W杯予選で日本と同組、モンゴル代表vsミャンマー代表の現地レポート

2022年ワールドカップ・カタール大会、アジア二次予選兼2023年アジアカップ予選が9月5日にスタート。日本代表はキルギス・タジキスタン・ミャンマー・モンゴルと同じグループFとなりました。グループFの開幕戦となった、モンゴル代表対ミャンマー代表の試合を現地観戦しましたので、その様子をお伝えします。(筆者:モンゴル1部リーグ、FCウランバートル所属・大津一貴)

スタジアムの様子

まずは、スタジアムの様子から。

モンゴルのホーム開催で行われた今回の試合は、首都のウランバートルにある『MFFフットボールセンタースタジアム』にて行われました。とても寒い気候の関係から、モンゴルには天然芝のグラウンドが存在しません。その為、国際試合が行われるMFFフットボールセンタースタジアムも、例外なく人工芝のピッチです。また、経年による劣化から、スタジアムの人工芝はかなり傷んでいる状況です。芝生が潰れているので、クッション性が薄くなっています。実際に、私もリーグ戦でこのスタジアムを利用しますが、試合後は身体へのダメージが多いと感じます。

人工芝ピッチのMFFフットボールセンタースタジアム。経年により芝生は潰れており、芝生コンディションは良くない。その為、選手は身体への負担が大きい。

また、スタジアム内はゴール裏の観客席が存在しません。メインスタンドとバックスタンドのみです。メインスタンドは、関係者だけが入場できるエリアに指定されています。ですので、一般サポーターはバックスタンドで観戦することになります(ホーム、アウェイ共に)。

2020年3月31日に予定されているW杯アジア予選、モンゴル代表対日本代表の試合も、このMFFフットボールセンタースタジアムで開催される予定です。日本代表チーム、及び日本代表サポーターは、特殊な環境のスタジアムで試合を行うことを、事前に対策することの1つとして、念頭に置いた方が良いでしょう。

上空から撮影したスタジアムの様子。ゴール裏には観客席が存在しない。一般サポーター達は全員バックスタンドにて試合を観戦することになる。(写真:向かって右側)

ちなみに、モンゴルの3月はまだまだ寒いです。5月になっても雪が降っているぐらいなので、3月下旬に雪が降っている可能性は十分にあります。日本代表にとっては、寒さ対策も必須となるでしょう。

試合の様子

さて、グループFの開幕カードとなった、モンゴル代表とミャンマー代表の試合。お互いのスターティングメンバーとフォーメーションは、下記の画像を参考にして下さい。

モンゴル代表のスターティングメンバーとフォーメーション。モンゴル代表は4-3-3と表記しましたが、3トップの両ウイングである、Dolgoon Amaraa(4)選手と、Gankhuyag Serodyanjiv(8)選手が、ディフェンスの際は低い位置まで戻って守備をするので、4-5-1に近い布陣です。

ミャンマー代表のスターティングメンバーとフォーメーション。ミャンマー代表は、DFラインとMFのラインがフラットに横並びなポジション配置。そして、2トップのAung Thu(9)選手がMFに近い位置まで下がってボールを受けに来ます。逆に、KO KO Kyou(10)選手は常にゴール前でポジションを取っていたので、4-4-1-1と表現させて頂きました。

試合は開始早々、モンゴル代表の1トップであるOyunbaatar Mijiddorj(19)選手がシュートを放ち、ミャンマー代表ゴールを脅かします。逆に、ミャンマー代表も中盤の両ワイド、Mg Mg Lwin(7)選手や、Aung Sithu(16)選手の積極的なドリブル突破などでチャンスを作る展開。

一進一退の展開で始まった試合は、前半17分に動きます。

モンゴル代表MFのNarmandakh Artag(6)のパスから、左ウイングのDolgoon Amaraa(4)選手がダイレクトシュート。モンゴル代表が、ミャンマー代表から先制点を奪います。

