東京五輪マラソン代表懸け MGC 大一番へ長崎県勢4人

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 東京五輪のマラソン代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)は15日、明治神宮外苑発着で行われる。五輪本番とほぼ同じコースを舞台に、男女とも2位までが得られる五輪切符を目指し、トップ選手が一堂に会して競う初の試みだ。男子は31人が午前8時50分、女子は12人が同9時10分にスタートする。夏の暑さが残り、ペースメーカーはいない。各陣営が「展開が読めない」と口をそろえる大一番は、心身ともにタフさが試される。

陸上日本選手権男子5000メートルで走る井上(右)と設楽=6月、博多の森陸上競技場

◎男子4強軸 女子は混戦
 男子は昨年のジャカルタ・アジア大会覇者で26歳の井上大仁(MHPS)、昨年10月のシカゴで2時間5分50秒の日本記録を樹立した28歳の大迫傑(ナイキ)、同2月の東京で2時間6分11秒をマークした前日本記録保持者で27歳の設楽悠太(ホンダ)、同12月の福岡国際を制した25歳の服部勇馬(トヨタ自動車)が「4強」と呼ばれる。
 5000メートルの日本記録も持つ大迫は「しっかりチャレンジしていく」、7月のゴールドコーストでマラソン初優勝を飾った設楽は「自信しかない」、井上も「暑さは強いと思う」と強気だ。福岡国際で課題の終盤にペースを上げ、成長を印象づけた服部は「積み上げてきたものを発揮したい」と意気込む。
 トラック種目でロンドン五輪、2度の世界選手権に出た佐藤悠基(日清食品グループ)、昨秋のベルリンで4位に入った中村匠吾(富士通)も期待される。36歳の中本健太郎(安川電機)は唯一の五輪マラソン経験者(ロンドン6位)で最年長だ。
 女子は初マラソンだった昨年1月の大阪国際を制して、同9月のベルリンで自己記録を2時間22分23秒に伸ばした松田瑞生(ダイハツ)、マラソン出場は1度だけながら、5000メートルや1万メートルの日本代表経験がある鈴木亜由子(日本郵政グループ)が有力視される。
 最年長の37歳でリオデジャネイロ五輪14位の福士加代子、出場選手中最速の2時間21分36秒の記録を持つ安藤友香、最年少の22歳で勢いのある一山麻緒のワコール勢のほか、前田穂南(天満屋)も注目される。力の差は小さく、男子以上の混戦模様だ。
 県勢は井上に加え、MHPSの木滑良と岩田勇治、女子は十八銀行を長く引っ張る野上恵子が挑む。木滑の自己ベストはは出場者中7位となる2時間8分8秒。「自分のリズムを崩さずに走れれば勝機はある」と闘志を燃やす。入社14年目の岩田は、積み重ねた努力がこの冬に開花。「自分の感覚を大事に走りたい」とベテランの意地を見せるつもりだ。
 野上は4年前、29歳で初挑戦したマラソンで自らの可能性を広げた。銀メダルをつかんだ昨年のジャカルタ・アジア大会をはじめ、夏のマラソンで結果を出してきた強みがある。「持ち味である粘り強さを本番でしっかり出す」と気合が入る。

最終調整に励む十八銀行の野上=長崎市営陸上競技場

◎井上(MHPS)/「4強」の一角/「勝つ気持ち 誰よりも強い」
 昨年8月25日。ゴール時の気温が30度に達したジャカルタで、男子の井上大仁(MHPS)はトラックまで持ち込まれた激戦を制してアジア大会覇者となった。マラソン初勝利から1年余り。五輪切符を懸けた42.195キロを前に「勝つ気持ちは誰よりも強い」と闘志をみなぎらせる。
 自己記録は昨年2月の東京で出した2時間6分54秒で、出場選手中3番目の26歳。夏の国際大会を制した実績も評価され、日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)らとともに「4強」の一角に数えられる。今年4月のボストンは12位だったが、海外の強豪と同じ舞台に立って自らを鍛えてきた。
 165センチ、51キロの小さな体には、苦い思い出も刻まれている。2017年世界選手権。半ばすぎで先頭集団から脱落して26位に沈んだ。タイムやペースを気にするあまり「リズムが取れなかった」。以降、レースで時計を着けるのをやめた。「何秒でいけたというよりも、どういう感覚で走ったかが大事」と言葉に力を込める。
 ペースメーカーが不在のマラソンも複数走っており、順調に経験を重ねてきた。「一番の敵は自分」。力を出し切れば五輪切符に手が届くと信じてスタートラインに立つ。