MotoGP:KTM離脱のザルコ「お金のためだけに走ることは望まない」。空いたシートを巡って混乱も

 第11戦オーストリアGP後、2019年シーズンいっぱいでKTMのファクトリーチームからの離脱を発表したヨハン・ザルコ。ザルコの離脱発表により、2020年、KTMファクトリーのシートがひとつ空くことになった。

 2019年シーズンよりKTMのファクトリーライダーに起用されたザルコの契約期間は2020年までの2年間だったが、ザルコはKTM加入から約半年で離脱を決断した。KTMはMotoGPクラスに参戦して今年で3年目となるが、MotoGPクラス参戦1年目と2年目に2位2回、3位1回の表彰台を獲得し、2年連続でランキング6位を得たザルコを起用することで、さらなるマシン開発の進化と成績の向上をねらっていた。

 テック3ヤマハでヤマハYZR-M1を駆り、表彰台をねらえる位置でレースをしてきたザルコだが、直列4気筒エンジンからV型4気筒エンジン、アルミフレームからスチールトラスフレーム、オーリンズ製からWP製へのサスペンションメーカーの変更と、YZR-M1とは異なるKTMのMotoGPマシン、RC16への適応に苦戦した。

ヨハン・ザルコ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)

 オーストリアGP終了時点でザルコのランキングは17位。ベストリザルトはカタルーニャGPの10位(ただし、多重クラッシュで上位4名がリタイア。同じKTMを駆るポル・エスパルガロ、ルーキーのミゲール・オリベイラにも成績では先行されていた。

 離脱発表後のイギリスGPではザルコの言動に注目が集まったが、ザルコは次のように語っている。

「このまま2年目を迎えても、状況が変わるとは思えなかった。そうなった場合、僕自身のキャリアにとっても大きなリスクとなる。僕はお金のためだけに走ることは望まない。仕事として15位でレースを終えることを受け入れられないんだ」

「MotoGPマシンは中途半端には乗れない。全力でライディングする必要がある。それができないのなら、マシンに乗らないほうがいい。これが僕のレースへの取り組み方で、今シーズンも当初よりそうしてきた」

■2020年の去就が決まっていないザルコ。混乱するKTMのひと枠

 2020年のMotoGPクラスのシートはザルコが離れたKTM以外、事実上埋まっている。ザルコの来季に関しては、MotoGPクラスでのテストライダー、Moto2クラスへの参戦、スーパーバイク世界選手権(SBK)など他のカテゴリーへの転向が選択肢となるが、何も決まっていない状態だという。

「もちろん、MotoGPクラスにレギュラー参戦することが第一希望だが、現状を見れば、MotoGPマシンの感覚を維持するためにはテストライダーがベストな選択肢だと思う。その場合でも現役を引退した後のテストライダーというのではなく、レギュラーライダーとして復帰することをめざす立場として臨む。ただ、テストライダーという選択は、年間20レースを走れないという点では疑問符が残る」

「もう一度、Moto2クラスに参戦するというのも選択肢のひとつだ。いいチームでタイトルを争うことができれば、現役ライダーとしてのスキルを維持することができる。SBKについては選択肢のひとつとしてはあるが、MotoGPクラスに参戦することが第一目標だから、MotoGPシリーズのパドックに止まっていたい」

現役復帰が噂されたダニ・ペドロサだが自身がこれを否定

 ザルコの離脱表明で、KTMも来季のファクトリーチームの空いたシートを巡って混乱している。テストライダーを務めるダニ・ペドロサの現役復帰という話も出たが、ペドロサ自身はこれを否定。オリベイラのファクトリーへの昇格の可能性もある。

 MotoGPクラス参戦4シーズン目となる2020年に向けて、KTMはMoto2クラスのシャシー開発を終了し、開発リソースをよりMotoGPクラスに集約する体制を発表したばかりだった。ザルコの動向と共に、KTMの来季の体制についても注目が集まる。

© 株式会社三栄