【社説】芸備線全線再開へ 「外」からの誘客必要だ

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 広島、新見両市を結ぶJR芸備線が来月23日、全線で運転を再開する。昨年7月の西日本豪雨に見舞われ、寸断されてから1年3カ月ぶりとなる。120万都市広島との直結を願ってきた沿線住民にとっては、さぞ待ち遠しいことだろう。

 広島市安佐北区内で復旧の遅れていた中三田駅と狩留家駅を結ぶ鉄橋は、流失前に比べ、災害に強く造り直された。

 ただ、全線開通するからといって、存続が保証されたわけではない。昨春廃止されたJR三江線のような事態を避けるためにも利用促進が欠かせまい。

 人口減に悩む中山間地域を縫う路線だけに、住民の利用だけでは限界がある。観光客など、「外」からの人を乗せる視点での工夫が求められよう。

 鉄道が止まる影響が深刻だったのは、安芸高田市の向原高である。生徒の約4割が広島市内から通っていたからだ。通学環境の悪化で、この春の入学者は大幅に減った。来春は、回復へと持っていきたい。

 定期券利用者の多くも不便を強いられた。代行バスや高速バスに乗り換えたり、自家用車を使ったりでしのいできただけに、「ようやく」との思いがなおさら深いだろう。

 JR西日本広島支社は全線開通後、被災前と同じ列車本数やダイヤにすると発表した。

 乗客を取り戻すには、利便性を図る工夫が要るはずである。

 もともと利用客の多い広島―三次間では、「各駅停車で約2時間」をもっとスピードアップする必要がないか。通勤、通学用に1時間で結ぶ特別の列車を走らせるよう、望んでいる住民もいる。JR西への要請に向け、沿線自治体は利用予測を調べてみてはどうだろう。

 過疎地の目立つ三次以北の沿線には、とりわけ廃線への危機感がある。「地域にとって、鉄道は生命線」と言う住民もいる。芸備線と接続していた三江線が廃線となった記憶が生々しいからだ。2013年の島根県西部豪雨で鉄橋が落ち、翌年に全線復旧したものの、4年後に廃止に追い込まれた。

 三江線沿線での合言葉は「乗って残そう」だった。だが芸備線と同様、沿線では人口減少が目立ち、住民の乗車だけでは鉄路の存続は難しかった。

 内向きの発想だけでは限界がある。沿線の外からも「乗ってもらう」発想が求められる。渓谷も走る豊かな自然や文化など、地方色そのものを目当てに招き寄せる考え方である。

 ヒントになる動きもある。庄原市の備後落合駅で8月末、地元の元鉄道マンがホームで松江や新見、庄原方面からの列車を迎え、現場での思い出話や地域の歴史を紹介していた。同じ市内の備後西城駅では時々、地元NPO法人がミニコンサートや映画上映会を催している。

 住民手作りの催しが功を奏し、全国から鉄道ファンの姿も増えている。そうした動きを沿線全域に広げれば、「観光資源」になろう。

 列車運行が中断していた1年余りの間、「列車の走る音がしなくなって、寂しかった」と漏らす住民の声も聞こえる。鉄道は貴重な生活基盤の一つであるとともに、「つながっている安心感」を与えてくれる存在とも言えよう。地域にとって存続は不可欠である。