朝鮮学校無償化除外「差別是正へ声を」 前川元次官講演

朝鮮学校に対する差別行政を批判する前川さん=6日、川崎市川崎区

 元文部科学事務次官の前川喜平さんが6日、川崎市内で講演し、朝鮮学校を高校無償化の対象外とした国の措置を是認する司法判断を「政権への忖度(そんたく)が働いている」と批判した。無償化除外の違法性を問う訴訟は全国5カ所で争われ、東京、大阪で学校側の敗訴が最高裁で確定したばかり。差別の是正に「有権者、県民が不当な行政を批判し、差別は許されないと声を上げることが大事だ」と呼び掛けた。

 前川さんは初中等教育担当の審議官として朝鮮学校を対象に含めた無償化制度を作った。ところが安倍晋三政権は拉致問題を理由に排除を決定。「裁判になれば朝鮮学校側が必ず勝つと思っていた。実際は大阪地裁を除いて国の勝訴が続いている。政権への忖度が働いている」と指弾した。

 民族の言葉や文化、歴史を学ぶ朝鮮学校は川崎朝鮮初級学校をはじめ県内に5校(鶴見朝鮮幼稚園を含む)ある。無償化から除外された上に県の補助金も打ち切られ、教育費の負担増で民族教育を受けたり、受け続けたりすることが困難な状況に陥っている。

 質疑応答で、子どもの学ぶ権利が侵害されている現状について問われた前川さんは「『朝鮮学校は北朝鮮のスパイを養成している』といった幼稚な偏見や差別意識を持った人がたくさんいる」と指摘。さらに「朝鮮学校の子どもたちがいかにひどい目に遭っているかを知り、異を唱える必要があるが、ヘイトスピーチがなくならないのは政府自体が政策であおっているからだ」と強調した。

 補助金の打ち切りを巡り、見直しを求める通知が文科省から自治体に出されたことに対しては、「私にも責任の一端がある。与党から強い圧力があり出さざるを得なかった」と振り返った。

 有権者である市民こそが政府、自治体に働き掛ける主体と説く前川さんは「日本社会のれっきとした一員で税金も日本政府に納めているのに、その使い道に発言権がないのはおかしい。永住権のある外国人には地方参政権を認めるべきだと思っている」とも付言した。

 講演は弁護士らでつくる「かわさき子どもの貧困問題研究会」が主催し、「子どもの貧困と教育の未来」をテーマに行われた。

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