警視庁・三浦正充警視総監がタレントを携え歌舞伎町をパレード 本当に暴力団と闘う覚悟はあるの――?

覚悟、あるんですか?(写真はイメージです)

10月1日より施行される改正東京都暴力団排除条例を前に、PRを兼ねてお上が地回りをした、ということか。

9月11日、東洋一の歓楽街・歌舞伎町で警視庁の三浦正充警視総監を始めとした警察関係者、タレントのサンシャイン池崎などが暴力団排除を呼びかけるパレードを行った。当日、テレビ・新聞など大メディアが横並びに報じた。

以前本サイトでも取り上げたが、新たに施行される都の改正暴力団排除条例では、いわゆるみかじめ料(用心棒代)に対し、これまで要求する側(暴力団)のみを取り締まっていたものを、支払った店側も合わせて罰するというものだ。

この条例は「暴力団排除特別強化地域」とされている新宿や六本木など繁華街29地域に狙い定めたものだが、強化地域のひとつである赤坂では関西系とみられる半グレがみかじめを要求するなど、「暴力団」という枠では捉えることが出来ない組織の跋扈が問題になっている。率直に言って、現状は法整備が追いついていないのだ。

さらに、伝統的に腐れ縁がある暴力団とのかかわりを店側に絶たせるためには、強力な警察のバックアップが必要となってくる。だが、福岡県警と工藤會の熾烈な“戦争”を見ればわかるよう、それは容易ではない。しかしながら、そこまでの覚悟が警視庁にあるか否かは、いまの時点では不明である。

そんな状況下、警視庁トップである三浦正充警視総監が直々にお出ましになってのパレードを行い、マスコミ各社がご丁寧に報道するところを見ると、やはり今回の錦の御旗である「東京オリンピック・パラリンピック」開催に向けての治安維持アピールが大きいということであろう。

では、現在の歌舞伎町の治安が過去に比べて良くなっているのか?

これはどこに基準を置くかにもよるが、少なくとも風俗店で溢れていた90年代後半に比べると、残念ながらボッタクリ被害などに遭う確率は高くなったと言わざるを得ない。理由は単純で、石原都政の歌舞伎町浄化作戦の際、関係者の間で“みなし店”と呼ばれていたイメクラや性感マッサージなどのグレーゾーン店舗を徹底的に摘発した結果、悪質業者が地下に潜ったことが大きいからだ。

特に浄化作戦以降、それまでみなし店に配慮して大っぴらなキャッチを行っていなかったボッタクリ店が跋扈するようになった。現在の歌舞伎町は、日本人やアフリカ系外国人による悪質キャッチの被害が止まず、街頭での再三の注意喚起もさほど功を奏してはいない。

もっとも、かつてキャッチがみなし店に配慮していたのは、(ケツ持ちである)背後に遠慮したからであり、逆説的に言えばお上の守護より裏社会の守護のほうが庶民には安全だったということにもなる。

無論、暴力団を肯定するワケではない。ただ、改正暴力団排除条例で強制的に腐れ縁を絶たせるなら、警察には店側の新たな守護となる義務がある、ということだ。警視総監のPR的地回りだけで終わらせることは許されない。(取材・文◎鈴木光司)

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