【ラグビーW杯】88歳円熟のおもてなし 「世界的な大会に立て続けに関われる、長生きって得だね」

安田十四雄さんは「決勝の舞台で日本代表の勇姿を見たい」と期待する=日産スタジアム

◆日産スタジアムまとめ役 ボランティア最高齢の安田さん

 20日開幕のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は、計1万3千人のボランティアが運営を支える。最高齢は横浜市中区の安田十四雄さん(88)。その道20年のベテランは、港北区の横浜国際総合競技場(日産スタジアム)で、全体のまとめ役を担う。ワンフォーオール、オールフォーワン。仲間と、献身を重んじるラガーマンの精神で観客をもてなす。

 7万2千人収容の日産スタジアム。「会場の隅々まで知り尽くしています」と安田さんは自負する。専従の職員も脱帽するほど。Jリーグの試合や陸上競技の大会のような日スタ開催の行事に、年40回ほど従事している。7階建ての会場を歩き回り、ときに1日2万5千歩を数える。

 その健脚は、幼少から親しむ登山で培った。20代で仏国立スキー登山学校に通い、欧州最高峰のモンブランと4千メートル級の山群を次々と登頂した。外国人客をもてなすための語学力も、渡仏中にワイングラスを傾けながら身につけた。

 日本アルプスが広がる長野県は、登山シーズンに山小屋に住み込む「もうひとつの故郷」。国際大会デビューは、長野冬季五輪(1998年)だった。アルペンスキー会場で、カメラマンが撮影したフィルムの回収役を任された。海外のわがままな取材陣と接するうち、冷静さこそボランティアの要と学んだ。

 その4年後、サッカーW杯日韓大会(2002年)が巡ってきた。決勝を含む4試合が組まれた日スタで、2千人のボランティアの先頭に立った。ロシア戦で日本がW杯初勝利を果たした瞬間にも立ち会い、会場にこだました歓声が忘れられない。熱狂の渦中で過労がたたり、大会後の打ち上げ前日に入院した。苦楽をともにした仲間たちと味わう至福のビールを病床で想像した。「悔しかった。唯一の心残りです」

 来夏は、東京五輪・パラリンピックがやってくる。もちろん、ボランティアに登録した。「世界的な大会に立て続けに関われるなんて、長生きって得だね」。8年前に妻を亡くしたが、世代を超えた交流が生きがいだ。

 日スタ初のラグビー国際試合となった17年の日本対豪州戦で、初めてラグビーを目の当たりにし、激しくぶつかり合う選手たちのたくましさに引かれた。今大会中、また一つ齢(よわい)を重ねる。ルールを覚える日々が、新鮮で楽しい。2度目のW杯。「今度こそ、有終のビールで仲間と乾杯したい」

◆横浜会場は1500人が活動

 ボランティアの愛称は「チーム・ノーサイド」。全国12会場でそろいのユニホームを着用し、各会場周辺で観客を誘導したり、メディアの手助けをしたりする。横浜では日スタと臨港パーク(西区)のファンゾーンで、10~80代の約計1500人が活動する。

 20チームによる全48試合のうち、日スタ開催は11月の決勝を含めて計7試合。市は、日スタで計45万人前後、15日間で32試合を中継するファンゾーンで計15万人の来場を見込んでいる。

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