本当に“夢の手放し運転”は可能? 日産スカイラインの「プロパイロット2.0」を試した

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皆さんは「CASE(ケース)」という言葉をご存じですか? 世界の自動車業界の未来を握るこのキーワード、C=Connected(コネクテッド:つながる)、A=Autonomous(自動運転)、S=Shared(カーシェアリングとサービス)、そしてE=Electric(電動化)、これら4つの頭文字を取ったもので自動車ビジネスだけでなく、私達の生活を大きく変える可能性を秘めています。

この中で特に話題になるのがAの「自動運転」領域です。普段ニュースなどを見ていても自動運転に向けた新技術やデモンストレーションなどが数多く発信されています。

そんな中、日産自動車が2019年7月16日に発表した新型スカイラインには、驚きの先進運転支援技術である「プロパイロット2.0」を搭載されています。

すでにテレビやWEBでCMを観た人も多いのでは無いでしょうか。そうです「永ちゃん」こと歌手の矢沢永吉さんが運転中にステアリングから手を離すシーンがインパクト十分のCMです。

それでは実際、プロパイロット2.0とは何か? 筆者は一足先にその実力をチェックしてきました。先進技術ゆえに専門用語を並べても難しくなってしまうので実際、どんな動きをして我々にどのようなカーライフを提案してくれるのか、を中心にレポートします。


1ヶ月半の予約期間だけで約1年分を受注

今回のスカイラインは正確に言えばフルモデルチェンジではなく、マイナーチェンジです。これらの定義は書き始めるときりがありませんが、今回紹介する技術だけではなく、内外装のデザインも大きく変更することで新しさをアピールしています。こういうケースを“ビッグマイナーチェンジ”と呼ぶこともあります。

そんなスカイラインですが、日本での販売はこれまで好調とはいいがたいものでした。。理由は数多くあるのですが、今のトレンドはSUV(スポーツ・ユーテリティ・ヴィーグル)を中心にクルマが売れています。もちろんセダン自体は定番でもありますが、昔のように売れるのは難しいのです。

しかし、今回の新型スカイラインは発表以来、販売計画の約9倍近い1,760台を受注しました。数字としてはそれほど多くはありませんが、この台数は昨年1年間で売れた数字とほぼ同じです。つまり新型スカイラインはこれまで1年かけて売ってきたクルマをわずか1ヶ月半で受注したわけです。このことからも「プロパイロット2.0」に対する期待がうかがえます。

自動運転ではないの?

さて、本題に入りましょう。いきなりガッカリさせてしまうかもしれませんが、「プロパイロット2.0」は皆さんがイメージする「夢の自動運転」ではありません。自動運転の定義は実はレベル0からレベル5まで6段階あり、プロパイロット2.0は「レベル2」に該当します。ちなみにレベル0は完全な“手動運転”のこと、レベル5はその真逆になります。皆さんがイメージされる(すべてとは言いませんが)自動運転の世界は実はまだ先にあることは現実として知っておく必要があります。

この定義に照らし合わせるとこれまで発売されてきた各社の技術もレベル2止まりでした。ただ、同じレベルでもその差は大きく、プロパイロット2.0はその中でも上位レベルにあると考えて間違いありません。

知っておきたいベースとなる技術

日産の車を例に取ると、これまで電気自動車である「リーフ」やミニバンの「セレナ」、SUVの「エクストレイル」、そして軽自動車の「デイズ」などに「プロパイロット」と呼ばれる機能が搭載されています。これは高速道路の“同一車線内走行”において、アクセル・ブレーキ・ハンドル操作の支援を行うもので、他社ではACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と呼ばれるものと考えはほぼ同じです。

このプロパイロットにおいてはステアリングは常に握っておかなければいけません。これを「ハンズオン」と呼ぶのですが、これだけ聞くと「全然普通じゃない?」と思うかもしれません。

それでもこのプロパイロットも実際使ってみるとフロントウインドウに装着されたカメラが前方の道路の状況を常に認識してくれます。クルマが常に車線の真ん中を走るように微妙にステアリングを修正してくれることで、長距離運転での疲労などはかなり軽減してくれます。

