夫より15年遅れて年金生活「年の差夫婦の老後資金問題」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、夫が来年定年を迎えるという45歳の共働き主婦。年の差婚のため、この先、夫が亡くなった後に妻自身の生活資金が残るのか不安だといいます。FPの横山光昭氏がお答えします。

夫が来年定年です。老後資金が十分ではないと感じており、収入が減るのが不安です。4年ほど前に役職定年があり、収入が下がったことで、仕事に対する意欲があまりなくなってしまったようです。夫は、継続雇用で働こうかなと話すこともあれば、もう疲れたのでやめておこうかなとも言ったりしています。私としては少しでもい良いので、働きに出てほしいと思っています。共働きなので、退職したり、収入が少なくなっても、すぐに生活が困るということはないのですが、子どもたちが独立して教育費などがかからなくなった今、最後の貯め時だと思っています。

というのも、私たちは年の差の大きい夫婦です。夫より15年遅れて私が年金生活になります。夫の老後生活はなんとかなったとしても、夫婦ともに年金生活に入った時にやっていけるのか、もし夫が亡くなった後、私の生活資金が残るのかどうかが心配なのです。夫が定年退職後は私がまだ働けるので正直収入の心配はありません。ですが、私が年金生活になったら収入を得る人がいない、つまり蓄えだけが頼りとなってしまうのです。

そう思って今、生活費は夫の収入の範囲で収めるようにし、私の収入は貯めています。ですが、いくら貯めるとよいのか、もっと貯めるにはどうするとよいのかと考えてしまいます。老後の暮らし方が十分イメージできない分、不安も大きくなってしまうのですが、どうしたらもっと貯められるのか、ヒントをいただけたらと思います。

〈相談者プロフィール〉

・女性、45歳、既婚(夫:59歳、会社員)、子供2人は独立

・職業:看護師

・毎月の手取り金額:52.2万円

(夫:28.9万円、妻:23.3万円)

・年間の手取りボーナス額:110万円

(夫:60万円、妻:50万円)

・貯蓄:900万円

・夫の退職金:約1200万円の見込み

【支出の内訳(約28.5万円)】

・住居費:8.1万円(住宅ローン、残8年)

・食費:5.5万円

・水道光熱費:1.5万円

・生命保険料:1.5万円(死亡保障中心)

・通信費:2.3万円

・交通費:2.7万円

・日用品代:0.8万円

・医療費:0.5万円

・被服費:1万円

・交際費:1.5万円

・小遣い:1万円(0.5万円ずつ)

・その他:2.1万円


横山:ご相談ありがとうございます。年の差のあるご夫婦は、老後資金も2段階で考えておくべきですね。しっかり老後について考えているように感じますが、さらに改善できる部分があるのかを検討してみましょう。

夫が年金をもらい始めてからがカギ

家計はよく管理できていると思います。共働きの場合、一人分の収入以上を使って暮らしがちですが、一人分の収入の中で収めている点はお見事です。老後の生活資金についてもしっかり意識している点は素晴らしいと思います。

相談者さんご夫婦のように年の差があるご夫婦は、老後生活に入るまでの生活の変化が2段階あると思います。相談者さんの収入がしっかりとあるので、夫の老後は妻の収入である程度カバーできるという点がメリットとなり、ご主人が定年後働くかどうかを迷ってしまうことになっているのでしょう。先に年を取るほうは、安心ですよね。ですが、あとから年を取る方は、徐々に収入が減ってしまうことがわかるので、不安が大きいものです。老後資金の大半は妻の生活を維持するために準備すると考えてもよいかもしれませんね。

ご主人がもし、「定年後は働かない」とするのであれば、毎月少額の補てんが必要です。貯金は目減りしますが、退職金も合わせると2000万円以上となりますので、ある程度は減っても大丈夫だと思います。あとは、ご主人が年金をもらい始めたら、そこから貯蓄をしていくと良いと思います。具体的な年金額はわかりませんが、一般的に厚生年金をもらっている人は基礎部分と厚生年金部分を合わせ、月に16万円~17万円ほど支給されるようです。ならば今のペースを維持できれば、年金をもらい始めてから10万円以上貯金することも可能かと思えます。

人生一度きりですから、節約ばかりしすぎずに楽しみにも使いながら貯められると、暮らしも充実し豊かな生活となるでしょう。

“長生きリスク”に備えて生命保険の見直しを

ここであえて支出を見直すのであれば、生命保険と通信費を見直すとよいでしょう。特に生命保険は、その保障内容が死亡保障中心となっています。お子さんが独立してしまえば、配偶者の生活を支えられれば良いわけですし、それは遺族年金などで十分だと思えます。あえて大きな生活費の保障などはいりません。それよりも今は“長生きリスク”と言われたりしていますし、今後は年齢的にも病気治療や長期入院などのリスクが増えます。ですから夫の医療保険を検討してもよいでしょう。

また、夫の老後の生活が妻の収入に頼るものであればなお、妻もしっかりと医療保障に入るべきだと思います。収入が減ってその後の暮らしが脅かされても困りますから。多少支出が増える可能性はありますが、必要な支出はしっかりとしていきましょう。

また、通信費は使い方によって向き不向きがありますが、仕事で通話をたくさん使うとか、携帯キャリアのメールアドレスが必要というのでなければ、格安スマホを検討してもよいでしょう。最近では大手キャリアも安いプランを出してきているので、契約内容を見直すということでも良いかもしれません。

固定費は削減できるとその効果がずっと続きますから、見直しを一度してみましょう。あとは自分に合うか合わないかで決めるとよいと思います。

老後資金の不安は妻のiDeCo加入もよい

相談者さんが老後資金を心配するのであれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)を始めてみてもよいでしょう。年金生活の生活費の足しにすることができます。単にお金を貯めておくよりもお得です。お勤めの病院に企業年金がなければ、問題なくできると思いますし、もし企業型DC等を取り入れているのであれば、規約で禁止していないかを確認してみましょう。

iDeCoは原則60歳まで引き出すことができないため、老後資金作りには最適です。しかも、掛け金は全額所得控除になるので年末調整で戻ってくるお金が増えますし、翌年の住民税も安くなります。また、運用して利息をもらうにしても税金が非課税となりますし、受取時も税金が控除される仕組みがあります。口座の維持管理に費用が掛かるのがデメリットですが、それ以上に受けられる恩恵が大きい制度です。

もし、毎月2万3000円の掛け金を積み立てて運用を続け、3%で運用ができたとしたら、20年後には750万円ほどまで膨らますことができるでしょう。積み立てる元本が552万円ですから、その膨らみ方の効果をわかっていただけると思います。

さらに相談者さん自身にも退職金があれば、ご自身の収入で2000万円近い老後資金を準備できるかもしれません。ご主人の蓄えはご病気などにより減る可能性もありますが、時差があってもお二人で4000万円くらいの資産を残せると思えば安心できると思います。

老後資金については過剰に心配せず、今できることをやっていれば、大丈夫だと思います。あとは羽目を外しすぎず、楽しみながら生活していきましょう。

© 株式会社マネーフォワード