3.11 東日本大震災を経験したTSURI HACKライターが見る“被災地”のいまとこれから。 日本の観測史上最大の規模となった、3.11東日本大震災。あれから8年。被災地の海はどのように変わったのか、今回は"釣り人の目線から見る、被災地の今をお伝えします。

3.11 を釣り人目線で振り返る

安波山公園から見渡す気仙沼の街並み

日本の観測史上最大の規模となった、3.11東日本大震災。

津波が襲った太平洋沿岸部では、壊滅的な被害が発生し、

海に釣り人がいる当たり前だった光景も、町から姿を消しました。

あれから8年。被災地の風景は少しずつ活気を取り戻しています。

それは「釣り」という観点からみても例外ではありません。

被災地の海はどのように変わったのか、今回はそんな”釣り人”の目線から見た、被災地の今をお伝えします。

筆者の紹介

アウトドアを中心にYouTube活動をしている「アナハゼティ」と申します。

メンバーの2人は共に宮城県気仙沼市の出身で、子供の頃から“釣り”と共に育ちました。

震災当時はお互い学生で、他県にいた時に自宅が被災。

現在は地元に戻り、釣りや観光といった地元の魅力を発信できるような動画をあげています。

変わりゆく三陸の海

震災によって破壊された橋。現在(2019年7月)も震災当時の姿を残している。

震災前の町は、海を沿って堤防や遊歩道が整備され、釣りをできる場所が多くありました。

しかし、震災によってその大半が壊滅状態へ。

堤防の破損や、地盤沈下による水位の上昇で、安全に釣りができる場所は大きく減少しました。

工事中の堤防。今はまだ立入禁止だが、きっとここも釣りができる場所になるだろう。

8年が経過した今、堤防の工事は着々と進んでいます。

まだ、立ち入り禁止の場所は多いものの、釣りができる堤防も増えてきました。

戻ってきた青い海と魚たち

現在の気仙沼の海。海藻が生え、多くの生体反応が伺える。

当時、津波によって甚大な被害を受けた三陸の海ですが、

現在はそれも回復に向かっており、写真のような青い海が戻ってきました。

昨年、三陸の海で釣り上げた良型のメバル。

今では、ロックフィッシュを中心とした三陸の魚達と、熱いファイトを楽しむことができます。

進むインフラ整備

現在建設中の三陸自動車道の橋。海を通って高速道路が通る事になる。

震災後の大きな変化として、交通アクセスが大きく向上しました。

国土交通省が中心となって、復興道路「三陸沿岸道路」が事業化。

全ての道路が開通すれば、さらにアクセスは向上することでしょう。

開通した「気仙沼大島大橋」。開通前までは船による移動しか手段がなかった。

また、今年の4月には東北最大の離島「気仙沼大島」と本土を結ぶ「気仙沼大島大橋」が開通。

ロックフィッシュの釣り大会が開かれる程、釣り場としてのポテンシャルが高い大島に、

今では車で気軽に行けるようになりました。

震災の記憶を後世に

今年の3月に新しく開設された「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」

共同通信が行った「東日本大震災の伝承施設を管理する自治体の担当者」へのアンケートでは、

6割の人が震災の風化を感じると答えました。(参考:共同通信社)

私達も、年を重ねるごとに震災の記憶が薄くなっていることを実感します。

それは、”辛かったあの時を早く忘れたい”と思う気持ちが働いているのかもしれません。

「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」中の様子

しかし、この記憶は“教訓”として後世に残していかなくてはなりません。

実際に今回の震災も、過去の地震から教訓を得て植樹されたケヤキの木によって、

津波が抑えられ、救われた命がありました。

「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」にある「海と生きる」を説明した看板

気仙沼には「海と生きる」という言葉があります。

「人智の及ばぬ壮大な力としながらも、海を敵視せず、積極的に関わりあって暮らしてきた」

「気仙沼の観念は海にある。いまを生きる世代が再び海の可能性を信じ、

復興をなしとげることが犠牲者への供養となり、次世代への希望となろう」

(引用元:東北地方整備局 震災伝承館資料)

この言葉のように”人間と海が寄り添って暮らす”ことが、復興のシンボルであり、

そのためにも、多くの人が三陸に興味を持って、釣りを楽しんでくれることを私達は願っています。

三陸のこれから

画像提供:グローブライド(岩手県宮古市の海 19年8月撮影)

三陸は釣りという視点でも、非常に魅力的な場所です。それをみんなに知って訪れてもらうにはどうすれば良いのでしょうか?

三陸防災復興プロジェクト2019 実行委員会事務局長 小野寺宏和さんに話しを聞きました。

アナハゼティ

はじめまして。よろしくお願いします!