キーワードは“ハンズオフ”

さて、もったいを付けましたが、いよいよ「プロパイロット2.0」です。プロパイロット(ACC)と比較するとまず高速道路での“複数車線走行”が可能になります。プロパイロットの場合、車線変更を行う段階でとシステムは一度オフになってしまいますが、“2.0”の場合は車線が変更されても支援を行ってくれます。

そしてここからが大きな違いです。一定の条件下なら走行中にステアリングから手を離すことができます。そう「永ちゃん」がCMで行っていたことは本当にできるのです。

これを「ハンズオフ」と呼ぶのですが、今後自動運転が進化していくとこのキーワードは頻繁に出てくることでしょう。つまり近未来のクルマ選びには「ハンズオフ」が重要な技術となります。

実はこの「ハンズオフ」、現在発売されているBMWの3シリーズにも搭載されています。ただしBMWの場合は一定の条件を満たした上で「渋滞時のみ」の作動であり、プロパイロット2.0は渋滞時でなくてもハンズオフが可能です。前述したプロパイロットの進化版だからこそ出来る機能を搭載しているのです。

話を戻すとこの他にも
●カーブの大きさに応じて減速
●標識を認識した設定速度の変更
●渋滞などの停止後30秒以内は追従走行が可能
と大きく進化しています。

極めつきは「車線変更支援」

そしてプロパイロット2.0のもうひとつの大きな魅力が「車線変更支援機能」と呼ばれるものです。前述したように「複数車線」に対応しますので
●ルートガイド(ナビゲーションに連動)に沿った分岐、出口
●遅い前走車の追い越し
●任意のタイミングでの車線変更

も行うことができます。

あっけないほど操作は簡単

さて、ここまでプロパイロット2.0について細かく書いてきましたが、やはり機能について「何ができて、何ができない」ということをきちんと理解しておかないとせっかくの先進技術も“宝の持ち腐れ”です。

今回、中央自動車道富士吉田線の河口湖インターチェンジから大月方面へ向かい、その往復でテストをしてみました。

まず高速道路本線に入線し、周りの状況を確かめた後、ステアリング右側にあるブルーのメインスイッチを押します。これで準備は完了。あとは自分で走りたい速度に到達したら、メインスイッチ左上の「SET-」を押すだけです。

これで基本は終了です。何ともあっけないほどですが、操作自体はプロパイロットや他社のACCとほぼ同じ。最先端の技術とはいえ、運転中ですから安全を考慮すると「敷居は低く」しておく必要があるわけです。

見やすい2つのディスプレイがポイント

プロパイロット2.0をオンにして設定速度でセットするとメーターの中にハンドル支援のための作動状態が表示されます。表示は3種類あり
●白→車間と車速の制御のみが作動、ドライバーが操舵する必要があります
●緑→従来のプロパイロットと同様で“ハンズオン”での車線内走行が可能
そして
●青→“ハンズオフ”での車線内走行が可能
となります。

これは前述した速度をセットした後、車両側が条件を満たした時に自動的に色が変わるのでドライバーは今走っている道路や周辺の状況からハンズオフが可能なのかを簡単に理解できます。

ディスプレイはもうひとつあります。それがHUD(ヘッドアップディスプレイ)と呼ばれるもので、フロントウインドウに同様の情報を投影するものです。視線移動なども少ないので通常はこれを見ればほとんどの機能が確認できます。

本当に手を離しても走行できる

さて走行中ディスプレイ内のハンドルアイコンが青に変わりました。恐る恐るステアリングから手を離してみると……「おおっ!」感動の瞬間です。確かにクルマは車線の中央を走り続けます。

これを実現するためにプロパイロットより、はるかに高い技術が搭載されています。カメラは単眼から三眼の「トライカム」と呼ばれる合計7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーにより車両全体、つまり360度の検知が可能になりました。

制限速度やカーブの大きさに合わせて速度も自動で調整してくれますし、標識をカメラで見ているので制限速度が変わった場合も設定速度を自動で変更してくれます。

また走行中、追い越し車線からトラックなどが接近すると、メーター内にもその状況が表示されます。何とトラックであること(クルマの形)も画面上に表示されるなど常に車両が周辺を監視してくれていることで安心感を得ることができます。

