香川県観音寺市でヘイト対策条例が先進的な理由

 日韓関係悪化の中、増える問い合わせ

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 ヘイトスピーチ対策法が施行されてから3年余が経過した。この間、法の要請に従って各地の自治体が条例を制定したが、中でも先進的と評価されているのが、香川県観音寺市の市公園条例だ。最近は日韓関係が悪化していることもあり、報道機関から制定の経緯など、問い合わせが相次いでいるという。

香川県観音寺市の市役所庁舎

 条例は、ヘイトの恐れがある場合、公園の利用を禁止し、違反者には5万円以下の過料を定めている。禁止と罰金を盛り込んだヘイト対策は他にはなさそうだ。どうして先進的な対策ができたのか。観音寺市を訪ね、理由をたずねた。

 「対策法の趣旨を自然に解釈し、時代の流れも踏まえた結果だと思います」。観音寺市都市整備課の黒川順司(くろかわ・じゅんじ)課長補佐は、取材に少し戸惑った表情で答えた。

 市は2017年4月、市民会館に隣接する約70メートル四方の駐車場の管理に関する条例を施行した。禁止条項として「人種などの共通の属性を有する不特定多数に対し、不当な差別を助長する恐れがある行為」を盛り込んだ。

 17年7月には、公園の使用料を値上げするため、公園条例の一部も変更した。この際、条例の禁止条項にも駐車場管理の条例と同じような文言を加えた。もともと、たき火などの違反行為に過料5万円を科すことができると定めており、ヘイトに対しても適用すると決めた。「当時の担当者が決めました。審議会を開いて議論を重ねたわけではありません」

 関係者は当時、この条例が先進的だとは思っていなかったという。気付いたきっかけは、報道機関からの問い合わせだ。「他に例がない内容と、初めて知りました」(黒川さん)。

 問い合わせは川崎市が今年6月、ヘイトスピーチ対策として、全国初となる刑事罰を盛り込んだ差別禁止条例の素案を公表したころから相次ぐ。「ヘイトデモが続いた川崎市ならまだしも、なぜ観音寺市に?」とも聞かれるという。

 16年に施行されたヘイト対策法は「差別的言動は許されない」と明言し、国や自治体に解消のための取り組みを求めたものの、違反しても罰則のない「理念法」にとどめた。各地の自治体が条例を制定する際も、同法の条文にならったせいか、禁止規定や罰則には消極的だ。その結果、ヘイトはいまだになくならず、法の目的は達成されない。川崎市が条例に刑事罰を設けようとしているのも、実効性を担保するためだ。

観音寺市がヘイトスピーチに使うことを禁じた駐車場。奥は市民会館=8月28日、香川県観音寺市

 8月28日、市民会館の駐車場を訪ねると、市民会館のイベントに集まった人々の車でぎっしり埋まっていた。参加者の大半はお年寄りで、みんなにこやかに談笑している。観音寺市では過去に地元でヘイトスピーチが問題になったことはないという。差し迫った危機がなくても、担当者が法の理念を素直にくみ取れば先進的な条例になると、観音寺市のケースは教えている。(共同通信ヘイト問題取材班)