先制点が生まれた瞬間、スタジアムに駆けつけたモンゴルサポーター達からは歓喜の嵐。モンゴルサッカー史上初のアジア二次予選を戦う代表イレブンに向けて、「モ~ンゴル!モ~ンゴル!」という大合唱が、ゴール後のスタジアム内を更に盛り上げます。

モンゴル代表、Dolgoon Amaraa(4)選手が先制ゴールを決めた直後の様子。モンゴル代表サポーター達が熱狂した。

しかし、これで火が付いたミャンマー代表。モンゴル代表よりも足元の技術が高く、チームでポゼッションをしながらボールを保持し、モンゴル代表ゴールに迫ります。特に、中盤の両ワイド、Mg Mg Lwin(7)選手とAung Sithu(16)選手にボールが入った時は、ゴール前でのチャンスが多くなり、モンゴル代表に脅威を与えていました。

しかし、フィジカル能力で勝るモンゴル代表は、DF陣が集中を切らさず1-0のリード奪ったまま前半を終えます。

初のワールドカップ二次予選を戦うモンゴル代表を応援するために、スタジアム内には多くのサポーターが集まった。

後半開始後も、ミャンマー代表がポゼッションでボールを支配する展開は変わりません。そして、モンゴル代表のDF陣をこじ開けることができないままの展開も変わりません。モンゴル代表の中盤からのプレスに、ミャンマー代表が攻略できないまま時間が過ぎていきます。

そして、試合開始から65分、ミャンマー代表の攻撃を牽引していたMg Mg Lwin(7)選手が二枚目のイエローカードで退場。ミャンマー代表にとっては痛すぎる展開です。

両チームともに、激しいプレーが随所に見受けられた試合。ミャンマー代表にとっては、Mg Mg Lwin(7)選手の退場がチームの攻撃力ダウンに大きく影響した。

その後、数的不利ながらも積極的に攻撃を仕掛けるミャンマー代表ですが、モンゴル代表DFのTurbat Daginaa(3)選手を中心に、組織的なディフェンスで自陣ゴールを割らせません。ロスタイムの5分が表示されてからも、モンゴル代表は全員の守備意識が高く、集中を切らさず我慢し続けました。

そして、このまま1-0で試合は終了。会場に駆けつけた多くのサポーターがいるスタンドからは、賞賛の歓声と共に、何度もウェーブが起こりました。まるで、お祭り騒ぎのように盛り上がるスタジアムの雰囲気は最高潮。ミャンマー代表の選手達が肩を落としてロッカールームに引き下がる中、歴史的な勝利を収めたモンゴル代表の選手達には、改めて大きな声援が送られていました。

声援を送り続けたモンゴルサポーター達。

●試合スタッツ

【モンゴル 1 - 0 ミャンマー】

17分・モンゴル、ゴール/Dolgoon Amaraa(4)

46分・ミャンマー、交代/KO KO Kyou(10)→Than Paing(11)

65分・ミャンマー、退場/Mg Mg Lwin(7)

65分・ミャンマー、交代/Moe Aung Lwin(21)→Lin Kyi(8)

69分・モンゴル、交代/Norjmoogiin Tsedenbal(23)→Baljinnyam Batbold(12)

70分・モンゴル、交代/Narmandakh Artag(6)→Batboldyn Togsbileg(9)

81分・モンゴル、交代/Oyunbaatar Mijiddorj(19)→Jansyerik Maratkhan(14)

83分・ミャンマー、交代/Nanda Kyaw(5)→Lam Mang Suan(20)

・MOM、モンゴル代表/Dolgoon Amaraa選手(背番号4)

貴重な先制ゴールを決めただけではなく、試合終盤からはサイドバックにポジションを移し、DFでも奮闘。攻守に渡り、豊富な運動量でチームを支えた。

※筆者が独断と偏見で選出しました。

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