斎藤工が語る主演ドラマ「最上の命医」が8年続く魅力

テレビ東京系で10月2日に放送するドラマスペシャル「最上の命医2019」(午後9:00)で、主人公の小児外科医・西條命を演じる斎藤工が取材に応じ、ドラマの見どころや意気込みなどを語った。

本作は、2011年1月クールの連続ドラマから始まり、これまで16年、17年にスペシャルを放送。主人公を演じる斎藤がプライムタイム連ドラ単独初主演作であったこともあり、本人も並々ならぬ思い入れで挑んでいるドラマシリーズだ。第3弾となる今回のドラマスペシャルでは、誘拐、脱獄、オペ室占拠など、さまざまな事件の連続で病院内が大パニックに。そんな状況下で、西條は変わらず生命と向き合い続けることができるのか。そして、事件の真相と家族の愛、“生命”をめぐる“究極の人間ドラマ”が描かれる。

最初の連ドラからの変化について斎藤は「僕自身の伸びしろは見いだせないのですけれど」と前置きし、「原作が今ある医療と向き合っている題材なゆえに、やっぱりここ10年くらいでオペの仕方というか医学的な進化というのは、ドラマの描き方を含めて、かつてなかったような器具が現場に存在したり、環境的にかなり違うなというのは撮影現場を見てても思います」と医学の進歩に触れた。

主人公の変化については、「物語自体はタイトルに何年と数字はあるんですけど、西條命という人間は、現代のレイヤーだけじゃなくて、いろんな時代をまたいでいるような精神世界の一つの象徴みたいな気がするので、変わりゆくものと、普遍的な彼の精神性みたいなもののコントラストは、どんどん強くなって、キャラクターの濃度が濃くなってきている感じがしました」と分析する。一方、自身の変化については「僕自身は、いろんなことをしていて迷走している感はあるんですけど(笑)。ただ、年齢を重ねるにつれ、当然落ち着いてくるべき年齢ではあると思うのですが、でも、向こう10年、20年考えた時に、今落ち着いていくということは、この先もっともっと集約していく未来になるっていうことが、職人的な美学はあるかもしれないんですけど、僕にとっては、その裾野を恥かいても擦りむいても広げていこうと、このドラマが始まった時より、“守らない”という守り方を手に入れようとしている最中です」と語った。

そして、シリーズ化されていることのやりがいに関して「この8年間の中で、このドラマがきっかけになったと言ってくださる方が実際に医療の現場に立っているということだったり、別の現場のスタッフのお子さんが医療ドラマのマニアで(笑)、命先生のことも知っていてくれて、またやることを喜んでいてくれて。子どもだけが全てではないんですけど、特に幼い年月しか過ごしてない子たちが、このドラマに反応してくれるというのは、数以上の価値があるなと思いました」と話し、笑顔を見せた。また、難しさについて「この作品は、3.11(2011年東日本大震災)をまたいでということがありましたし、とても僕の中では主演だからということ以上に意味を持っている作品でもあるので。どんな作品もそうなんですけど、今までも終わるつもりでやっていなかったので、僕の中で、シリーズというのが『ここで終わりです』というピリオドはずっと見えない。でも、そのぐらい、現代医療と日本における小児外科という問題が、かなり解決しない事例としてあり続けるということも言えると思うんですね」とこれまでを振り返りながら話した。

さらに続けて「これは定かじゃないので、僕が言うべきじゃないかもしれないんですけど、国内で難病を抱えたお子さんが、海外で莫大な費用をかけてオペをするとかいうクラウドファンドだったりをよく見ます。とある海外の医学に関係する人に聞いたのですが、あれは何にそんなにかかるかというと、順番待ちを飛び級する費用だと伺ったことがあって。それが定かかは分かりませんが、それを悪しき行為とは僕は思わないんですけど、ただ、国内でもっとそういった体制を整えている医学界なんだろうかというところは、疑問にも思っていなかったので。多分、国内が育っていないからだと思うんですよね。そういった問題も、もしかしたら僕は、このドラマにかかわっていなかったら、その見方というのはなかったと思います」と小児医学に触れて感じたことを明かした。

本作が8年続く魅力については「やっぱり、直面し続けている問題というのがあると思います。あとは、この作品が再びという陰には、プロデューサーをはじめ、並々ならぬ決起力というか、何かを立ち上げるという『この作品を放つんだ』という意思みたいなものがないとなかなか立ち上がれない時代だと思うんですよ。特にテレビ東京さんの作るドラマというものの振り幅とカラーリングみたいな中では、いい意味でこの作品は異質なのかなと思うんですけど。それをこの8年間、間は空いてはいるんですけど投げ続けるっていうテレビ東京さんの心意気というのは素晴らしいなと思いますし、自分のかかわり方問わず、とても意味深いプロジェクトにどんどんなっている気はします」と感想を述べた。

そして「唯一、すべてに出てくださっている泉谷しげるさん。実は、父がもともと泉谷さんのマネジャーだったんですよ。泉谷さんとの関係というのは、このドラマの中の関係のような、命が相談することとか、進藤先生が見えてる命の奥に抱えている問題とか、そういったものの関係値が僕と泉谷さんの関係値に近いなと思っているので。周りというかスタッフの方々も、この作品を作る骨格みたいなものが強固になっていることが、モノを、映像作品を作る上で、ライフラインのように頼もしいなと思います」と明かした。

最後に「視聴率と言った数字も無視できないんですけど、でも、あまりにもそこにとらわれすぎて本質を失うことの方が、あまりにも滑稽なので、そうじゃないところを目指して作ってきたつもりなので。今回、そういう意味では、今までの中で最大にそういった世界に没頭できた作品なので、2時間見るつもりで入らなくてもいいんですけど、冒頭だけでもテイスティングしていただいて、心が動くような何かを感じたら、自分のよいところまで、お付き合いいただきたいなと思います」とアピールした。

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