山でチクチク。イワタマユミさんに教わった「ダーニング」でウェアの愛着200%増! instagramで見つけた、里山にハンモックを張り、何やらチクチク作業をしているグループ。いったい何をしているのでしょうか? 今回はその活動の言い出しっぺである手芸作家・イワタマユミさんに、チクチク=ダーニングを教わってきました。またUL(ウルトラライト)での里山ハイキングの楽しみ方も伝授。ピークを目指さない山遊び、秋から始めてみませんか?

ハンモックハイク仲間と、おしゃべりしながら◯◯仕事!

instagramで見かけた、ハンモックの周りで何やらゴソゴソしているグループの写真。

……チクチクウダウダ???

チクチク……ウダウダ……。

みんなで靴下の穴を繕ってた??!
……チクチクって、こういうことをしていたのかー。

この投稿主の@feltmこと、イワタマユミさんは、羊毛フェルトやフックドラグ(布目の隙間から毛糸を引き出していく手芸)での小物作りや、糸巻きボタンを使ったワークショップを行なっており、雑誌などでも作品が紹介されている作家です。
一方でUL(ウルトラライト)ハイカーとして、MYOGでパッキングツールを作ったり、山歩きも楽しんでいます。

※UL(Ultra Lightの略):軽量な装備。登山スタイルのひとつとして使われることも多い
※MYOG(Make Your Own Gearの略):アウトドアギアなどを自作すること

(フックドラグによる鳥のポーチ)

このチクチクハイクの参加者がinstagramに投稿したことがきっかけで、ガレージブランドショップ[MT.FABs]でダーニングのワークショップの声が掛かるなど、「山で針仕事」という新しい楽しみ方を広めて(?)いるのです。

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薄くなった靴下、引っ掛けたTシャツをかわいく修繕

不器用でも大丈夫。「ダーニング」はテキトーが持ち味になる繕いもの

ダーニング(darning)とは、英語で「(ほころび穴)をかがる、かがり縫い」という意味。

穴が開いた洋服などの修繕方法ですが、いわゆるプロのかけはぎ(修繕箇所がわからないようにする技術)とは異なり、好きな糸や毛糸でカラフルに繕っていくのが大きな特徴。縦糸と横糸を組み合わせ、平織りの要領で穴をふさいでいくのです。

必要なのは、糸と針とガチャガチャの空容器?!

穴を繕っていくので、針と糸は必須アイテム。糸は毛糸や刺繍糸など太めのものを。針はそれらが通るような刺繍針など穴の大きなものを選びます。それに加え、布を固定するための「ダーニングマッシュルーム」と呼ばれるキノコ型の道具と輪ゴムを通常は使います。

「でも山に持っていく道具はコンパクトに軽くしたいので、これを使ってます」とイワタさんが出したのは、キノコ代わりのガチャガチャの空容器。ストローに必要分だけ巻いた糸と針、ゴムを入れてしまえば、携帯ダーニングキットのでき上がり。これならザックのポケットに入れて、気軽に持っていけますね。

ではダーニングで破れたウェアをかわいく修繕してみましょう

今回は9月の残暑厳しい山ではなく、イワタさんの自宅でダーニングを教えてもらうことにしました。

持参したのは、裾を引っ掛けて破いてしまったTシャツ。穴を見ると悲しい気持ちになるけど、お気に入りなので捨てることもできずにタンスにしまっていました。

まず最初にダーニングする布を台に固定します。今回はダーニングマッシュルームを使います。ダーニングしたい部分が中央にくるように布をかぶせ、輪ゴムで固定します。

縦糸と横糸を選びます。繊細な仕上がりにしたい場合は刺繍糸など細めの糸、ざっくりした感じがよければ毛糸などを使います。編み物など他の手芸のときに余った糸をストックしておくといいですよ。今回はブルー系を縦糸に、イエロー系を横糸に選びました。

開始点はふさぎたい穴より少し離れた場所(a)にします。(a)に約10cmほど糸を残しておき、ダーニングしたい箇所に糸を出して縦糸を縫っていきます。
(b)の部分は折り返し地点。端にきたら、糸1本分程度の隙間をあけ、生地の下から上に糸を出し、次の段を反対方向に向かって作ります。あとは同じ要領で縫っていきます。

縦糸が終わったら、約10cmほど糸を残して切ります。玉結びをしてもいいですが、裏がゴロゴロしてしまうのでしないほうが肌触りがいいとのこと。縫い始めと縫い終わりの各10cmの糸は、生地の裏側に一旦引き出し、ダーニングをした箇所の裏側で最後になみ縫いをしておけばほどけません。

次は横糸。写真では5本のブルーの縦糸が通っていますが、最初は左から①③⑤の下に通します。
通し終わったら、折り返し。縦糸のときと同様に糸1本分程度の隙間をすくって、次の段を縫い始めます。次は1段目とは異なり④②の下に通します。これを繰り返していきます。

……と言葉で説明するとわかりづらいですが、STITCH DETAILのようになればOKです!

折り返す際に、横糸を上にきゅっきゅと押しやることで目が詰まった平織りになります。横糸も縦糸と同様に裏側でなみ縫いの処理をすればでき上がり。

ダーニングの完成です! 2cm各ほどの穴を埋める所要時間は10分ほど。作業自体はなみ縫いができればOKなので、不器用さんでも子供でもできてしまいます。ざっくりテキトーなのも味のうち。穴の開いていない箇所にも違う糸でダーニングを施してみるなど、自由に色を組み合わせて遊ぶことができます。愛着も200%アップで、もうボロなんて言わせません!

イワタマユミさん流、里山ハイクの楽しみ方

(愛猫ハトちゃんと話すイワタさん)

山でダーニングをしたり、イワタさんの山歩きは何だか楽しそう。どんな山遍歴を経てきたのか、うかがいました。

「初めての登山は陣馬山から高尾山の縦走。でも当時は山歩きに登り下りがあるということすら知らなくて(苦笑)。何とか巻道を選びながら下山したので茶屋なども見つけられず。なのに『城山のかき氷は食べた?』と聞かれて……翌週登り直しに行きました」

自宅からも行きやすい、高尾山、丹沢、奥多摩をフィールドに1年に50日ほど山に通ったといいます。テントなしで日帰り登山を楽しんでいたところ、とあるハンモックイベントがあり興味本位で立ち寄ってみたそう。

(イワタさん愛用のULザック)

「ハンモックを買わされないかとドキドキしましたが、こんな楽しみ方もあるんだ!と思いました。それからは地図読みハイクなどのイベントに参加したり。地図が読めるようになると、少し開けた場所を見つけられるようになり、そこでハンモックを張ってお昼ごはんを食べて。また地図を調べて、新しい道を見つけて歩いてみて……」

(地図を見ながらハンモック好適地を探し、通った道をマーキング)

山頂を目指すピークハントとは異なる、イワタさんの里山ハイクは、友人たちとごはんと食べたり、お茶を飲んだり、繕いものをしたりと、日常の延長を楽しみながらも、ちょっとした探検みたいです。軽やかに歩くためには、道具もシンプルにかつ軽く。たまに標高の高い山へ登るときは、小屋でのごはんを楽しむと決めてしまい、食料を軽量化するなど、うまく自分のペースやスタイルに合わせて山を楽しんでいます。

(南アルプス栗沢山にて。「南アルプスの天然水」CMに登場した宇多田ヒカル風)
(イワタさんの山バッチコレクション)

イワタさんの手芸ワークショップのお知らせや山行はinstagramでも見ることができます。時おり登場する、イワタ家の愛猫・ハトちゃんのネコスタグラムもぜひ!

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