昼夜問わず響く爆音 41歳で聴力障害「爆音の影響以外、何があるのか」 因果関係37年間問い続け

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 「騒音と健康被害の因果関係は否定」―。1998年5月22日、照屋英雄さん(71)=北谷町=は夕刊をにぎりしめ、怒りで震えた。新聞には米軍嘉手納基地周辺に住む住民らが夜間の飛行差し止めと損害賠償などを国に求め提訴した第1次嘉手納爆音訴訟の判決内容が記されていた。

 嘉手納基地が目と鼻の先にある北谷町砂辺。家は滑走路から700~800メートルの距離にある。朝、昼、夜とごう音が耳をつんざく。

 30代の時、健康診断で聴力異常と言われ、41歳で聴力障害と診断された。両親に聴力異常はなく遺伝も考えられない。

 「爆音の影響以外、何があるのか」。怒りが湧き起こる。

 基地周辺に住む住民らが「静かな夜を返せ」と国を相手に提訴した1982年の第1次嘉手納爆音訴訟から原告として関わる。騒音と健康被害の関係性を立証するため法廷にも立った。しかし、1次訴訟に続き最高裁まで上告した2次訴訟でも聴力損失と騒音の因果関係は否定された。

 聴力の弱まりは生活に支障を来している。職場の会議では同僚の声が聞こえず何度も聞き直した。仕事や家庭で会話が成り立たず、いらいらすることも。医師から「騒音のない場所で生活を」と助言を受け引っ越しも考えたが、「先祖代々の土地である砂辺を離れたくない」という両親の思いをくんだ。50歳で補聴器を使い始めた。

 国が助成する住宅防音工事は受けなかった。「基地の存在が問題であり、工事をしては基地を認めることになる」という思いからだ。防音工事で責任逃れをする国の態度も許せなかった。

 だが、2006年に孫が生まれると、騒音におびえ泣き叫ぶ姿に胸が苦しくなり、「少しでも静かな環境を」とやむなく防音工事を受け入れた。

 17年2月の第3次訴訟の一審で「(爆音で)高血圧症発生の健康上の悪影響のリスク増大」と初めて健康被害の一部が認定されたが、訴え続ける聴力への影響は認められなかった。

 「聴力損失は騒音と一番関係が深そうなのに…。それならば何が原因なのか教えてほしいくらいだ」と悔しさがこみ上げる。

 砂辺の集落は、爆音に耐えかねた住民の転出が後を絶たず、空き地が目立つ。

 「本来は波が砂をさらう音が聞こえるほど最高の場所なんだよ」

 聴力の弱まった耳では、その音を聞くこともかなわない。ただ、望むのは爆音がない環境。「何年かかってもいい。この地に静かな空が返ってきてほしい。それだけだ」

 (新垣若菜)

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 第3次嘉手納爆音訴訟の控訴審判決が11日、福岡高裁那覇支部で言い渡される。国を提訴した第1次訴訟から37年がたつが、住民が求める「静かな夜」は遠い。爆音禍で、平穏を切望する原告の思いに迫った。