暮らしを守る教訓、胆振東部地震から1年【5】

ドローン活用通信機能

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半径800メートルまで可能に

登別市総合防災訓練で参加者にドローンの機能について説明する董教授(左)

 胆振東部地震直後に発生した道内全域の停電「ブラックアウト」。停電の長期化に伴う非常用・予備電源の枯渇によって、道内の約14万回線の固定電話サービスと約6500カ所の携帯電話基地局が使用できない状況に陥った。家族らの安否確認が十分にできない状況に、多くの道民が不安を募らせた。室蘭工業大学の董冕雄(トウメンユウ)教授(37)は、東日本大震災で同様の経験をした自身の境遇と重ね合わせ、小型無人機ドローンを使った非常時の通信システムの構築に情熱を燃やしている。

■眠れぬ日々

 中国・上海出身の董教授は、父の仕事のため13歳のときに岩手県へ移住。大学院生のときに東日本大震災が発生した。当時、海外派遣でカナダにいたため、津波により甚大な被害を受けた県内に住む家族の無事が分かるまで、眠れない日々を過ごしたという。

 こうした経験をもとに、室工大では基地局が被災した場合でも通信が可能になるよう、基地局を通さずスマートフォン(スマホ)などの端末同士で情報をやり取りできる技術を発展させる研究を進めている。

 研究を進める中で「地形に影響されない。人口密度が低い北海道で移動時間が短縮できる」などのメリットから災害時のドローン活用に着目した。すでに大小10機ほどある研究用ドローンを使用してテストを重ね、研究室の学生と共に実用化へ準備をしてきた。

■救助の技術

 今年7月にはコンピューター、カメラ、通信機器を搭載したドローンを上空に飛ばし、基地局を介さずにスマホ同士で音声やテレビ電話でやり取りができる専用アプリを開発。同月の登別市総合防災訓練では市民も参加して実証実験を行った。現在はドローン1台で半径800メートル圏内での通信が可能となり、台数を増やすと通信範囲は広がる。

 災害時の情報収集などですでに活用されているドローンの役割についても、被災者がアプリを使用してメッセージを送ると、スマホのGPS機能で送信者の位置情報が分かるようになり、赤外線で体温を感知するカメラの使用で、建物やがれきから被災者を見つける技術の導入など、救助に役立つ機能を追求している。

 最終的には「人工知能(AI)を搭載して自動的に人を発見できるようになる」のが目標。現状はさまざまな障害の発生が想定される被災地での運用やドローン同士の通信機能など、課題は山積している。それでも董教授は「問題は次々と出てくるが、ワクワクしながらやっています。このプロジェクトは机上の空論ではなく、絶対に実用化させるという情熱を持ってやっている」と意気込んでいる。
(奥野浩章)

(おわり)
(2019年9月12日掲載)