社説(9/14):水産予算の概算要求/大規模化指向に漂う不安

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 水産庁は総額3003億円に上る2020年度の概算要求をまとめた。18年12月に70年ぶりに改正された漁業法の施行が迫る中、前年度当初比1.7倍を求めた昨年と同額とした。新たな資源管理システムの実施と水産業の成長産業化を柱とした水産改革への強い意欲を、数字に反映させた形だ。

 水産資源の回復を目指す資源管理には約1000億円を計上した。このうち、計画的な資源管理に取り組む漁業者を対象に漁獲量の変動による減収を補う収入安定対策として878億円を盛り込んだ。

 成長産業化では人材育成や高性能漁船への支援を厚くした。水産加工業の生産性の向上、食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」対応の施設整備への対応など、輸出力強化に向けた姿勢を前面に出している。

 世界的に見て、水産物市場は急速に拡大している。

 18年の水産白書によると、17年の世界の漁業・養殖業の生産量は2億559万トンで過去最高を更新した。世界の1人当たりの年間魚類消費量は最近の50年で2倍に。乱獲が懸念される中国やインドネシア、ベトナムなどアジア新興国の台頭が著しい。

 一方、世界の海は気候変動のリスクを抱えている。近年続くサンマの不漁は地球温暖化に伴う海流の変化が一因と考えられている。宮城県などで深刻化するホタテ養殖の貝毒被害は海水温の上昇と無縁ではない。近海魚種にも変化をもたらし、浜の既存の生産、加工システムに少なからぬ影響を及ぼす。

 水産改革は国内水産業の国際競争力強化と同時に、海洋環境リスクを最小化させる狙いもある。その意味で、改革が指向する成長産業化の必要性、資源管理の重要性は論をまたないだろう。

 気になるのは、一連の改革メニューや今回の概算要求事項で「浜の構造改革」という言葉が目に刺さることだ。

 東日本大震災から8年半が過ぎ、再生した漁港で働く漁師は大半が零細漁業者だ。東北農政局が公表した18年漁業センサスによると、東北の漁業経営体1万727の96%が個人になる。年間販売額が500万円未満の経営体は6割を超え、後継者のいない漁業者は全体の4分の3に上る。

 水産改革は漁業の大規模化の指向が随所に見て取れ、そこに「淘汰(とうた)」のニュアンスを感じ取る漁業者もいる。前のめりに過ぎる改革の進行は、歴史的に地域の海を守ってきた漁業者や漁業集落への圧力となりかねない。

 改正漁業法は20年12月までに施行される。3000億円を超す予算で押し進められる水産改革は、プロセスを誤れば浜の荒廃と直結する。海の変化におびえながら復興を歩む浜の声は届いているか。日本の漁業の持続可能性と漁業集落の存続は、不可分でなければならない。