですね。だから新しいことを考えたほうがいいと思うんですけど。堀口選手がUFCでも通用する、もしかしたらチャンピオンになれるんじゃないか、世界で一番か二番に強いって言われてたなかで、その堀口選手に弟が勝ったり、RIZIN自体のレベルも上がってきたし、UFCっていうのもそんなに遠い存在でもないのかなって思ってきてるんで、RIZINの選手がUFCのトップファイターたちに引けを取らないぐらい強くなればまた熱狂する時代が作れるかもしれないですね。

――RIZINはRIZINで独自の盛り上げ路線を目指すって感じですかね。

朝倉選手 はい。

――将来的にはマッチメイカー的なこともやりたいなとか漠然と考えたりされますか?

朝倉選手 ああ。興行打ちたいってことですか? やってみたいですね。団体によってはできないのに観たい試合とかあると思うんで、そういうのができるような団体を作りたいなとは思いますけど。RIZINもたぶん僕と同じような考えで、どこの選手だろうがやりたいならやれって感じなんですけど、鎖国的な団体もあってなかなかうまくいってないですけど。もし興行やるなら面白いカードが組めるといいんですけど。いまのところ大会を主催したいとかは考えてないですね。

――僕が観ていた格闘技だと例えば、K-1って正道会館石井館長の時代で、誰が強いのかハッキリしていて社会現象にまでなりました。今、立ち技だと武尊選手(K-1スーパーフェザー級王者)対那須川天心選手(RISE世界フェザー級王者)って、ファンの間では絶対出てくると思うんですけど、そういうことって考えたことありますか?

朝倉選手 もちろん武尊選手と天心選手は観たいですよね。二人ともやりたいと思ってるはずなんですよ。絶対にどっちかが逃げてるわけではないだろうし。あとは大人の事情というか、誰かがやらせたくないっていうのがあるのかよくわからないですけど。トップにいる選手は相手が強いからやりたくないってないんですよ。

――強いヤツとやりたいと。

朝倉選手 ええ。強いヤツとやりたいヤツがトップにいるんで。武尊選手も絶対に強いヤツとやりたいと思ってるはずです。

――石井館長も「いまやれよ」ってツイートしてましたね。では他団体も見ながら格闘技全体が盛り上がればいいなっていうグローバルな感じの見方もされてるんですね。

朝倉選手 ただ、僕はやらないからこそ盛り上がってるっていうのもあると思うんですよ。永久に幻想が持てるというか。終わったら終わったで、すべて終わっちゃうんですよ。

「目をつぶるほうが怖い。逆になんで目つぶるんですか?」

――なるほど。ちょっとズレますけど、『週刊プロレス』の元編集長のターザン山本さんが朝倉兄弟人気がファンクス兄弟っていうプロレスラーの人気に似てるって言ってたんですね。彼らはアイドル的な感じだったんですけど。僕はちょっと違ってて、朝倉兄弟の人気ってアメリカで言う「ピープルズ・チャンピオン」っていうのに似ていると思いました。格闘技はパンクラスとか修斗とかずっとやってきてて、朝倉兄弟はそうじゃないところから出てきたという人気だと思うんですよ。異端児、アウトローというか。朝倉さんが「朝倉兄弟」を分析するとどういう見方をされてますか?

朝倉選手 弟はTHE OUTSIDER出身ですけどヤンキーでもなんでもなくて、性格も僕と真逆なんですよね。ただ対照的な二人で、なおかつ兄弟揃って実績を一応残してるっていうことが人気のひとつなのかなと思いますね。

――バックボーンとかも関係あるとは思います?