小野寺さん

よろしくお願いします。

アナハゼティ

では、まず初めに“三陸防災復興プロジェクト2019”とは、どういった取り組みなのか教えて下さい。

小野寺さん

東日本大震災津波から9年目となる2019年は、復興のシンボルである三陸鉄道「リアス線」の開通(3月)のほか、東日本大震災津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」の開館(9月)、ラグビーワールドカップ2019

日本大会の釜石開催(9~10月)など、三陸地域が大きな注目を集める好機でした。

アナハゼティ

確かに、連休になると多くの観光客が遊びに来てくれているのを実感していました!

小野寺さん

この機会を捉えて、復興に取り組む地域の姿を発信し、風化を防ぎ、国内外からの復興支援への感謝を示すこと、また、被災県として、震災の記憶と教訓を伝え、国内外の防災力強化につなげること、

さらに三陸地域の多様な魅力の発信と交流の活発化によって、防災と復興を核とする持続的な地域振興を推進し、新たな三陸の創造へつなげることを目指して実施した事業です。

アナハゼティ

震災当時は本当に沢山の方からご支援をいただきました。その感謝を示せる場所があることを、地元民である私達も嬉しく思います!

では次に、現在の復興状況について教えて下さい。

小野寺さん

災害廃棄物の処理、被災した漁船や養殖施設の整備などが完了したほか、復興道路や津波防災施設、災害公営住宅の整備、商業施設や水産加工施設の再開、

さらには被災した全ての県立病院や公立学校施設の復旧が完了するなど復興の歩みは着実に進んでいます。詳細については、“いわて復興の歩み”を参照願います。

アナハゼティ

そこまで進んでいたのですね! 近くに住んでいても意外に知らない事が多くて驚きました。

では、復興の課題点について教えて下さい。

小野寺さん

整備の終わらなかった道路や防潮堤などの社会資本等の早期整備完了や、災害公営住宅でのこころのケアやコミュニティの形成等の被災者支援、農林水産業における後継者育成、商工業における販路回復・経営安定化など、

三陸地域の将来を展望しながら、復興の取組を継続して実施していく必要があります

アナハゼティ

私達の周りにも後継者として頑張っている方が沢山います。三陸にまた街並みや人が戻って、活気に溢れて欲しいですね!

では次に、三陸と釣りという視点でお聞きします。三陸は釣りのフィールドとしても、非常に魅力的な場所だと感じています。

それを多くの方に知って、訪れてもらうにはどうすれば良いのでしょうか?

小野寺さん

三陸防災復興プロジェクトでは、三陸地域の気軽なレジャーとして定着している釣りと三陸ジオパークを組み合わせ、親子を対象として、三陸の自然の恵みや営み、地形的な特徴などを自然に親しみ、楽しみながら学ぶ機会とするため、「親子釣りフェスタ&ジオツアー」を実施したところです。

小野寺さん

本プロジェクトでは、民間企業との協働や連携も重視していたところですが、今回、全国的なネットワークを持つグローブライド社の全面協力のもとで、企画や広報、運営が実現したことは、今後、釣りをキーワードとした三陸地域の振興を推進する上で、有意義な取組だったと考えています。

アナハゼティ

すごい楽しそう! 釣りというコンテンツを、復興の為に活かせる事ができるのですね!

三陸の復興に、釣り人が力になれる事はありますか?

小野寺さん

釣り人は、季節や気候を問わず、その時々に釣れる魚を求めて、繰り返し三陸に訪れていただける方々と認識しています。

小野寺さん

釣り人が、三陸地域に泊まり、食べて、買っていただくことで、地域経済が循環することはもとより、地域の方々と触れ合い、交流することを通じて、三陸の魅力を体感し、その魅力をSNS等により、広く発信することで、新たな釣り人が訪れるきっかけにもなると考えています。

アナハゼティ

三陸が素晴らしい釣り場であることは私達が保証します! 色々な魚が釣れますので、ぜひ遊びにきて欲しいですね!

それでは、当プロジェクトの今後について教えて下さい。

小野寺さん

岩手県では、「いわて県民計画(2019~2028)」の中で、三陸防災復興プロジェクト2019等を契機として生み出される効果を持続し、三陸地域の多様な魅力を発信して国内外との交流を活発化することにより 、三陸地域が持続的に発展することを目指して、「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」を推進することとしており、この中で、三陸防災復興プロジェクト2019の取組を継承していこうと考えています。

アナハゼティ

この取組みよって三陸が発展し、釣りによって三陸の地がさらに盛り上がる事を、私たちも願っています。この度はありがとうございました。

Sponsored by グローブライド株式会社

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