前代未聞、メニューのないレストラン=素材にこだわる「村上」開店=1日24人限定、一食300レアル

「無」と書かれた入り口

 「心を無にして素材の声を聞きたい」――5日に公式開店した「レストラン村上」(Alameda Lorena, 1186 São Paulo)の村上強史オーナーシェフ(51、北海道)は、入り口に書かれた「無」の意味をそう説明した。内装も設備も必要最低限に押さえ、シンプルさが目立つ。
 「その日に入荷した一番良い素材を見てからメニューを決める」という伯国では前代未聞のスタイルの日本食レストランだ。1人前300レアル。カウンター席のみ。午後6時から12人分、午後9時から12人分の予約をオンライン(http://www.murakami.net.br/)で受け付ける。日曜のみ休業。

シェフの一人舞台“村上劇場”で語りを味わう

 全てカウンター席で、客の目の前には調理台がある。シェフの包丁使いなどの一挙手一投足、素材の解説などの喋りも味わいながら食べることができる。いわば「村上劇場」だ。
 鮮魚はその日最高のものを毎日仕入れ、野菜もフランス人が2010年に創業した有機栽培で有名なアデライジ・オルガニコ農場から取り寄せる。素材へのこだわりが同店のポリシーだ。
 2017年8月に共同経営だった高級日本食レストラン「木下」から離れ、それから出張調理サービスを専門にやりながら新しい顧客層を開発し、満を持して自分だけの店を開いた。本人と18歳の息子潤さんが調理を担当し、妻スザナ・江梨子さんがデザートや経理を担い、専属のソムリエを雇って少数精鋭で再出発した。
 4日にメディア関係者を招待して試食会が行われた。2時間かがりで6品に加えてデザートが出された。最初の品は「塩、レモン、シソをかけた生のウニ、イクラ、タイの白子」に幻のブラジル産白ワイン「Cave Ceise」2002年。800本限定生産で、一般には販売されていない代物だそう。

山岸農場の有精卵の卵黄と納豆をまぶしたマグロ

 2品目は、山岸農場で作っている有精卵の茹でた卵黄と納豆をまぶしたマグロで、まったりした味に、キリッと辛口のスペイン産白ワインを合わせた。3品目は「鯛の昆布じめを赤大根でくるみ、梅などを和えたもの」、4品目は「ホッキ貝とホタテの味噌和え」、5品目は「黒豚のカツ」、6品目は「焼き魚とご飯、味噌汁、紫人参の漬物」、最後に「チョコレート餅」がデザートに出た。それぞれの品にあったワインが出てくるので、和食とワイン好きにはたまらない組み合わせのよう。
 特に食べたい料理がある場合、予約時に注文すればそれに応じる。通常は夜営業のみだが、12人分まとめて予約してくれれば昼や日曜でも応じるとのこと。

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