朝倉選手 どうなんですかね。たとえば僕らがパンクラス出身だろうがファイトスタイル的に人気が出てると思うので、べつにTHE OUTSIDER出身だから人気が出てるってことではないと思います。

――なるほど、ファイトスタイル的にってことですね。ファイトスタイルで言うと、朝倉海選手がご自身のYouTube(https://www.youtube.com/watch?v=7nYylyRCsQs)で上げていた地元豊橋で過去に撮影した映像がありました(デビュー前の朝倉未来選手が朝倉海選手に路上でガチでファイト)。あれはホントにノックアウトする感じで振り回してたんですかね。

朝倉選手 まあそうですね。同じ血なので、俺がDNAを信じてて。そこで当たって倒れるなら格闘技の道もないだろうし、そういうひとつの試練じゃないけど、そこを乗り越えてセンスあるなってことになったんですけど。

――朝倉海選手は「あの時初めてグローブ握った」って言ってましたけど、パンチ、キックを避けてました。「この人天才かな」と思いました。弟さんの才能はどう見られてますか?

朝倉選手 やっぱり天才だなとは思いますけど、僕もあのなかで一発目はすごい大振りしてるんですよ。

――ああ、わざと。

朝倉選手 最初はね。でもそれで避けてるんで、だんだん変えていってはいるんですけど。当たったら当たったで失神したら面白いので。

――な、なるほど。これはちょっとスパーリングじゃないなと思いながら観てました。海選手はパンチ怖がってないですね、それがすごいなと思いました。朝倉さんも怖がってないじゃないですか。あれは天性ですか? 訓練?

朝倉選手 皆さんにそう言われるんですけど、目つぶるほうが怖いんですけど、逆になんで目つぶるんですか? みたいな。見てないと怖いんで。

――朝倉選手はストライカーですが引き出しが多いと思います。立ち技と寝技でと現在は練習はどっちに比重があるんですか?

朝倉選手 レスリングが一番多いですね。柔術は週に1回はやって、グラップリングも週に2回ぐらいやってます。打撃が一番少ないですね。

「全ては自由のためにやっている」

――煽り映像で使われてる(朝倉選手のデビュー前の喧嘩動画)ものは下がコンクリートだったんで、やられちゃった人は危ないと思いましたね。

朝倉選手 ああ、ケンカの。そうですね、7分ぐらい失神してましたからね。

――15年ぐらい前に豊橋でレディースの取材をしたんですけど、港町じゃないですか、気が荒い人がけっこう多いのかなと思ったんですけど。

朝倉選手 ああ、多いです。今は自然が多くていいところだなって感じますけど。

――少年時代は?

朝倉選手 治安が悪かったですね。ホントに気が荒い人が多くて。

――そこから格闘技に行って、よかった訳ですね?

朝倉選手 格闘技に行ってよかったのかどうなのか……。格闘技やってなくても何かで成功してる自信はあるので、格闘技だったからよかったのかどうかはわからないですね。

――なるほど。ビジネスでも才覚を現して何かしらの成功をしていたと。

朝倉選手 何かで成功してると思いますね、そういう自信はあります。

――あの、どうしても実体験したかったので、右に右を合わせるっていうのはどういう感じなのか、ちょっとやっていただいてよろしいですか?

朝倉選手 え? やっていただく?(笑)

――はい、僕が堀口選手だとするとどんな感じになるんですかね。

朝倉選手 ああ、僕が海役で? はい。

(ゆっくりと右ストレートに右ストレートを併せてもらいました。見えない角度でした)

――有難うございます。その後の膝蹴りは流れですか。

朝倉選手 膝は始めから全部作戦通りで、効いたら膝を出すという。

――では最後に、今後の「人間朝倉未来」の目標はありますか?

朝倉選手 人生の中ですか。うーん。30歳までに億を稼ぎたいというのは20歳の頃からずっとありましたね。

――それはもう夢ではないですよね。あ、夢って言ってはいけなかったでしたっけ。目標でした。

朝倉 いいですよ(笑)。本当にずっと変わらないのは自由に生きたいというのがあって、自由を求める為に。すべては自由の為にやっているんで。おじいさんになっても。生きているかどうか分からないけど。(聞き手◎久田将義 写真◎インベカヲリ)

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