<レスリング>【2019年世界選手権・特集】メダル獲得の要因は「死ぬほど追い込んだ練習」…男子グレコローマン55kg級・小川翔太(日体大)

3位決定戦で勝ち、雄叫びをあげる小川翔太=撮影・保高幸子

 【ヌルスルタン(カザフスタン)、世界選手権取材チーム】「日本軽量級の強さ、日体大グレコローマンの強さを見せることができました」とは、世界チャンピオンに輝いた太田忍(ALSOK)の言葉。その言葉には、55kg級に出場した小川翔太(日体大)の銅メダル獲得の快挙も含まれているのは言うまでもない。

 世界選手権は初出場。3回戦では4月のアジア選手権優勝のイルコム・バクラモフ(ウズベキスタン)を4-2で破る強さでの快挙だ。20歳でのメダル獲得は、日本男子グレコローマンで最年少のメダル獲得となる。3位決定戦で勝った瞬間、小川はマット上ではね上がり、全身で喜びを表した。取材エリアでも「うれしいです。海外で入賞は初めてですし。(試合内容は)あんまり覚えていないですけど、自分からどんどん前に行けたと思います」と喜びが続いた。

 表彰式のあとは、「(メダルは)日本のものより重くて、びっくりしています」と第一声。もちろん、実際の重量のこともあるだろうが、価値の大きさ・重さの意味もあるだろう。「トーナメントどこに入っても、勝たないと優勝はない。強い相手とどこで当たっても絶対勝つという強い気持ちが、結果として3位になれたのかなと思います」と言う。

 3位決定戦の相手のカオ・リグオ(中国)は、昨年の大会で日本代表の田野倉翔太が敗れた相手。対戦が決まってからビデオでしっかりと研究して臨んだという。

 だが、メダル獲得の要因は対戦相手の研究だけではない。最大の原動力として「(8月初めの)草津の合宿や全日本の合宿で死ぬほど追い込んで練習して、気持ちの面でもレベルアップできたこと」を挙げた。また、ネットやSNSの発達により、3位決定戦進出が決まってからも、日本から数多くの応援が寄せられ、勇気づけられたという。

世界王者には完敗したが、「大きく離れているわけではない」

 喜びばかりではない。準決勝では、優勝することになるヌグザリ・ツルツミア(ジョージア)に完敗。「課題はけっこうあります」と言う。ただ、「大きく離れてるわけではない。頑張って練習していけば、追いつける距離にいると思う」と分析し、今後の飛躍にかける。

3位決定戦は終始積極的に攻めた小川翔太=撮影・保高幸子

 その前に、もし60kg級に出場する文田健一郎(ミキハウス)がオリンピック代表を内定できなければ、12月の全日本選手権は60kg級に挑み、東京オリンピックを目指す選択肢もある。そのことを問われると、「東京は無理かな、と思っています。文田さんがどうなるか分からないです。それは考えていません。東京の後は階級区分が変わるかもしれないし、次のオリンピックに合わせていければな、と思います」と、長期的視野にたっての強化を目指す腹積もりだ。

 これまで、カデットで2度、U23で1度の世界選手権出場の経験がある。昨年のU23世界選手権で5位が最高で、メダルには手が届かなかった。国内でも、昨年の全日本選手権は不覚を喫し、今年冬~春は海外派遣メンバーにも選ばれずに国内で練習に専念。「将来性はあるけど、不安定な面もある」というのが小川の印象だった。

 今回の日本グレコローマン最年少の銅メダル獲得で、一気に“軽量級の星”に飛び出ることになった。今後が期待できる20歳のホープ誕生だった。

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