残った 開門の望み 漁業者 “勝利”に安堵

判決後の集会で安堵の表情を浮かべる(左から)松本さんと中田さん=東京都千代田区、憲政記念館

 国営諫早湾干拓事業を巡り、二審福岡高裁判決を破棄、審理を差し戻した13日の最高裁判決。「勝利の判決を取ることができた」「まだまだ訴訟は続くのか」-。開門派の漁業者らからは安堵(あんど)の表情や期待の声が広がった一方、開門に反対する営農者らは審理の長期化を嘆いた。
 「破棄差し戻し」-。
 最高裁正門前。開門派弁護団が白い垂れ幕を掲げると、支援者からは歓声が上がった。「勝利の判決を取ることができた」。馬奈木昭雄団長が報道陣に向かって冗舌に語るすぐそばで、判決を見届けた島原市の漁業、中田猶喜さん(69)と松本正明さん(67)の表情は晴れやかだった。
 「非開門」が確定するのか、それとも高裁に審理を差し戻すのかが注目された最高裁判決。午後3時すぎ、薄暗い傍聴席に張り詰めた空気が漂う中、判決の言い渡しはわずか1分足らずで終わった。
 最高裁は二審の結論を変更する際に、弁論を開くのが通例とされている。7月に弁論期日が入り「望みがある」と一度は喜んだ松本さん。それでも弁護団の見立ては「厳しい」と聞き、一抹の不安がよぎっていたという。「法律のことはよく分からないが、差し戻しと聞いてラッキーだと思った」。松本さんは小さくガッツポーズした。
 「今日は負けを覚悟でここへ来た。でもそういう形にならなくて本当に良かった」。都内であった判決後の集会で中田さんがマイクを握ると支援者たちから拍手が送られた。中田さんは「自分たち(漁業者)も営農者も共存できる判決を望んでいる」と強調する。ただ、安堵の一方で、差し戻し審がどう進むのかは見通せない。「(まだ審理は続くので)万歳三唱とまではいかない」と複雑な表情も見せる。
 集会には2010年12月の福岡高裁開門判決を最高裁に上告せず確定させた菅直人元首相も駆けつけた。菅氏は「開門確定判決がある意味で生き返った」と評価。「潮受け堤防を全部撤去すべきだ」と持論を展開した。
 馬奈木団長は今回の判決をこう解釈する。「審理を尽くしていないという高裁へのおしかりの言葉。(最高裁が)和解の場所をつくってやったよというメッセージだ」

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