トランプ氏が使ったハリケーン進路図、誰かが予報円をサインペンで追記 

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ドナルド・トランプ米大統領がハリケーン「ドリアン」の最新状況を説明した際に使った進路予想図に、誰かがサインペンで予報円を書き足していたため、物議を醸している。

カリブ海の島バハマで少なくとも20人の死者を出し、現在は米本土の東海岸沿いを北上中のハリケーン「ドリアン」について、トランプ大統領は4日、ホワイトハウスで最新状況を記者団に説明した。

このときトランプ氏が手にしていた「ドリアン」の進路予想図は、約1週間前の先月29日時点のものと酷似していた。しかし、よく見ると、アラバマ州の一部を通過する危険があるかのように、予報円が黒く書き足されていることが分かる。

トランプ氏はそれ以降、アラバマ州が「ドリアン」の影響を受ける恐れがあると主張を続けているが、気象予報士は、これは不正確な情報だと指摘した。

トランプ大統領の主張

トランプ大統領は4日、ホワイトハウスの大統領執務室で報道陣を前に、米海洋大気局(NOAA)が8月29日に発表した「ドリアン」の進路予想図を見せながら、最新状況について説明した。

https://twitter.com/WhiteHouse/status/1169300628000124929

この進路予想図には、アラバマの一部地域にまたがるかたちで、黒線の予報円が書き足されていた。

トランプ大統領は記者団に対し、「ドリアン」は「多くのほかの州に影響を及ぼしたはずだ」と述べた。

同日午後、元の進路予想図との食い違いについて尋ねられると、大統領は「分からない」と述べるにとどまった。

「元々の予報にアラバマが入っていたのは知っている。(アラバマがハリケーンの影響を)少し受けると思われていたんだ」と、トランプ氏は答えた。

NOAAに問い合わせると、ホワイトハウス報道官室に質問してほしいと言われたものの、ホワイトハウスからはすぐに回答はなかった。

米国立ハリケーンセンター(NHC)は4日の時点で、ジョージア州、サウスカロライナ州、ノースカロライナ州沿岸に、高潮警報を発令した。

「ドリアン」は1日、5段階で最も強い「カテゴリー5」の勢力でバハマに上陸。少なくとも20人が死亡した。

アラバマ州をめぐるトランプ氏の発言

トランプ大統領が最初にアラバマ州への影響について触れたのは、1日朝。「フロリダ州に加えて、サウスカロライナ州、ノースカロライナ州、ジョージア州、そしてアラバマ州は、予想以上の影響を受ける可能性が高いだろう」とツイートした。

その数分後にはアラバマ州バーミンガムの米国立気象局(NWS)が、トランプ氏のツイートを否定するかのような内容をツイートした。

「アラバマ州は、『ドリアン』の影響を一切受けません。繰り返し伝えます、アラバマ州全域で、ハリケーン『ドリアン』の影響を受ける可能性はありません。ドリアンはアラバマのはるか東にとどまる予報」

https://twitter.com/NWSBirmingham/status/1168179647667814400


ところがトランプ氏はこれから間もなく、ホワイトハウスで記者団に「どうやらアラバマが少し影響を受けそうだ」と発言。さらに約1時間後には、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)での記者会見で、ハリケーンが「すばらしい州の一部地域を通過するかもしれない。それはアラバマ州だ」と述べた。

NOAAのクリストファー・ヴァッカロ報道官は同日、報道陣宛のメールで、「現時点で『ドリアン』の進路予想には、アラバマ州は含まれていない」と強調した。

「不正確な発言」、「いんちき報道」

2日になると複数の報道機関が、トランプ大統領の発言は不正確なものだったと報じた。

ABCニュースのホワイトハウス担当記者、ジョン・カール氏は、大統領は「ハリケーンの進路予想について誤った発言をした」と伝えた。

これに対し、大統領は同日、「ABCワールドニュースの軽量級な記者、ジョン・カールのハリケーン報道は、なんていんちきなんだ。僕が昨日、FEMAで、フロリダ州に加えてジョージア州、サウスカロライナ州、ノースカロライナ州そしてアラバマ州までもが、影響を受ける可能性があると示唆したのに。そして、それは本当のことだったのに」と反論した。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1168664114677407745


数日間で進路予想が変化

AP通信によると、8月30日の予報では、アラバマ州のごく一部を「ドリアン」が通過する可能性が示されていたという。

しかし31日朝までに、同州がハリケーンの進路に入るかもしれないという予報はなくなった。この24時間後に、トランプ大統領は、アラバマ州が被害を受けると主張し始めた。

「謝罪を待っている」

トランプ氏は4日夜、元々の予報を引用し、自分は終始正しかったと主張した。

「これが初期段階の、元々のハリケーンの進路予想図だ。見ての通り、ほぼすべての予想で、フロリダ州やジョージア州、アラバマ州を通過するとなっていた。フェイクニュースからの謝罪を受け入れる!」

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1169375550806351872


トランプ大統領は5日にも、ツイッターで再び反論した。

「ハリケーン『ドリアン』は、アラバマ州を直撃あるいはかすめて通る予想だったが、違う進路をたどった(東海岸沿いを北上)。フェイクニュースは、このことをよく分かっている。だから、やつらはフェイクニュースなんだ!」

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1169606058148605953


また同日夜にも、「僕が言ったとおり、アラバマはそもそも直撃される予想だった。フェイクスニュースは否定している!」と、8月末の予想図をツイートした。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1169705282123046913?s=20


ただしこのツイートには、「アラバマが95%の確率で直撃されると言っていたのに、この予想図は8月末のもので、熱帯性の強風に直撃される可能性が5-10%あると図示しているに過ぎない」、「1日の予報円にはアラバマは含まれていない」などの反論コメントが、多く寄せられている。

「シャーピー」書き加え

ホワイトハウスのホーガン・ギドリー副報道官は、記者会見で使用した進路予想図に、黒の油性ペン「シャーピー」で予報円のような円が描き加えられていたことを認めた。しかし、誰が描いたのかは明かさなかった。シャーピー(Sharpie)はアメリカの定番筆記具ブランド。

5日朝までに、ウォーターゲート事件になぞらえた「#sharpiegate(シャーピー・ゲート)」が、米国のツイッターのトレンドになった。

ユーザーの1人は、大統領の「謝罪を受け入れるぞ」ツイートに対し、「誰も謝ってない! あなたはシャーピーで予報円を書き加えたんだ! 連邦法違反だ!」と書き込んだ。

https://twitter.com/JaninePorter1/status/1169693880066797568


別の人は、「哀れな小さな『男』だな。大人になれ!」と書き込んだ。

中には、「ThanksSharpie(ありがとうシャーピー)」というハッシュタグ付きで、予報円に似せた黒線でグリーンランドを囲った世界地図と共に、「ドナルド・トランプが発表した、新しいアメリカ合衆国の地図」だと投稿する人もいた。

https://twitter.com/jpuopolo/status/1169437274116935685


トランプ氏は先月、デンマーク王国の一部のグリーンランド買収に関心があると述べ、デンマークのメテ・フレデリクセン首相から「馬鹿げている」と一蹴されていた。

気象予報図の改ざんは違法

一部のアナリストは、公式の気象予報図の改ざんは違法だと指摘している。

ニューヨーク州のコーネル・ロー・スクールによると、アメリカの法律では、虚偽の気象予報を意図的に発表した場合、最長90日の禁固刑が言い渡される可能性がある。

(英語記事 Trump hurricane map mysteriously loops in Alabama/Hurricane Dorian lashes US as Bahamas counts cost