抜群の選球眼誇るハム近藤が他の打者を圧倒…パ打者の「四球率」ランキングは

日本ハム・近藤健介【写真:石川加奈子】

楽天の主軸ブラッシュ&浅村は三振も多いが四球も選ぶ

「四球率」という指標がある。四球を1つ選ぶのに必要な打席数を表すこの指標は「四球÷打席数」という明快な式で求められる。その値が高ければ、それだけ効率よく四球を選んでいることになる。

 単打も四死球も1つの塁を得るという点では同じというセイバーメトリクス的な価値観が広まってきたこともあり、四球の価値は高まっている。そこで、今回はパ・リーグにおける四球率、出塁率のランキングを確認し、各球団の主力打者がどの程度のペースで四球を選んでいるのかを確認していきたい(成績は9月2日現在)。

 四球率ランキング上位10人は以下の通り。(規定打席到達者30人が対象)

1 近藤健介(日本ハム)四球率.178 三振率.135 打率.304
2 ブラッシュ(楽天)四球率.156 三振率.301 打率.262
3 浅村栄斗(楽天)四球率.143 三振率.262 打率.265
4 吉田正尚(オリックス)四球率.138 三振率.117 打率.326
5 西川遥輝(日本ハム)四球率.137 三振率.168 打率.282
6 井上晴哉(ロッテ)四球率.136 三振率.191 打率.249
7 山川穂高(西武)四球率.132 三振率.239 打率.252
8 森友哉(西武)四球率.127 三振率.162 打率.336
9 デスパイネ(ソフトバンク)四球率.126 三振率.215 打率.271
10 秋山翔吾(西武)四球率.118 三振率.152 打率.309

 近藤が2位以下に大差をつけてトップ。投手の1打席あたりの平均投球数でも規定打席到達者の中ではリーグ最多であり、ボールをじっくり見極めるタイプであることが分かる。その一方で三振率は下から9番目(リーグ22位)。多くの球数を投げさせながら簡単には三振しないところも、優れた選球眼を持つことの証明といえる。

 ブラッシュは四球率がリーグ2位ながら、三振率はリーグトップ。同僚の浅村も四球率がリーグ3位、三振率がリーグ2位と、それぞれ三振を恐れずに際どいボールを見極めている。四球率7位、三振率4位の山川も同じ傾向を示しているといえそうだ。デスパイネもリーグを代表する大砲の1人だが、先述の3人に比べれば四球率、三振数ともにやや低く、積極性とコンタクト力の高さというやや異なる特性が見えてくる。

 吉田正は四球率トップ10の中では三振率が最も低く(リーグ25位)、近藤と同様に優れた選球眼の持ち主だ。他にも西川、井上、森、秋山と三振率が1割台に収まっている選手は多く、打者としてのタイプも長距離砲からリードオフマンまでさまざま。必ずしも、四球の多い打者はその代償として三振が増えるというわけではなさそうだ。

四球率が低いのはハム大田、鷹内川&松田宣ら 積極性の現れか

 続けて、四球率が低い選手も見ていきたい。ランキングは以下の通り。

30 大田泰示(日本ハム)四球率.051 三振率.188 打率.288
29 内川聖一(ソフトバンク)四球率.056 三振率.093 打率.258
28 松田宣浩(ソフトバンク)四球率.058 三振率.198 打率.265
27 源田壮亮(西武)四球率.067 三振率.105 打率.286
26 荻野貴司(ロッテ)四球率.071 三振率.104 打率.308
25 鈴木大地(ロッテ)四球率.089 三振率.126 打率.299
24 銀次(楽天)四球率.090 三振率.100 打率.309
23 ウィーラー(楽天)四球率.0915 三振率.204 打率.239
22 渡邉諒(日本ハム)四球率.0916 三振率.215 打率.272
21 中村奨吾(ロッテ)四球率.0917 三振率.168 打率.234

 大田は四球率トップの近藤と同僚で打順も近いが、四球率ではそれぞれ首位と最下位という対照的な結果に。近藤と大田の間には四球率.127と大きな差が生じており、打者としてのタイプの違いが表れている。三振率は.188とそこまで高いわけではないが、四球数は113試合で26個。積極的な打撃が大田の魅力のひとつだが、選球眼にはやや課題があるといえるか。

