「この25年のなかで最悪の失敗」。アルファロメオF1のボス、ライコネン車のタイヤ装着ミスを嘆く

 アルファロメオF1のチームマネージャーを務めるベアト・ツェンダーは、2019年イタリアGP決勝におけるキミ・ライコネン車のタイヤに関する規則違反は、F1における自身のキャリアのなかでも最悪の失敗だったと語った。

 今回の問題は、ピットレーンスタートに関する規則の誤解から生じている。ライコネンは、予選Q3に進出したものの、そのセッションの序盤にクラッシュ、マシンを破損させ、計測ラップを走ることができずに予選10番手となった。

2019年F1イタリアGP キミ・ライコネン(アルファロメオ)が予選でクラッシュ

 チームは、マシンを修復するとともに、パルクフェルメ下で予選で搭載していたものとは異なる仕様のパワーユニットエレメントに交換したため、スポーティングレギュレーションに基づき、ライコネンはピットレーンスタートを求められた。

 だが、ライコネンは予選Q2でベストタイムを出したソフトタイヤで決勝をスタートしなければならなかったにもかかわらず、チームはミディアムタイヤを履かせてしまった。この違反によりライコネンは10秒のストップ&ゴーペナルティを受けた。

 1994年以来ザウバーとその後身アルファロメオに所属し、これまで合計455戦のグランプリレースを担当してきたベテランのツェンダーは、チームのミスによりライコネンがペナルティを科せられたことについて、「この25年間で私が犯した最悪の失敗だった」と語っている。

「ペナルティについて説明する気はないし、そんな規則など知らない」と、ライコネンはレース終了後に不満をぶちまけた。
「誰かがどこかの段階でばかげた間違いを犯した。ともかくこういうことが起きてしまった。おまけにあのいまいましいセットは何の役にも立たなかった」

 ピットレーンスタートの場合でも、モノコック交換を行わなければ、Q3出走者はQ2でベストタイムを記録したタイヤでスタートしなければならない。ツェンダーは、規則が適正に順守されているかどうかを確認する責任は自分にあったと認めた。

「予選(Q2)時のソフトタイヤで決勝をスタートしなければいけない、ということを、私が把握しているべきだった」と、ツェンダーはスイスのドイツ語日刊紙『Blick』に語った。

■「タイヤのミスでチャンスを失った」と悔しがるライコネン

 ピットレーンからのスタートだったにもかかわらず、ライコネンは10周目で15番手にまで順位を上げた。だがペナルティを受けて、またも最後尾への後退を余儀なくされた。

 その後必死で追い上げた結果、ライコネンは15位でフィニッシュしたが、ポイント争いに加わることはできなかった。

「今日はタイヤに関するあのミスさえなければ、間違いなくこれよりはるか上位でレースを終えられていたはずだ」と、ライコネンは日曜日のレース終了後に語った。

 ツェンダーは、ペナルティがなければ、ライコネンはほぼ間違いなく13位以上に入れただろうと示唆し、「これから先の25年間では、二度とこのような失敗が起こらないことを願っている」と述べている。

 ただ少なくともアルファロメオチームとしては、モンツァで2ポイントを獲得することができた。アントニオ・ジョビナッツィが9位でフィニッシュしたからだ。

 ジョビナッツィにとってこの9位は、ここまでのF1キャリアのなかのベストリザルトだ。わずか1週前のベルギーGPでは、最終ラップの直前でクラッシュし、ポイントを逃していた。

 アルファロメオから来賓としてモンツァに招かれていた元チーム代表のペーター・ザウバーは、「今回の入賞で、彼はスパでの失敗を埋め合わせた」と述べた。

 現チーム代表のフレデリック・バスールは「アントニオがようやく力を発揮してくれて、とにかくうれしい」と語り、さらに以下のように続けた。「これでチームのスタッフ全員の、彼に対する信頼にも応えられたことになる」

「残念なことに、キミは印象的なレースを展開できなかった」
「ピットレーンスタートから順位を上げていくのは、いつでも困難な仕事だ。だが今回は我々が誤ったタイヤを装着したことで、入賞に向けた彼の願いを潰してしまった」

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