クルマはいつもあなたを見ています

ハンズオフが出来たからと言ってもドライバーは何か急なアクシデントに対応するためにはスマホなどは見てはいけません。例えばスマホを見ようと視線を下の方に向けっぱなしにしたり、よそ見を続けると車両側から警告が出ます。これが「ドライバーモニター」と呼ばれる機能で前方を注視するという当たり前の行為を常に見張ってくれるわけです。

車線変更もおまかせです

走行中、前方にやや速度の遅いクルマが走っています。車間と速度を常に検知しているプロパイロット2.0から“提案”が出ました。要は「前のクルマの速度が遅いので追い越しますか?」という内容です。ここからステアリングに手を添えて専用のスイッチを押し“承認”します。すると車両は自動でウインカーを出し車線変更を開始します。車両を追い越した後、同様の操作を行えば元の車線に戻ることができます。

追い越しとか自信がないし、でも前のクルマが遅いのはストレスになる、と言った際には本当に便利な機能と言えます。もちろん後方から追い越し車線を走ってくる車両があればシステムは作動しません。これが前述した360度周辺を見ているという機能の証明でもあります。

高速道路の分岐や出口もクルマにおまかせ

同様の技術を使うことで高速道路での分岐のために車線変更が必要な場合、一度の操作で一連の操作を支援してくれます。条件としてはまずカーナビで目的地を設定しておく必要はありますが、カーナビのルート案内に連動して前述した追い越し同様に車両側から“提案”が行われます。後は追い越し時と同様に“承認”することで待機後、ウインカーを出して車線変更し分岐に入っていくという優れものなのです。

カーナビには日本初の凄い技術を搭載

高速道路などで気になるのが分岐や出口への車線変更です。プロパイロット2.0はこれにも対応しています。実はここまでの技術を可能にしたのは日本初となる「3D高精度地図データ」と呼ばれるものがキーとなっています。

搭載されるカーナビは見た目は今までのものとほとんど変わりません。しかしその中身は自車の位置を高い精度で把握します。ちなみにどれくらい正確かというと、従来のGPSを使った状態では誤差10m程度ですが、この技術を使うと前後で1m、左右では5cm(!)程度と一気に精度が向上します。さらにカメラの検知範囲より先の道路の形状も先読みできるので、滑らかな動きを可能にしています。

ハンズオフや車線変更支援機能を使うためにはこの地図が必要なのですが、まだ全国全てを網羅しているわけではありません。実際、今回まだ3Dデータ化されていない高速道路にわざと入ったのですが、その際はハンズオフは使えません。表示も青から緑に変わり、従来のプロパイロットと同じ動きになりました。

ただ、それでもクルマに搭載されている専用の通信ユニットが年数回レベルですが、自動で地図をアップデートしてくれます。「この前通った時は表示が緑だったのに、今回は青でハンズオフが使える」といったことも可能になるのです。

条件は多いが使うと便利を実感

冒頭にも述べましたがプロパイロット2.0は自動運転の定義ではまだレベル2です。レベル2まではハンズオフ中などの事故はドライバーに責任となります。レベル3以上はクルマ側の責任となりますが、法整備も含めてこの領域に入るにはまだまだ時間がかかりそうです。

それでも条件が限定されたりシステムの機能上限もある中、プロパイロット2.0はドライバーの運転時の負担を大きく軽減してくれるものです。まだ価格は高いのですが“未来への次の一歩”は確実に踏み出しました。今後はこれらの機能もアップデートして数多くのクルマに搭載されていくはずです。

このプロパイロット2.0を使えば今まで以上のロングドライブが楽しめるはずです。例えば免許を所有するご夫婦の場合、普段の運転はご主人が行い、高速道路では奥様がプロパイロット2.0を使うことで、ご主人は移動中に休憩を取ることができます。ユーザーによる使い方は様々ですが、新しいクルマの楽しみ方を提案してくれる機能としても魅力的なのです。