 四球数が大田と同じ26個の内川聖一は、リーグでただ一人三振率が.100を下回っている打者でもある。同僚の松田も四球率はほぼ同じ値で、2人の積極性がうかがえる。荻野と鈴木も今季はチームで1、2番を組むケースが多かったが、四球率に関してはともに低い。しかし、出塁率はそろって高い数字を残しており、チャンスメーカーとしての役割はこなしているといえそうだ。

 源田、荻野、銀次、鈴木の4人は三振率が.100台前半という優れた数字を残しており、ここで取り上げた10人中7人が三振率.100台になっている。残る3選手も.200台前半にとどまっており、四球が少ない打者は三振も少ない傾向にあるといえそうだ。

四球率の高い選手は、出塁率も高い

 次に、出塁率を見ていきたい。規定打席到達者におけるトップ10の顔ぶれは以下の通り。

1 近藤健介(日本ハム)出塁率.426 打率.304
2 吉田正尚(オリックス)出塁率.422 打率.326
3 森友哉(西武)出塁率.419 打率.336
4 ブラッシュ(楽天)出塁率.399 打率.262
5 秋山翔吾(西武)出塁率.395 打率.309
6 西川遥輝(日本ハム)出塁率.384 打率.282
7 銀次(楽天)出塁率.3767 打率.309
8 鈴木大地(ロッテ)出塁率.3766 打率.299
9 浅村栄斗(楽天)出塁率.371 打率.265
10 茂木栄五郎(楽天)出塁率.370 打率.295

 四球率に続き、出塁率でも近藤がトップ。吉田正、森、ブラッシュ、秋山、西川、浅村もランクインし、四球率でトップ10に入っていた選手7人が出塁率でも上位に名を連ねている。

 そんな中で、四球率では下から10人に入っていた銀次と鈴木が、出塁率になると一転してトップ10にランクインしているところは興味深い。また、四球率ではリーグ17位(.101)の茂木も出塁率では10位で、リードオフマンとしての優れた資質を示している。

 出塁率は、原理としては打率に四球と死球を上乗せするかたちで計算されるため、高打率の打者が出塁率でも高い数字になることが多い。打撃好調の銀次、鈴木、茂木が優れた値を記録したのはそういった点も背景にありそうだ。それでも10人中7人が四球率の高い選手で占められているのもまた興味深いところだ。

四球率の低い選手は、出塁率も…

 最後に、四球率と同様に、規定打席到達者の中から出塁率が少ない順のランキングも見ていきたい。

30 内川聖一(ソフトバンク)出塁率.299 打率.258
29 松田宣浩(ソフトバンク)出塁率.310 打率.265
28 ウィーラー(楽天)出塁率.318 打率.239
27 中村奨吾(ロッテ)出塁率.321 打率.234
26 金子侑司(西武)出塁率.326 打率.251
25 大田泰示(日本ハム)出塁率.328 打率.288
24 栗山巧(西武)出塁率.3325 打率.245
22 レアード(日本ハム)出塁率.3333 打率.245
22 中田翔(日本ハム)出塁率.3333 打率.243
21 源田壮亮(西武)出塁率.335 打率.286

 大田は四球率ランキングで最下位だったが、対象が出塁率になると25位に順位を上げている。四球率で29位だった内川が30位となり、四球率28位だった松田も29位となっている。28位のウィーラー(四球率23位)、27位の中村(四球率21位)も四球率は高くなかったが、四球率は18位の.096だった金子侑と、同15位の.103だったレアードの2人が、出塁率ではやや順位を落としている。

 傾向としては、やはり打率が低い選手が、出塁率に関してもリーグ下位に位置しているケースが多くなっている。これに関しても出塁率が高い選手たちのケースと同様に、出塁率という数字が打率と密接に関係している以上は妥当な結果といえるだろうか。

 しかし、トップ10に入った選手たちの場合とは異なり、四球率では上位10人に入っていた選手が、出塁率のランキングでは下から10人まで落ちる、といったケースは存在しなかった。当然ながら四球率の高さは出塁率にも直結してくるため、四球を多く選んでいる選手は、四球が少ない選手よりもその働きが出塁率に反映されやすくなるということかもしれない。

 走者が塁に出ていなければ、本塁打を打たない限りはチームに点は入らない。四球を多く選べる選手は、それだけチームの得点率向上に貢献しているといえるだろう。打率や本塁打数に比べると取り上げられる機会は決して多くないものの、堅実に塁に出るタイプの選手が打席でどのように投手との駆け引きに勝ち、四球を選んでいるのかにも注目してみてはいかがだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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