名産ヒジキに復活の兆し 磯焼け対策 効果を発揮 五島市崎山漁業集落 

ヒジキを復活させた崎山漁業集落の役員ら。周辺の岩場には、春になるとびっしりとヒジキが生える=五島市下崎山町

 五島市の崎山漁業集落(竹野弘茂代表)が、魚の食害による磯焼け対策として周辺海域を網で囲う手法に取り組み、効果を上げている。一度は壊滅的状況に陥った崎山地区名産のヒジキに復活の兆しが見え始め、ウニやサザエなどにも好影響が表れている。今後は漁業者への開放を目指し、食害魚の捕獲方法などの改良も重ねている。
 竹野代表らによると、かつて同地区の海岸一帯にはヒジキが茂り、春には「干し場がなくなるほど」。生産量はピーク時で54トン(1996年)に達し、収益は青年団の活動費に充てられるなど地域と密接な関わりがあった。しかし、98年から急速に磯焼けが進み、2010年からは全く採れなくなった。ウニの実入りが悪くなる影響などもあった。
 同集落は05年に設立し、国の離島漁業再生支援交付金などを活用して対策に乗り出した。磯焼けの原因を明らかにしようと、12、13年にヒジキの芽を小さな籠や金網で囲う試験をしたところ、保護した部分だけが順調に育った。
 試験結果を受け、アイゴやイスズミなどの食害魚が磯焼けの主要因と推定。14年からは崎山漁港近くの入り江1.78ヘクタールを網で囲い、網の中にいる食害魚を捕獲した。16年からは囲う面積を4.38ヘクタールに拡大。さらに、費用負担や作業量の軽減のため、網の設置時期や設置方法にも工夫を重ねた。
 すると17年には8年ぶりにヒジキ500キロ(乾燥)を収穫でき、18年も800キロ以上が採れるまでに環境が改善。さらに囲い網の中ではウニの実入りが良くなった他、アオリイカの産卵やサザエの稚貝が確認されるなど、藻場としての機能も回復し始めた。
 一連の活動は、第39回全国豊かな海づくり大会で、最高位の大会会長賞(漁場・環境保全部門)を受賞。13日には竹野代表らが、野口市太郎市長に受賞を報告した。竹野代表は「今後は漁協と時期を相談しながら、漁業者にヒジキ漁場を開放し、所得向上につなげたい。また市内外からの視察受け入れや技術提供にも取り組み、県内の磯焼け対策に貢献していきたい」と意気込んだ。

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