“買い物難民”防止へ 「せちばるストアー」開店

地元の農産物などが並ぶ店内で、「地域のために頑張りたい」と語る(左から)西山さんと山本さん=佐世保市世知原町

 長崎県佐世保市世知原町の中心部に商店「せちばるストアー」が開店した。町中心部では食料品店「国見の郷まごころ店」が7月に閉店。車を持たない高齢者らが“買い物難民”になる懸念があった。こうした事態を防ごうと西山寛子さん(73)と山本照江さん(70)が立ち上げた。2人は「地域のために力になりたい」と意気込む。
 店はまごころ店があった場所の向かいにオープン。規模は半分以下になったが、野菜や鮮魚、精肉、総菜が並ぶ。「地産地消」を心掛け、生産者から出荷された作物を販売する直売所方式で運営。農業者だけでなく、家庭菜園で生産された野菜も含め、幅広く出品を求めている。まごころ店の従業員も雇い入れた。
 買い物に訪れた町内の徳田正子さん(75)は「店が閉まった時は、どうしようと思った。バスで町外に行くのも大変だから、本当によかった。長く続いてほしいので、なるべく利用したい」と話した。
 まごころ店は、小売店の跡に世知原活性化施設利用者協議会が2015年4月に開設した。しかし、高齢化や人口減少に伴い買い物客が伸び悩み、7月22日に閉店した。
 協議会に生産者として出荷していた西山さんは「何とかしなければ」と店の継続策を模索。店舗経営の経験はなかったが、私費を投じて準備に当たった。そして「同じことを考えていた」という山本さんに協力を求めた。
 猛暑の中での準備だったが、店内にクーラーはなかった。2人の挑戦を知った住民から業務用扇風機を差し入れてもらうなど、多くの支援を得て、閉店から10日足らずの8月1日に開店にこぎ着けた。
 開店初日。手を合わせ拝むようにして感謝するお年寄りの姿が印象に残っている。西山さんは「『毎日来るのが楽しみ』と言ってもらえるのが喜び。収益は二の次。地域の役に立てるようになりたい」と力を込める。
 店に立つことが多い山本さんは、お客との触れ合いを大切にする。世間話や悩み事にも耳を傾ける。「地域の交流の場としても、末永く続けられるようにしたい」と語った。

© 株式会社長崎新聞社