住民が住み続けたい都道府県は?「持続可能な自治体」ランキング

あなたは今の自治体に住み続けたいと思いますか――。地域や企業のブランド力を調査・研究しているコンサルティング会社・ブランド総合研究所は、住民視点で地域の課題を探る「地域版SDGs調査」を初めて行い、9月6日に結果を公表しました。

SDGsとは「持続可能な開発目標」と訳され、国際社会が目指すべき開発目標を国連が分野ごとに定めたもの。調査では、これを地方自治体レベルに落とし込み、地域の課題を明らかにしようとしました。結果からは、都道府県によって住民の幸福度や定住意欲に大きな差がある現状が浮かんできました。


「難しい取り組みをわかりやすく」

調査は2019年7月、47都道府県の約1万6,000人を対象に、インターネットで行われました。各都道府県で約350人ずつと、満遍なく調査対象者を置いたのが特徴です。

SDGsは、持続可能な世界を実現するため、「貧困」「教育」「健康・福祉」など17分野でゴールを定めています。今回聞いたのは、「幸福度」「生活満足度」「愛着度」「定住意欲度」などの基本指標と、SDGsの分類に基づいた具体的な住民の悩み(48項目)と、社会が取り組むべき課題(48項目)です。

さらに、住民の悩みや地域課題が、幸福度や満足度にどの程度影響しているかも分析しました。調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄代表は「SDGsを住民目線に置き換えて考えもらいたいという思いから、この調査を行いました。難しい取り組みをわかりやすく変え、課題解決のために普及させたい」と話します。

住民が最も幸せを感じている自治体は?

調査結果はどのようなものだったのでしょうか。まず、「あなたは幸せですか」という問いに対して「とても幸せ」「少し幸せ」と答えた人は62.7%と、6割を超えました。割合が最も多かったのは宮崎県。続いて、熊本県、福井県、徳島県、沖縄県と、西日本の自治体が上位に並ぶ傾向がありました。

一方、「あまり幸せではない」「全く幸せではない」と回答した人は16.1%。都道府県別のランキングで最下位は秋田県で、岩手県、東京都、福島県と続きました。47都道府県のうち、下位には東北地方や関東の都市部が多くランクインしました。

次に、「今の生活に満足している」と答えた人は59.1%と、6割を下回りました。ランキング1位は千葉県。その後に兵庫県、埼玉県、愛知県、滋賀県と都市部が続きました。一方、こちらも最下位は秋田県。青森県、島根県、岩手県、新潟県と、東北や山陰の過疎化が進む地方部がランクインしました。

どういう状態だと住民は満足するのか

このような住民の幸福度・満足度には、どのような悩みや地域課題が影響を与えているのでしょうか。幸福度と満足度は似た概念にようにみえますが、悩みや課題は満足度のほうにより大きな影響を与えることがわかりました。

まず、「満足度」に最も大きな影響を与えている“住民の悩み”は、「電車やバスの路線廃止・減便」。このほか、「病院・医療施設の不足」「低収入・低賃金」「人材不足・後継者不足」なども強い関係がありました。

地域の課題も大きな影響を与えていました。具体的には、「人口減少・過疎化」「商店街の疲弊・店舗の減少」「農林水産業の衰退」などの項目です。つまり、都市インフラの不足や、経済環境の悪化、過疎化など地方の抱える問題が、住民の不満を強くしていたのです。

一方で、幸福度に特に強い相関性のある悩みや課題はありませんでした。しいて関係があるといえそうなのは「高齢化」「経済の停滞」など。田中氏は「幸福度にはSODs以外の視点が影響しているのでは」と話します。

住民が定住したいナンバーワンの自治体は?

居住する都道府県に「愛着がある」と答えた人は74.8%。基本指標の中では最も大きな数字で、4人に3人が地元に愛着を持っていることがわかりました。「住み続けたい」と答えた人は70.2%。この2つの回答には非常に強い相関関係がありました。

愛着度が1位だったのは北海道。2位は沖縄県、3位は福岡県、4位は宮崎県でした。一方で、ワースト1位は茨城県、同2位は埼玉県と、ワースト5位以内には東京都を含む関東の4都県が入りました。

住民の定住意欲度が最も高いのも北海道でした。続いて、福岡県、大阪府、沖縄県と、愛着度も高い自治体がランクインしました。最下位はまたしても秋田県。ランキング下位には、青森県、島根県、徳島県と、地方部が続きました。

さらに分析すると、定住意欲度には「電車やバスの路線廃止・減便」「病院・医療施設の不足」「商店街の疲弊・店舗の減少」「空き家の増加・ゴーストタウン化」という悩み・地域課題が関係していることが明らかになりました。ほかに、「働きがいがない」「人材不足・後継者不足」という労働環境の悩みも、意欲を下げていました。

調査に浮かぶ地方部の大きな問題

今回の調査から浮かんできたのは、少子高齢化、過疎化が進む地方都市で、都市インフラの不足や地域経済の弱体化などが、住民の満足度や定住意欲を下げているという結果でした。

田中氏は「中でも地方における交通網の減少は大きな問題だと思います。地域の持続性を高めるためには、いかに定住意欲度を上げるかが重要です。状況は地域によって全然違う。行政は住民の悩みに基づいて課題を解決すべきです」と指摘します。

少子高齢化の進行で、2040年までに869の市町村が消滅するという試算が2014年に発表され、大きな衝撃を与えました。今もその流れを止めることはできていません。SDGsという新しい概念は、自治体に新たな気づきを与える“地域活性化の特効薬”となるのでしょうか。

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