【社説】韓国のWTO提訴 不毛の応酬続ける気か

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 日本の輸出規制強化を巡り、韓国が世界貿易機関(WTO)に提訴した。日韓の対立はついに国際機関に持ち込まれた。今回の提訴によって、悪化している両国の関係が改善に向かうだろうか。

 関係がこじれた根幹には、元徴用工訴訟がある。WTOへの提訴は、どちらが勝者になるとしても、不毛の応酬をエスカレートさせるだけではないか。

 長い歴史を紡いできた隣国同士の関係のもつれである。第三者が入って、簡単に仲直りさせられるものではあるまい。両国が冷静な対話を重ねてこそ、歩み寄りの糸口が見いだせる。

 日本による半導体材料3品目の輸出規制強化について、韓国は「政治的な動機による差別的な措置」と主張する。一方で日本は、韓国の貿易管理体制の不備を挙げ、安全保障を理由に規制の正当性を訴えている。WTOでも、双方の主張は激しくぶつかり合うに違いない。

 提訴後は、まず2国間協議から始まる。日本が応じなかったり協議自体が不調に終わったりすれば、二審制の審理に移る。最終的な結論が出るまでには少なくとも1年以上かかるとみられる。激しく主張し合っている間に、関係改善が見込めるだろうか。さらに黒白がはっきりつけば、なおさら両国関係がこじれる恐れすらあろう。

 韓国が提訴に踏み切ったタイミングにも首をかしげざるを得ない。文在寅(ムンジェイン)大統領が側近の〓国(チョグク)氏を法相に任命した直後だった。疑惑の渦中にある人物の任命強行には、世論の激しい反発が渦巻いていた。それをかわす狙いがあったと勘繰られても仕方あるまい。

 また韓国は、事実上の対抗措置として日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。さらに約1700品目の輸出規制を強化する構えも見せている。つい1カ月前、対日批判をトーンダウンさせていたのは文大統領である。苦しい政局を打開するために対立を先鋭化させているのなら、国民への背信行為に他ならない。

 日本も関係改善を望む気が全くないように見える。WTO提訴に対しても、経済産業省の幹部は「同じことを粛々と説明していく」と歩み寄りの道筋を探る様子はない。経済的な圧力で屈させるつもりなのか。それで相手を従わせたとしても、根本的な解決にはなるまい。

 経済に限らず、草の根の交流も含め、韓国は最も身近な隣国の一つである。相手に言い分があるとしても、政府として向き合う姿勢こそ求められる。先日の内閣改造では経産相や外相が交代した。対話への流れをつくる機会にしてもらいたい。

 WTOの紛争処理を巡っては、韓国による福島など8県で水揚げ・加工された水産物の禁輸措置の妥当性が認められ、列島に衝撃が広がった。生産者の落胆は察するに余りある。禁輸解除の動きが各国に広がっている中で、明らかに異質な動きである。感情的な対立も無関係とは言えまい。

 日韓の関係悪化は、経済から安全保障まで複雑に絡み合っている。発端となった元徴用工問題に立ち返らなければならない。冷静に対話するには、今ある問題を一つ一つ解きほぐす必要がある。そのためにも、韓国は提訴を取り下げるべきだ。

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