エルヴィス・コステロ来日公演、スペシャルゲストはニック・ロウ! 1987年 11月16日 エルヴィス・コステロが来日公演を中野サンプラザで開催した日

リマインダー世代の方ならば多少は理解してもらえるのでは…… と思うのだが、学生時代の途中まで赤い色を着るのが恥ずかしかった。というか、着たことがなかった。

だって女の子の色じゃん…… 今でこそ公立に通う小学生のランドセルは多様化し、好きな色を背負うことが許される学校もあるが、自分らが子どもの頃は、ランドセルと言えば男子は黒、女子は赤と決まっていた。

紅白歌合戦だって女子は紅じゃないか。確かに、かわいい色ではある。でも男は白か黒か、だろ。かわいいことに野郎の価値観はない…… そんな昭和脳の時代が自分にもあった。

1987年、大学2年のとき、エルヴィス・コステロが来日すると聞き、同じサークルに所属していたリマインダー主宰の太田氏と盛り上がった。しかも初来日のニック・ロウが前座を務める!これは見なきゃイカンだろう。二十歳そこそこのボンクラ・パブロック魂がうずいた。

そんなわけで、太田氏や他のサークルの面々とともに足を運んだ中野サンプラザ公演。ニック・ロウのステージは素晴らしく、弾き語りだったが、ニックはノリノリで、こちらの気持ちもアコースティックであることを忘れるほどロックンロールだった。

しかし、だ。椅子席に座ったままのオーディエンスは誰も立とうとしない。立ち上がりたかったけれど、後ろの座席のおじさんが怖そうだったので、座ったまま、ガンガン足踏みしてニック・ロウの演奏を楽しんだ。

で、そのニック・ロウをベースに迎えたコステロのステージが、またかっこよかった!黒いスーツ姿のコステロは従来のビジュアル的イメージに比べて多少ぷっくりしていたが、それでもかっこいい。何より、こちらはバンド編成で、一聴してロックンロール。これはもう立つしかない、“後ろのオッチャン、ゴメン”… と思いつつ、と太田氏とともに立って踊った。

しかし前方で立ち上がっているオーディエンスはまばらだった。同行した先輩たちは座ったままで、こちらに向けられた視線には “あー、コイツら、しょうがねえなあ” 的な圧を感じたが、興奮した気持ちは止められない。当時のコステロはツウ好み・評論家好みの音楽だったし、音楽をじっくり聴きたいと思っていた観客も多かったのだろう。

しかし、多くの観客が座っていたおかけで、こちらはあることに気づいた。コステロはスラックスも黒くて、靴もエナメルかどうかはわからないが黒い光沢を放っていた。

しかし、靴下だけは赤かったのだ!レッド・シューズならぬレッド・ソックス。これはかっこいい!! そういえば、当時の最新アルバム『ブラッド&チョコレート』のジャケも赤かった。

“いつまで座ってんだ!?” というコステロの MC によって、ようやく観客が立ち始めたのは覚えている。そこから「Lovable」や「Pump It Up」などのノリのいいナンバーのつるべうち。いやはや、もう胸いっぱいである。

さて、このコンサートを見終えたのち、生まれて初めて赤い靴下を買って、履いて、学校に出かけてみた。周囲には、らしくない…… と見えたのだろう。“おっ、赤いね!” と指摘される度に、気恥ずかしさを覚えたが、何度となく履き続けていたら周囲も慣れてきたようで、何も言われなくなったし、こちらも赤への偏見が薄れた。戦隊モノのリーダーも、だいたい赤だし。

その後、コステロの来日公演は3度見たが、その度に靴下は何色だろう…… と気にして見たが、いつも赤だったと思う。最後に見たのは96年。当時のガールフレンドで現嫁と見に行ったが、彼女こうは言った。

“あの赤い靴下、かわいいね”

―― 違う!かっこいいんだよ!と言いたかったが、止めた。やはり女性には赤は “かわいい” 色なのかもしれないし、どっちにしてもあまり変わらんだろう。ちなみに結婚してからも赤いTシャツや靴下を着用し続けたが、嫁からは一度も “かっこいい” とも、“かわいい” とも言われたことはない。

カタリベ: ソウママナブ

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