「あわてない」でも大丈夫?50歳から始める老後資金の作り方

「老後資金2000万円問題」では、報告書の一部だけが問題視されました。しかし、内容は非常に良くできたものでした。にもかかわらず受け取りを拒否されたのは残念なことではありますが、それ以上に問題提議として、老後資金を真剣に考えるきっかけになったのではないかと思います。

たしかに、老後資金では2000万円くらい、人によってはそれ以上不足します。これは、間違いではありません。しかし、2000万円なければ、生活ができないのかというと、そんなことはありません。安心してください。


まずは、現状を把握しよう

50代で貯蓄がゼロという人も少なからずいると思います。

50代は、子どもの教育資金、住宅ローンと、支出がダブルパンチで大変! しかも、それにプラスして老後資金なんて、トリプルパンチです。とても老後資金まで貯めるなんて余裕はない!というのが現状だという方も多いのではありませんか?

そんな方に、65歳までに2000万円貯めましょう!と言っても現実的ではないかも知れません。

■50歳の人は65歳まで15年間に2000万円を貯めるとして、年133万円の貯蓄、月額約11万円の貯蓄

■55歳の人は65歳まで10年間に2000万円を貯めるとして、年200万円の貯蓄、月額約17万円の貯蓄

現状の収入だけでギリギリなのにさらに2000万円なんて、貯められっこない、なんて暗い気持ちになって落ち込まないでください。

私のオススメは、アニメ「一休さん」のワンシーン。「あわてない、あわてない、一休み、一休み」といって考えるところです。まずは、現状把握をしてみませんか、そしてどうすればいいのかを考えましょう。

年金暮らしの収支を把握する

現状把握と言われても、「なにをどうすればいいのでしょうか?」という疑問ですね。簡単です。

用意するのは、「ねんきん定期便」です。それと自分と家族の年収がわかるものです。まず「ねんきん定期便」を見ます。50歳未満の人は、加入実績に応じた年金額が書かれています。かなり少ない金額ですが、まだまだ年金を払っていくので、増えていきます。

50歳以上の人には、年金の見込み額が記入されています。60歳まで現状と同じ金額ならば65歳からの年金受給額です。

50歳以上の人には「ねんきん定期便」を見れば、65歳から受け取れるおおよその年金額がわかります。定年後は、この金額で生活をすることになります。

つぎに、いまの給与などの年間の収入を調べます。これでだいたい1年間の生活費はこのくらいの金額があれば暮らしていけるのかと言うことがわかります。じつに大雑把ですが、年収から貯蓄金額を引くと年間の支出がわかります。

つまり年金受給額と支出がわかれば、定年後の生活は、年間どのくらい足りるのか足りないのかということがわかります。

もちろん、年金暮らしになった時に、子どもの教育費や住宅ローンが終わっている場合は、その分を引いてください。「年金暮らしで、いくらの赤字が出るのかを知る」。これが現状把握です。

年金暮らしが黒字になる家庭もある

以前、保険の見直しの相談を受けた例を紹介します。老後の暮らしが心配で、かなり高額な個人年金保険にご夫婦で加入していました。個人年金保険だけで月額15万円です!

聞いてみると、そのご夫婦は外資系の会社に勤めていて、かなり高収入です。しかも共稼ぎです。じつは共稼ぎのご夫婦の場合には、老後資金というのは、それほど心配をする必要がありません。

なぜならば、ご夫婦ともに厚生年金に加入しているからです。ダブルの厚生年金を受け取れることができるので、受給額が月額19万円だとしたら、ご夫婦で38万円になります。

月額38万円の収入があれば、老後生活はそれほど心配はしなくても大丈夫ではありませんか?しかも、ご夫婦で定年まで勤めるとしたら、退職金もダブルで受け取れることになります。さらに企業年金もあれば、かなり余裕の生活だと思います。

問題は、ムダな出費をできるだけ抑え、収入の範囲内での支出を心がけるように家計をコントロールすることです。

現状を把握すれば、老後生活が見えてきて必要以上に怖がらなくてもいいのです。「お化けが怖い!」というのは、正体がわからないからです。正体がわかれば、それほど怖がる必要はなくなるのです。

年金暮らしで赤字が5〜10万円の家庭は

夫婦共稼ぎでなくても、夫婦の年金を合わせて、老後の支出で毎月5万円不足しているとか、10万円不足している人の場合は、50代からの準備でなんとかなります。安心してください。

まず、現状の支出を見直して削ることを考えましょう。

生命保険の見直しも有効な手段です。このころから節約を心がけることで、年金生活になった時にも、むりなく支出を抑えることができるようになりますので、とても役に立ちます。そして、削減できたお金は、iDeCoやNISAなどを使って老後資金にするのが一番です。

「老後破綻」の可能性がある人は、キャリアの見直しも

70歳まで住宅ローンが続く、貯蓄がまったくできない、自営業で貯蓄がない、単身者で年金額が少ない、などなど。

このままですと、「老後破綻」の可能性があります。キチンと怖がって、50代から真剣に準備をしましょう。とにかく、支出の見直しと貯蓄です。やはりiDeCoを利用するのがいいでしょう。

そして、もっとも効果的なのが、長く働くと言うことです。長く働くというのは、「なんだ〜っ」とあたりまえのように感じますが、これがピンチを救う決定的な方法なのです。

長く働くことで、貯蓄を取り崩す期間を短くできます。老後資金2000万円不足するというのは、65歳から年金生活が前提です。これが70歳まで働けば、不足金額は少なくなります。また、会社員で長く働けば、厚生年金の加入期間が延びます。それによって70歳から受け取る年金額が増えます。

さらにさらに、70歳まで収入があるので、公的年金の繰下げ受給を行うと年金額がアップします。

もし、70歳まで繰下げ受給をすれば、年金額は最大42%アップすることができます。これによって年金だけで生活をすることが可能になるかも知れません。

50代から、できることは貯蓄ももちろんですが、長く働くということを前提にキャリアとか、スキルアップにも長期の視点を持つと言うことが、じつはもっとも大切なことだと考えます。

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